国民民主党 第3回憲法調査会「憲法改正の作法とは」3

質疑応答、質問1~3です。

■チャットコメントから

(山尾)
井上先生ありがとうございました。目から鱗がポロリと落ちるとご紹介しましたけれども、あのベルサイユ宮殿の辺りを含めてですね、今日来てくださってる皆さんも、そしてまたオンラインで参加してくださる皆さんも、すごく様々な反応があって、とても本当にお招きしてよかったなっていうふうに思いました。
もちろんこの後、質疑・意見交換になっていきますけれども、ちょっとここまで、すごいオンラインのチャットで、何かすごくポイントがよく指摘されてるのをいくつか紹介しますので、皆さんその間にちょっと質問とか、こんな意見とか、少し考えていただければいいかなというふうに思います。

今、憲法裁判所の、いわゆるフランスでいう憲法院の話がありましたけれども、こんな反応ですね・・・

日本は法律に対する違憲判断、たった10件なの!?という驚き

ですね、あとは・・・

違憲、ほとんど判断しないし、しかも日本やと実際のケースないと違憲か判断できないしなあ

という話。そんな話が、結構憲法裁判所の話は出てますよね。あとは・・・

フランスのプロセスについては、しっかりPDCAサイクルで継承してるのがいいよね

っていう。確かに2008年の改正の後、2年後にちゃんと人の検証していくっていう、そういうのもすごくそこは大事だよね、というような話がありましたね。
あとやっぱり制度を改正することが目的なので、憲法改正はその手段で、だからこういう問題点があります、解決策はこういうものがあります。だとすると、これは憲法改正ですね、これは議院規則でいいですね、って後から手段を振り分けていくっていう、この思考のプロセスっていうのが、私は実は井上先生から聞いて一番目からウロコだったポイントだったんですけれども、聞いてくださってる皆さんも、

憲法と法律がセットで議論されるんですね、フランス
しっかりアジェンダを明確にして議論していくことが大事ですよね

っていう、こんなコメントも来ています。先ほどのパリテの話がありましたけど、日本だとああいう、その「男女平等」みたいないい制度提案だと、憲法に反するかどうかっていうよりは、むしろ、憲法に無理があってもそこをなんとか解釈を広げて、いい制度だからやっていくみたいな。
でも今の話を聞いていると、いい制度であってもきちっと憲法裁判所は合憲・違憲を判断をして、仮に違憲と言われたらそれはその制度が駄目っていうことではなくて、それを押してまでやる時代の必要性があれば、ちゃんと議員の方でその憲法改正という提案を通して実現していくっていう、やっぱりそういう丁寧で合理的な思考のプロセスとか制度のプロセスって、すごい大事だなというふうに私なんかも思いました。
でもフランスも、日本に比べていいとこばっかりかというと実はそうでもないっていうのも、またちょっと何かほっとするところがあって、実は憲法裁判所の裁判官は、今もあれですよね、元大統領がなれちゃうっていう仕組みはまだ続いてるんですよね先生。

(井上)
いつも批判の対象になってます。

(山尾)
ちょっとこれとかも、私がちょっと、それはないだろうって、思ってしまっちゃった制度なんですよね。日本で仮に憲法裁判所ができたときに、元総理とかがなりたきゃなれちゃうっていう、結構あの辞退をする人も、フランスではいるようですけれども、なりたい人はなれちゃうっていう。辞退する人の方がなってもらいたい人のような気もしますけど、そういう、それぞれの国に足りないところと進んでるところがあり、日本は、今日の話を聞いて、やっぱり日本なりの、この憲法改正のPDCAサイクルというか議論の作法を作っていけばいいのかなというふうに思いました。

■質疑応答

それでは皆さんの方からご意見や質問を賜りたいと思います。もう議員からでも一般の方からでも結構です。あの、ちょっと急ぎで最後までいれないんでっていう方は、ぜひ最初の方にご発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。はい政調会長、舟山さんどうぞ。

・【質問1】

どうも先生ありがとうございました。
2008年の憲法改正を、2008年ですよね、教えていただきたいんですけれども、これは大統領の発議ということで、原案を、このバラデュール委員会が作っているわけですけれども、この過程の中で、政党が果たす役割というのはあるのかどうか、ということが1点目。
もう一つ、コンセイユ・デタ、これいわゆる内閣法制局、日本で言うところの内閣法制局なのかなと思いますけれども、これは、これ見るとかなり厳しいことも言ってるような気がするんですけども、日本に比べて内閣から独立してるという理解でよろしいのかということが2点目。
そして。結局最終的には、国会での議論の中でこれを、レジュメの④ですね、見ますと、下院だけで955件の修正案が提出されたということですけれども、これ憲法に限らず法案についても日本であると、現実、国会の審議の中でいくらいい意見が出てもなかなか修正、中にはありますけれども、ほとんど修正されることなく通ってしまいますけど、今回、このときに955件の修正が出されて、これはこの件でもそうですし一般の法律についても、国会の中で修正されるということは頻繁に行われてるのかどうなのか、この点教えていただきたいと思います。

(井上)
ありがとうございます。非常に重要な点、3点ご指摘いただいたと思います。
まず最初政党の役割なんですけども、私の見る限りそんなに大きいなって感じはしなかったです。政府の法案を出しているので。で、実際最後の評決のときも、党議拘束も一応あったみたいなんですけども、与党も造反しましたし、野党も造反した人が居たみたいで、だから最後政府の読みとはちょっと違ってギリギリになってしまったっていうのがあると思いますので、そんな政党の役割が大きいっていう感じではないと思いますね。この政府の法案作るときに、与党の議員が何か働きかけるっていうのは、あんまりないのかなっていう感じがいたします。
他方ですね、最近は割と政党の役割出てきたっていうふうに言われてまして、特に上院がすごく党派的に、改憲の阻止のためにすごく固まるというか、いうことで、だから最近実現してないんですね憲法改正が。ですので、ちょっと政局的だなっていう感じはするような。上院の方が割とかたいかなっていう気がします。やっぱり上院の方なかなか構成変わらないので、与党がですね、すぐ、5分の3とかですね、たくさん票を取ってるって限らないので、上院については党派的に動くっていうのはフランスの先生からも聞いたことがあります。
2点目、コンセイユ・デタの独立性なんですけども、これはですね一応法律上、独立性が確保されてるっていうふうになってまして、政治家が何かするっていうことは、一応法律上はないというふうに言われております。というのは、コンセイユ・デタの構成員っていうのは非常に特殊な人で、国立行政学院っていう、エナっていう組織があるんですけども、そこを出た人からリクルートするっていうふうになってましたし、そのエナのですね、一番のトップが確かこのコンセイユ・デタのとこの人なので、おそらく職能集団っていうのが一つ資格っていうのがありまして、高いっていうことは言えると思います。
ただ、このコンセイユ・デタの構成員は、もうフランスの行政とかのところに、いろんなとこに根を張って影響力を及ぼしているので、そういう批判はあります。実際こないだ内閣改造のときに、内閣の事務総長っていう非常に有名な凄腕の、このコンセイユ・デタの構成員の人もやってたんですけども更迭されまして、ちょっと権力が強すぎるということで。そういう事態もありますので、ちょっと政治との関係が、それはよくわからないというのが確かです。
3点目の国会での修正ですけども、これは非常に活発に行われてまして、政府の法案でもですね、原形をとどめないほど修正されるっていうことがありますね。

(舟山)
野党の意見もかなり通ると。

(井上)
多分通ると思います。はい。
ただこれ委員長の裁量というか、さばきというか、どれを採用してどれを入れないとかですね、これは瑣末な提案とか重要な提案とか、判断して割と裁量があるみたいなんですね審議するときに。で、野党議員がこう修正で出して、政府もそれに対して更に修正案を出してきて、その場のやりとりが非常に活発。で、逆に言うとすごく複雑化して、審議の長期化っていうのを招いてまして、それをちょっと短縮して、それが野党議員の権限の縮小という話に繋がっていってるのかなっていう気がいたしました。

(舟山)
2008年憲法も、かなり国会審議の中での改正もあったでしょうか。

(井上)
あったと思いますはい。実際政府が出した条文数と、成立した条文というのが違いまして、かなり多分大部なものになったと思うんですが、最初簡素なものだったんですけども、修正してるうちに足してっていうのは結構ありますね、それは。
これは2016年の憲法改正のときも、こういう緊急事態のときでしたけども、すごい政府は簡素な案出しましたけども、最後国会で審議されたとき条文3倍くらいになってまして、割と自由に提案して、それをよかったら取り入れる。反対だったら政府も反対するっていう形で議論をされていると思います。

(山尾)
とても重要な点を、ありがとうございました。どうでしょう。

・【質問2】

本日は貴重なお時間いただきましてありがとうございます。
承認手続きのところについてご質問させていただきます。
フランスでは元徳国民投票の過半数の賛成で承認。例外で、全国会議員の5分の3の賛成で承認されるということなんですけども、こういう例外規定を作っている憲法改正のプロセスっていうのは、諸外国においては当たり前というか主流なのか、それともフランスが珍しいのか、その辺りのご紹介を少しいただけたらありがたいなと思います。
あと関連して、日本においても、こういうふうに国民投票を省略する道といいますか、ちょっと言い方悪いかもしれないんですけども、全国会議員の特別多数で承認すれば、国民投票に付されなくても承認されるっていう道を、日本においても例外規定として作るべきかどうかのご意見を賜りたいと思います。よろしくお願いします。

(井上)
ありがとうございます。原則・例外っていうのは、説明がわかりやすく書いたっていうことで、条文の作り方としてそうなってるってことなので、基本は国民とやってくださいと。ただ大統領が選択すればこちらもできますっていう書き方なので、フランスはそうなってるっていうことだと思います。
外国でもですね、確かイタリアなんかはですね。あの議会での賛成の多さによって、国民投票するかどうかってのは分かれてると思いましたので、ちょっと詳しいことはわからないので、「世界憲法集」とかですね、こういうのありますので、細かいところはちょっと私今覚えてませんので、見ていただければなと思います。
あと、日本でも国会議員だけで、憲法改正を実現するか、できるかっていうそういう制度のご提案ですよね。確かに国民投票をやる国ももちろんありますけども、国民投票を経ないで改憲をするっていう国も割とありまして、アメリカもそうですしドイツもそうですよね。ですので国民投票は必須かといえば、世界的に見ては必須ではないということになっております。
ただ日本の憲法学会の通説的な見解は、国民投票制度を廃止することはできないっていうふうに、有力な教科書でも書いてまして、そことの関係で問題になるのかなっていう気がしております。
ただそれも含めて憲法改正の限界は自由だと、限界はないという立場もですね、もちろん憲法学会でもありますから、議論というか検討すること自体は、私はそんなに悪くないといいます検討してもいいかなというふうに思います。

(質問者)
日本においても、国民投票に付さずに国会議員が承認するだけで憲法改正ができるっていうのを、国会議員の今日ご出席の方もどうお考えかっていうところをお伺いしたいんですけども。

(山尾)
ちょっと私からお答えするというか、一つの問題提起としてあっていい議論だとは思います。
ただ、今のまだ改正条項で一度も憲法改正自体なされていない中で、やっぱり国民投票があるっていうのはそれなりにいい制度だと思うので、やはりその制度を使った憲法議論と改憲議論っていうのをしっかり日本全体で、何ていうのかな、経験していく、今は時期なのかなっていうふうに思います。その経験をせずに、もうその96条から改正をして別のやり方でっていうことよりは、一度今ある改正方法を経験していくっていう方が、私はいいんじゃないかなっていうふうに思ってます。
ただ今井上先生もおっしゃったみたいに、憲法って、憲法学者の人の通説っていうのがあったり、有力説っていうのがあったり、少数説っていうのがあったり。あとは、政府の解釈っていうのがあって、それも変わってしまったり。で、あとはそういうのとは自由に、本当は私たちが議論、私達というか国会議員や国民の一般の人がある意味白地で考えて、こういうふうに解釈すべきなんじゃないのって、そういう議論もあってもいいと私は思っているので。
そういう意味では憲法を変える限界はあるのかないのか、あるとしたら何なのかっていうことも、きちっとその学者の通説・見解があるっていう、通説は通説ですけれども、それを知った上で、必ずしもそれに縛られずに議論していくっていうことは、私は悪いことじゃないなっていうふうには感じてます。
もしこの点で、ちょっとコメントあるよっていう方いますか。とりあえずこのテーマはいいですか。でも多分、議員によっていろんな考え方あると思います。

(井上)
むしろ先生がたにお尋ねしたいのは、国会の3分の2の賛成ですよね日本の場合は。これが必要なのかどうかっていうのは大きな検討事項だと思うんです。
憲法改正、例えばたくさんの人の特別多数の賛成を得てやるっていう考え方もありますけども、これ逆に言うと3分の1の人に拒否権与えてるっていう、少数者に拒否権を与えているということなので、それが望ましいのかなって思うんですね。
つまり後で国民投票が控えているので、国民に意見を聞かないようなプロセスになっているわけでして、これまで。国民主権の観点からも、こういう拒否権みたいな、少数者の拒否権をこの段階で認めていいのかっていうことは、議論されてもいいのかなっていう感じがいたします。

(舟山)
今の質問との関連ですけれども、要は、原則は国民と、やっぱフランスでね、国民の意見をちゃんと聞きますという原則にしながら、最近は本来例外である、両院合同会議、つまり国会議員が是非を決めるということが今常態化しているということですけれども、それに対して国民から不満の声は上がらないんでしょうか。

(井上)
それはちょっと私、国民の動向はちょっと正確に把握できないんですけども、その2000年の、やっぱ憲法を改正したときに、投票率は30%ぐらいなんですよね。だから国民がそれほど関心があるのかっていうと、ちょっとわからないところはあるのかなっていう気がいたします。あと国民投票が選択されないのは結局政権に対する信任っていうか、そういう面が含まれてしまいますよね。ブレグジットのときもそうでしたし。
なので、憲法改正そのものの問題じゃなくて政権に対する評価っていうふうになってしまうので、ツールとして望ましいのかどうかっていうこともですね、フランスの先生から聞いたことあります。

(山尾)
すごくいい議論だと思います。
ただ、私やっぱり議員の3分の2、そして過半数の国民投票っていうプロセスは、やっぱり1回やっていった方がいいような気がするんですよね。
議員の3分の2って確かにあの各国比較からすると結構ハードル高いし、それが本当に必須なのかっていうとそれは別に必ずしも、3分の2という高いハードルがベストだという、別に確信があるわけではないんですよね。
ただ、この今日の話なんか聞いても、バラデュールのように、右派の委員長であっても、割と内閣を統制するとか、国会を強化するとか、そういうきちっとある意味普遍的にリベラルな提案がされたりとか、そういう状況に少しでも日本が近づいていけば。あとは野党でもちゃんと提案していくとか。そうすると最初に3分の2を形成できる、それによっておそらく国民のできるだけ多くの合意も形成できそうな、そういうテーマってあるし、そういうテーマっておそらく大事なテーマなんじゃないのかなっていうふうには思ってます。ただ、3分の2が必ずしもあのベストの選択かっていうのは、そういう経験を経てながらずっと議論を続けていけばいいのかなっていうふうに思いました。ありがとうございますご質問いただいて、はい。

・【質問3】

今日は本当にお話ありがとうございました。三島由紀夫が亡くなってちょうど50年、三島由紀夫が憲法改正を訴えて50年、一切変わってないというこの状況の中で、こういうふうな憲法調査会のシンポジウムをされて非常に私、三島さん、天上で喜んでるんじゃないかなと思います。
実は私、自衛官ですので、いわゆる交戦権がないという状況の中で、昔来栖さんって、このままでいったら、超法規的行動しなきゃならないって言われてクビになってしまうんですね。今のような状況の中で、基本的にはマッカーサー憲法ですので今の憲法は、日本を弱くするための、憲法であったのに、50年間、国会議員は、このことについて何の疑問も持たなかったんだろうかと。根本的に日本の伝統文化とかそういうものを全部打ち消して、そういう交戦権も打ち消して、そういう憲法にこのまま満足してたっていうのは、野党の方だけでなく自民党の方もそういうふうに首切りすることで、自民党から野党まで全部憲法を守ることが正義だというようなものを、しがらみ憲法ですね、やって、これは違憲だというものがどんどんもっと出て、審査が出てですね、もっと歪んだ世の中こう変わっていくような流れになるといいかなと思って、私はこの憲法調査会非常に素晴らしいなと思いました。感想になりましたけれども。

(山尾)
どうも大変ありがとうございます。
もし先生からもコメントあったらと思いますけれども、自衛官やってこられたということで、私これ党というより個人の考えかもしれないですけれども、やはり日本国民として、自衛官の方にこの国の守りをお願いしているのであれば、そしてその守る手段のために交戦権の一部を行使してほしいと実態でお願いしているのであれば、やはりそこのルールのところや承認のところを国民の意思で憲法できちっと決めて、それを自衛官の方に誓いとして守っていただくっていうことは、国民として大変大事なことだと思ってますので、この調査会でもきちっとその議論もテーマとして立ててやっていきたいと思いますので、またぜひご参加をいただければなというふうに思いました。先生方から何かコメントございますか。

(井上)
すごく大事だなと思ったのは、自衛官の方が超法規になるかもしれないっていう感覚ってすごく大事だと思うんですよね。超法規になってしまうと、それはもう法治国家ではなくなり、立憲主義ではなくなってしまうわけです。
ですので、そういう極限状態といいますか、戦争状態もそうですし、緊急事態の条項の議論というのが実はそうで、あれは非常時にですね、権力が超法規にならないように手当てをするという観点でフランスとかドイツでは議論されてるんですね。
日本だとすぐあの緊急事態条項使うと独裁制とかいう話になってしまいますけども、フランスとかドイツで行われている議論はそうではなくて、異常時の対応が超法規にならないように、あらかじめ憲法で枠づけるっていう考え方ですので、これは9条も自衛隊も緊急事態でも、重なるところはあると思います。興味深いなと思います。大事な視点を提供していただいて、本当にありがとうございました。


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