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【宗教】生活圏を超える

「生活圏」とは、人が社会的な存在として、圏に定められた規範に基づき行動する範囲のことです。

その「生活圏」を守ろうとする人々は宗教を厭います。

宗教は「生活圏」より大切にすべきものがあると語りかけてくるからです。



たとえばキリスト教の聖書には以下の聖句が書かれています。

きょうあっても、あすは路に投げ込まれる野の草さえ、神はこれほどに装ってくださるのだから、ましてあなたがたに、よくしてくださらないわけがありましょうか。信仰の薄い人たち。

そういうわけだから「何を食べるか」「何を飲むか」「何を着るか」などと言って心配するのはやめなさい。

こういうものはみな、異邦人が切にもとめているものなのです。

しかし、あなたがたの天の父は、それがみなあなたがたに必要であることを知っておられます。

だから、神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加えて、これらのものはすべて与えられます。

だから、あすのための心配は無用です。あすのことはあすが心配します。労苦はその日その日に、十分あります。

(マタイの福音書 第6章30節から34節)



私たちは「何を食べるか」「何を飲むか」「何を着るか」だけでなく

「何をして楽しもうか」「何に金を使おうか」「どの会社に入社しようか」などということを絶えず考えています。

それらは「生活圏」での生活を安定させて、豊かに暮らそうと欲しているからです。

そして、そのことは「生活圏」に住んでいる人たちが皆、共通して考えていることです。

そのために、規範に基づき皆が動いています。



もし、その規範が破られれば、違反した人間は罰則に従い処罰されます。

ですが、共通の規範が定められた目的を、意にも介さない人たちがいます。



その人たちは、自分達の信念に反さない限り、規範に従います。

しかしそれは、無用な争いを起こさないためであり、

なにより、彼らの信じている教義に「人と和して生きなさい」と定められているからです。



規範の「生活圏の社会を維持しつつ欲望を満たす」という目的のために従っているわけではありません。



同じ「生活圏」に住む者は、規範のみならず、その根底にある目的も共有しているので、お互いに理解し合えます。

でも、独自の教義を信じる人たちは、理解し難い存在であり、胡散臭く感じられ、制御しにくいと思われるのです。




真なる宗教は「生活圏」のことなど些事だと言い切ります。

宗教は「生活圏」のためにあるわけではありません。

教会が他の「生活圏」から守られる城となり、単に生活を助け合う集団となるのでしたら、それはどこか違います。

それは、無数にある「生活圏」が一つ増えただけです。



違う「生活圏」どうしがぶつかったら争いとなります。

それは「生活圏」を築いてしまった宗教でも同じです。

「生活圏」を守るための組織ができあがった時は、人類愛を唱える宗教でも、いつかは「圏」のために争いを引き起こします。

宗教戦争と呼ばれるものですね。




人類の歴史には多くの宗教戦争が起こっており、そのことについて

「宗教が人の世からなくなれば、戦争もなくなる」

とよく非難されます。



ですが、それは宗教ではなく「生活圏」の争いです。

宗教が駄目なのではなく「生活圏」に依存している人たちの業とも言うべきものなのです。

我々人間の問題なのです。



宗教がなくなったとしても「生活圏」をめぐり戦争は起きます。

宗教は、大義を錦の旗として掲げやすいため、これからも都合よく利用されるでしょう。

それがなかったら、他のものが旗として掲げられます。



真の宗教は「生活圏」から逸脱しています。

「何を食べるか」「何を飲むか」「何を着るか」「何をして楽しもうか」「何に金を使おうか」「どの会社に入社しようか」

そのようなことを考えません。



「それだと生きていくことはできない」と心配されるかもしれません。

私の体験としてはっきり言えるのですが、心配しなくても生きていくことはできます。

それどころか、上で述べた様々なことに囚われていては、つまらない事しかできないのです。



己の義務に忠実足らんと欲すれば、真理から導かれるのです。



一回、頭の中をすっきりさせて、塵一つなくして

心の底から語りかけてくる声に、素直に耳を傾けることができたのなら

驚くほど素早く最良の選択ができます。




人々が「生活圏」や、それらが巻き起こす争いから解放されたいと望むのなら、

現世の「何をどうするか」から

多くの心配、取り越し苦労から解き放たれる必要があります。



そしてそれは、いつも人を見守っている真実なる存在に帰依することで

たやすく行うことができるのです。

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