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未来は君らの手の中 #聞いてよ20歳

二十歳の諸君。

若干、今更感はあるけど、ご成人おめでとうございます。

いや、めでたい。本当に。
ようこそ。大人の世界へ。
「成人」というフィールドに於いては僕は諸君よりも幾分か先輩ではあるけれど、だからと言って上から目線で話したりなんかせずに、今回はちゃんと同じ目線で、同じ大人として対等にお話をさせて頂きたい。ジュース買ってこい。





さて。
先日、ついうっかり三十六歳になってしまった。
まさか自分が三十六歳なんかになるとは思っていなかったので驚きを隠せない。まったくの予想外だ。

ちなみに。
念の為言っておくが、この「先日お誕生日でした」は別に何のアピールでもない。そんなつもりは毛頭ない。
女性ならともかく、おじさんの誕生日なんて、土曜のお昼におかんが作るやる気のないチャーハンの次くらいにどうでもいい。

しかし、まぁ、三十六歳。か。
君らと同じ年齢だった二十歳の頃はこんな未来の事なんか想像すらしていなかった。
なんなら明日の事もちゃんと考えてなかった。

思えば、
「はい、君。今日から大人ね」
と御国に太鼓判を押されてから早十六年が経過してしまった事になる。

勿論、ここに至るまでに色々なことがあった。
僕のようなごくごく平凡な人生を歩んできた人間でさえ、ここまでいろんな事があったのだから、僕の周りの大人もきっといろんなものを抱えて生きているに違いない。
別に脅かすつもりはないが、これから大人になっていく二十歳の君らにも、数々の試練が待ち受けていることだろう。


週に三、四回くらいのペースで通っている定食屋にて、勇気を振り絞って
「いつもの」
と注文したら全然いつものじゃない定食が出てきたりする事もあるだろう。

新宿駅、山手線のホームで知り合いを見つけ
「ぅおーい!何やってんだよー!!」
と助走つけてヒップアタックをかました後で、完全なる人違いだったことが発覚する事もあるだろう。

スタジオリハの帰りにギターを抱えて洋服屋に入ったら、店員さんに
「バンドマンなんですねー、バンドマンってお金ないですよねー」
としつこく言われ、ムカついたので試着室で屁をこいて何も買わずに店を出たりもするだろう。

バイト先の飲み会に参加したら
「貴方と付き合ったら変態的なこと常に要求されそうで嫌」
と、大して喋ったことないし全然好みでもない女子から言われる事もあるだろう。

ずっと尾てい骨辺りが痛くて病院に行って尻を出したら、お医者さんに
「意味が分からん」
と言われることもあるだろう。

飲み会で後輩に「ポイズン」って言わせたくて
「言いたいことも言えないこんな世の中じゃ?」
と振ったら
「良くならんと思います」
とマジレスされて
「……だよね」
と返さざるを得ない事もあるだろう。

先輩の誘いでバスフィッシングをしに行き、釣竿を思い切り振りかぶったら釣り針が尻に刺さって、最終的に尻をキャッチ&リリースしてしまう事もあるだろう。

仕事帰りにいつも寄って帰るコンビニで同じお菓子ばかり買い過ぎて、ある日、店員さんのひそひそ話が漏れ聞こえ
「あ、来たよ。トッポくん」
と、自分が変なあだ名で呼ばれていると知る事もあるだろう。

夜中に間違い電話をかけてきたワケのわからん酔っ払ったおじさんと、何故か一時間くらい爆笑しながら長電話する事もあるだろう。

「ステージ上で死ねれば本望さ」
なんて昔は言ってたくせに、こないだ夢の中で死神が出てきたときに靴を舐めてでも生き永らえようとして、起きてから情けなくなっちゃう朝を迎える事もあるだろう。

何故か好きになったアイドルだけが、片っ端からグループを卒業していくという事もあるだろう。

架空請求の電話を受け、たまたま一緒に居た友人に同席してもらい最初は素直に話を聞くも(身に覚えが無いワケでもないので…)
途中で段々馬鹿らしくなってきて、
「わかりました。じゃあ、とりあえず、聴いてください…」
と、カラオケに行ったときの僕の十八番、シャ乱Qのシングルベッドを100%の力で大熱唱したら、いつの間にか電話は切られるし、その後友人から奇人変人扱いされる事もあるだろう。

友人の結婚式で久々にスーツを着て、鏡を見ながら「まぁまぁ決まってるんじゃない?」と若干どや顔で式場に行くも、久々に会う友人達から
「ちょっとシュールなタイプのボケをする漫才師みたい」
と言われる事もあるだろう。しかも満場一致で。

けっこうな期間「レミオメロン」と読み間違えていることに気づかず、普通にそこそこのボリュームで且つ公衆の面前で喋ったりしてた事を思い出し、後々顔から火を噴く事もあるだろう。

電車に乗っているときにドラクエをしていて、はぐれメタル(やっつけたらめちゃくちゃ経験値をくれるけどすぐ逃げる敵)に逃げられた瞬間に思わず「あっ」と声が出てしまい、周囲からの視線を浴びてしまう事もあるだろう。

本当に、本当にいろんな事があるだろう。
ここから先は“なんとなく”では乗り越えられない壁もたくさん出てくる。絶対に出てくる。
絶望に膝を抱える夜もあるだろうし、友を亡くし心の何割かしばらく上手く機能しなくなる日々もあるだろうし、もうとにかく辛い事や面倒臭い事がたくさんある。

それでも、その何倍も。
大人は楽しい。
大人は自由だ。

仕事も税金も人間関係もいろいろとクソめんどくせーけど、それでもその何倍も楽しい。
それを証明するのが、一足先に大人になった我々の使命だとすら思っている。

冒頭でも言ったけど、敢えてもう一度言わせてほしい。


ようこそ、大人の世界へ。

…なんて偉そうな事を言っておきながら、僕は別に何かを成し遂げられたワケでもなければ、何者でもないんだけど。

だから我々と同じ目線で一緒に、
対等な立場で一緒に、
“未来”を楽しもう。

……で、ジュースはまだ?何やってんの?早くしてくれるかな。




きゆかさんのコンテスト企画【#聞いてよ20歳】参加作品です。
きゆかさん、素敵な企画をありがとうございました。
ジュース買ってこい。


お金は好きです。