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【詩】四獣と鏡

万物を照らし

虚言をあばき

闇に包まれた真理を明らかにする

埃まみれの曇った鏡。



遥か昔

創世の頃にまで遡れるほど昔

蒼き彗星と

昏き恒星が

己の存在をかけて

ぶつかり合った時のカケラで

鏡ができた。



宇宙に散らばった星の数ほどに

命をうつし

世界を崇める生命の数ほどに

偽りを睨めつけ




在ることに歓喜する思いの数ほどに

喜びの波動と共鳴して

真理に辿りついた自我の数ほどに

コトワリをうつした。




サファイアブルーに光る

宇宙を旅する龍



たぎる溶岩に潜む

やぶにらみの巨人


深き深き底なき海底で

静かに鎮座する蛸


虚空を暗闇で満たす

盲いた大鷲。




彼らは夢みた

己の創世を。

望みを。




己をあらしめた

世界への復讐を。




すべてを喰らい尽くしても

なお足らぬ

果てなき、渇望。




異形の彼らは

鏡を手にして



真の摂理を知るために

己の世界を創るために



穢れなき

透明な銀の泉を

のぞきこんだ。




そのとき、泉はうつした

彼らの執心を

尽きることのない欲望の源を。




世界から分たれ

孤立して囚われた。

己の心を。



うつった虚像たちは

己の源となった

哀れなモノたちを

たちまち喰らった。



鏡から頭だけを

大食らいの口を開けて

瞬く間に

獣たちを

胃の腑におそめた。



残るは虚空のみ。

どこまでも空があった。



獣を人のみにした鏡。

喰らうたモノの

果てなき慟哭の振動で

鏡はヒビ割れた。


瘴気は

永劫に鏡面を曇らせた。



喰われた四匹の獣は

悠久の時を超えて

やがて

金髪の優しい男の子たちに

なるのだろう。




万物を照らし

虚言をあばき

闇に包まれた真理を明らかにする

埃まみれの曇った鏡。



どうかこれからも

そのままで在ることが

できますように。

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