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そして流れ込むもの【美術館さんぽ]

バタバタした年末年始を過ぎ、自分のペースで動ける幸せを味わっている。

平日昼間の混雑していない美術館。

感染対策がされている入口で、入館時刻と名前、連絡先を書いた。

消毒ジェルを手に広げ、いざ。


「舟越桂 私の中にある泉」

彼を知ったのは天童荒太の小説「永遠の仔」の表紙だったと思う。

独特な彫刻作品が印象に残った。

彼の個展を見るのは今回が初めてだけど、経歴を見たら過去に足を運んだ展覧会に名を連ねていた。

縁があるひとなんだな。

楠に彫られた人物像。

実在のモデルがいたり、幻想的な生物だったり。

展示フロアに並んだ彼らは、不思議で何だか神々しい。

作品の間を縫うように歩き、見つめて、見上げて、後ろから回り込んで。

大理石で作られた瞳が一体何を見つめているのか、視線の先を探してみたり。

息をするのが失礼だと思われるくらいに、澄み切った静寂の時間。

ざわついていた心が穏やかになった。




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