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人生の運営から振られた俺のステータスがおかしいという話
30代を迎えてしまった。
別に30代を迎えてしまったからと言って、共産主義国家から民主主義国家の間の国境を超えたような著しい変化はない。
地続きの道を歩いてたら「あーなんか俺、いつの間にかこんな所まで来ちまったな」みたいな感覚で、20代という街はすぐ俺の後ろにあるんだけど、もう戻れない。
すぐになにか大きい変化はないけど、じわじわと次の街が見えてきて、今までいたすぐ後ろの街は朧げに景色の一部と化していく。
その途中で勉強とか仕事とか恋愛とか別れとか、そんなイベントがあって、それらをRPGでいうモンスターだと捉えるなら、俺は周りのプレイヤーに比べると、装備も違うし、もらってるダメージの量が大きすぎる気がしていた。
「あれ、なんか俺だけもらってるダメージの量多いし、他のレベル30のプレイヤーと明らかに装備ちがくね?」
そう思って、自分の過去を振り返ってみたり現状の自分の行動を見つめ直してみることにした。
そもそも、子どもの頃からなんか俺だけ他の人たちと違うな、という違和感だけはずっとあったけど、その正体だけがわからなかった。
というのも、子どもの頃に筆箱の中身をすぐに失くしたり、綺麗にノートを取れなかったり、時間割を揃えられなかったり、その他諸々、世間一般でいうところの「だらしない」奴だった。
親はそれを努力不足と言ったし、俺もそう思ってた。学校の成績表には「もうすこし」の文字が並びまくっていた。
大人になってもその傾向はつづいて、飲食店時代は発注の数をミスったり、エンジニアになった今は会議中に人の話が入ってこなかったり、極めつけは会社で作業していて、俺だけ明らかに席を立つ回数が異常だった。
「あー、これ多分なんかおかしいわ、俺」そう思ったのは29歳と11ヶ月のことだった。
ということで、今俺がどういう状況にいるかRPGゲームの世界観で話していきたい所存。
運営に問いただした(クリニックに受診)
とりあえず、このままではやばい。人生がハードモード過ぎる。もう三十路だというのに一向にうだつが上がらない。
そう思って、運営に俺のステータスどうなってるのか問いただしてみることにした。
ちなみに運営の雰囲気はバカリズムを想像してほしい。
俺 : 「すみません。なんかもうレベル30なのに一向にモンスター倒せないんすけど」
運営:「な、る、ほ、ど、ちょっと調べましょうか」
カタカタカタ.…
運営:「なるほど・・・むしろよくこのステータスでここまできましたねー」
俺:「と、いいますと?」
運営:「たまにいらっしゃるんですよねー、初期ステタースの割り振りが極端な方」
俺:「どういうことですか、全然わからないんですけど」
運営:「このゲームをスタートする際に、プレイヤーの方々にはこちら側からランダムにステータスが割り振られるんですが、俺様の場合、その初期ステータスの割り振りにちょっと問題がありますねえ」
俺:「つまり、そちら側で初期ステータスの割り振りの際になんらかの手違いがあったと?」
運営:「厳密に言うと手違いではないんですが、まあそういうことになりますね(笑)」
俺:「なにわろてんねん」
運営:「失礼しました。こちら見てください。この防御力の箇所」
俺:「うわ、1だ」
運営:「そうなんですよ。これがダメージが入りやすい原因ですね。次、ここ見てください」
俺:「魔力100!?」
運営:「そうなんですよ。俺さんの場合はステータスの約八割が魔力に割り振られてますね。普通なら防御力、攻撃力、魔力がすべて均等になるか、それに近い形になります」
俺:「どうにかならないんですか?ステータス割り振り直すとか」
運営:「システムの都合上それは無理ですね。ご存知の通りこのゲームの売りは不可逆性なので、一度割り振ったステータスを再度割り振ることはできません」
俺:「なら、キャラ作り直すとか、強くしてニューゲームにしてくれよ」
運営:「それをすると俺様のセーブデータを全て抹消することになりますし、あなたが集めた装備やアイテム、フレンドなど全て抹消されますよ。それに新しく作り直したキャラが強くなるという保証もできません」
俺:「つまり、このステータスで完走しろと?」
運営:「そういうことになりますね」
俺:「そんな理不尽な・・・」
運営:「まあでも、ご安心ください。そういったプレイヤーの方は結構いらっしゃいますし、むしろその特性をうまく活用していただければ今までよりは楽に戦えると思います。ランキング上位も夢じゃありません」
俺:「安心できるか!もとはといえばお前らのミスやんけ」
運営:「まあまあ落ち着いてください。先程、魔力100とお伝えしましたが、それをうまく活用してください」
俺:「要するに剣士をやめて、魔法使いになれってこと?」
運営:「そういうことになりますね。そもそもあなたのステータスで剣士だとハードモード過ぎますよ。ほら、ここ見て、攻撃力の部分」
俺:「10・・・」
運営:「イエス!それに比べて魔力はその10倍!つまりあなたの場合、魔法使いとして戦うほうが有利なんです!これは決してエラーというわけではなく、魔法だけで戦った場合でいうと平均的なプレイヤーより火力を出せるってわけです!」
俺:「いやいや、そもそも防御力がこれじゃあ、魔法が強くても今まで通りダメージくらうじゃねえかよ!詫び石くらいよこせ!」
※詫び石とはオンラインゲームやスマホゲームで運営のミスによって問題が発生した場合に配られるゲーム内での通貨的なもの※
運営:「そもそもバグではないので、ゴールドストーンの配布はしておりません。ご理解ください。」
俺:「ふざけんなよお前らマジで!Twitterに書いてやるからな!」
運営:「わかりました。そこまで言うなら、仕方ないですね。俺様にはこちらを差し上げます」
そう言って、運営は俺の前に瓶を差し出してきた。
俺:「なにこれ?回復アイテム?」
運営:「どちらかというと補助アイテムですね」
俺:「あれですか、モンハンで言うところ強走薬的な?」
運営:「まあ、そんなところです。」
俺:「で、なんだってばよ」
運営:「このアイテムは攻撃力と防御力を一時的に平均的な水準まで上げてくれる補助アイテムです。ただし、あくまでも補助アイテムなので、基本的にはあなたの努力でなんとかしてください」
俺:「まあ努力でなんともならなかったから困ってるんですけどね・・・とりあえずありがとうございます。頂きますッス」
運営:「ということで職業も魔法使いに変更しておいたので、ここからは俺様次第です」
俺:「なんか解せぬが、仕方ないか」
俺は運営のいる部屋をあとにしようと扉に手をかけたところ、最後に運営が俺に話しかけてきた。
運営:「あー言い忘れてました。このゲームの攻略法とまでは言いませんが、一つアドバイスを」
俺:「え、なに?」
運営:「効率よくレベルを上げることだけが良いとは限りません。是非、この世界を楽しんでみてください」
俺:「うるせー、詫び石よこしてから言え」
こうして俺はレベル30にして魔法使いにジョブチェンジを果たした。
だけど、魔法使いの装備を持っていないし、魔法を一個も使えないので、雑魚スライムを狩るところからやり直しというわけ。
それでも前よりはマシだろう。
要するに俺はADHDってこと
ここまで読んでくれた読者のなかで、察しがいい人は気づいたと思うけど、要するに俺はADHDらしい。
それを説明するには、RPGのステータス振りが俺の中で一番しっくり来たから回りくどく書いてしまった。読んでくれた人ありがとう。
30歳になるまでそんなことに気づかなかったのかって話だけど、普通は気づかない。
俺だって30歳になるまでは、こんなもんだと思っていた。
ただ、同じ年代の人たちに比べるとやたら人生がハードモードな気がしていたし、極めつけは同じ親から生まれ、同じ環境で育ち、ほぼ同じ遺伝子を持つ弟が優秀すぎるから、その格差はなにか考え始めたのがきっかけだった。
正直、自分ではグレーゾーンくらいだと思っていたけど診断結果はガッツリだった。
診断結果は人生の答え合わせ
病院で先生から診断結果を聞いたときには完全に人生の答え合わせだった。
ようするに、あなたにはこういう傾向があります的なことを伝えられるんだけど、人生の中で困っていたこととか、うまくいかなかったことの原因がすべてわかってしまった感じ。
整理整頓ができないとか、忘れ物をするとか、ケツに火がつかないとなにもやらないとか、まあ本当に学生時代の自分が大人から散々言われてきたことが書いてあった。
障害というよりは能力に偏りがあると捉えたほうがいい
俺は専門じゃないからあまり中途半端なことは言えないけど、俺の主治医いわく、障害というよりは能力に偏りがあると捉えたほうがいいということだった。
最近、医師の間では障害という捉え方は如何なものかという話にもなっているらしい。
さっきのRPGの例え話が良い例で、割り振られたステータスが偏っていると全体的にバランスが悪くなる。ただ、偏っている能力に関してはずば抜けた才能を見せることも少なくないとか。
特にクリエイティブな職業をする人に多い傾向があるとかないとかで、担当する患者の中には小説家とかカメラマン、デザイナーが多い傾向にあると言っていた。
ただ、俺は今のところ自分の能力の偏りには気づけていないので、これから見つけていきたい所存。
ADHDを言い訳に使うのはダメ絶対
ADHDと診断されたからと言って、なにかうまくいかないことや他人に迷惑をかけることを当たり前と思うのは違うんじゃないかと俺は思う。
もちろん、仕方ない部分もあるけど、他人に迷惑をかけない努力はしないといけない。
あたり前のように遅刻したり、締切を守れないというのはよくない。
失敗はしてもいいと思う。
だけど努力は必要。
投薬という選択肢もあり
とはいえ、努力じゃカバーできないから困ってるわけで、俺の場合は人に迷惑をかけて、自責の念に駆られて、自己肯定感を失っていくというのがお決まりのパターン。
いくら偏りがあるからと言っても、防御力がガバガバじゃすぐに瀕死になる。
それでもなんとかこの世界と折り合いをつけて生きていかないといけない。
そういうときは医師と相談して薬を処方してもらうのもありだと俺は思う。
そういう補助アイテムを使いつつ、自分の能力の偏りを探してみるのがいいんだと思う。
とにかくこればかりは医師と自分としっかりと相談した上で決めてほしい。
結局は配られたカードで戦うしかない
有名なスヌーピーの言葉でこんなのがある。
「You play with the cards you’re dealt …whatever that means. 」
(配られたカードで勝負するしかないのさ…..それがどういう意味であれ。)
スヌーピー
そう、結局どんな状況においても俺たちは配れたカードで戦うしかない。
はい、今から格好つけるね。格好つけるからね。
いや、もうすでに格好つけ始めてるからね。
俺は俺であって他の誰かではない。
自分の状況や過去を呪ってもどうにもならない。
ありがちな名言かもしれないけど、結局は現状を受け入れないことには次の手は打てない。
残酷だけど、俺たちの暮らしてる世界は不可逆性であり、もとには戻れない。
リセットボタンを押して、自分というキャラクターを作り直すわけにはいかない。
すべて嫌になったらキャラクターを削除することもできるけど、そうすれば本当に終わり。もう二度と帰ってこれない。
誰かの手札には有利なカードが揃っているかもしれない。素敵なヒロインとレアな装備を持っているプレイヤーもいるかもしれない。
仲間だと思ってたやつが離れていくかもしれない。
だけど、まだカードがあるなら、打つ手があるなら、最後の最後まで勝負をしたい。
その次の手で何かが変わるかもしれないからだ。
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