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【詩】大連上人

カン カン カン

シャン シャン シャン

「大連上人が入寂されたぞ」

鳴り物の音を響かせながら

紫の法衣をまとったボウズたちが

御山から降りてきた


カン カン カン

シャン シャン シャン

「皆のもの嘆き悲しめ」

ふところから取り出した札を

きたない二本足にばら撒きながら

香くさいソウたちが歩いていく。


カン カン カン

シャン シャン シャン

樫の木を削って棺はできあがった

重い蓋の中には大連上人

目をひん剥いたままでカチコチだ

瞼は誰にも閉じることができなかった。


カン カン カン

シャン シャン シャン

金ピカの錫杖が

無数に棺をとり囲んでいる

鼻を垂れた小僧が

ハゲ頭の一つに石を投げた。


カン カン カン

シャン シャン シャン

ぴかぴかの頭から一筋の血

ボウズは小僧の方をふりむき

右手の人差し指で目の下を伸ばし

真っ赤な舌を突き出した。


カン カン カン

シャン シャン シャン

朝日に照らされながら

まばゆいばかりのアタマの群れが

紺青にうねる青い海に

虚な足音を立てて歩いていく。


やがて太陽が昇る海の果てから

ルビー色の口内をぱっくりあけて

大きなヌエがあらわれて

ゆっくりゆっくりこっちに来た。


坊主たちは笑いながら

大連上人の骸と共に

艶めかしくうねる口に入っていった。


最後の一人は振り向くと

二足どもに向かって

「大連上人が入寂されたぞ」

と吠えた。

そして口は閉じられた

未来永劫閉じられた。

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