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(19-11-15)擬人化された英単語が地球を救う。はあ?【小説】ことだまカンパニー 第十九章 前夜(11)~(15)

十一

 琴代志乃ことしろしのは、そこにいるように見える。鑑三郎の目には。

 今の鑑三郎は、二枚の布を上下にうねる縫い針のように、リアル・ワールドとことだまワールドをほとんど瞬時に、自在に行き来していた。その意識の往復運動があまりにも早く、あたかも彼は、両方の世界に同時に存在しているように見えた。今や鑑三郎は究極のレシプロケーターだった。

 志乃は、ことだまワールドで、鑑三郎が気に入って購入したこの中古の古民家と、同じ空間座標に存在していた。パラレル・ワールドにまたがる鑑三郎にとってみれば、この古民家に志乃と同居しているも同然だったが、縁側に立つ志乃の姿はリアル・ワールドの住人には見えていないので、鑑三郎の言動を目撃した者の目には、しばしば奇異に映っただろう。

 鑑三郎は、縁側にあったラジオを切ると、サッシを開け放ったままの居間の畳に座り、ことだまワールドで志乃が淹れた茶をすすった。

 絹糸のような雨が「シーッ」という音を立てて一斉に辺りを濡らし始めた。風も伴うので、春雨というには少し風情のない降り方にも思えたが、湿った地面や草木からむせるような匂いが立ち昇るのは、ここ数日の陽気のせいだろうと鑑三郎は思った。志乃には悪いが、ことだまワールドで味わう茶の何倍も、雨の匂いにはリアリティーがあると思った。

「若い奴らがニューヨークでやりおったそうだ」

「そうですか。では手伝わない訳にはいきませんね」

「うむ。しかも三人の救国官の一人は、万三郎という名前らしい。もちろん本名ではないが、俺とよく似た名前なんて、ちょっと愉快だ」

「あなたにちなんで古都田社長がつけたのではないですか?」

「いやあ、大泉万三郎総理にちなんだんだろうよ」

 鑑三郎は壁際の柱に掛けられた日めくりカレンダーと、その横の振り子時計に目をやって志乃に言った。

「この時間ならもう帰国しているはずだ。また愉快なことに石川の話では、彼らは伊勢の神宮で祈りたいと、大泉総理に直接願い出たそうだ」

「まあ、伊勢へ?」

「うむ。良い選択だ。ただ、民間の飛行機と高速道路の通行は制限されているから、ひょっとしたら、自衛隊のヘリあたりで伊勢へ向かうのかも知れんな」

 鑑三郎はそう言うと茶を飲み干した。

「では、今夜にいたしますか?」

 志乃は柔らかな表情で鑑三郎に問う。

「うむ。俺もよく生きた。志乃とも連れ添えたし、思い残すことはない。この蕾が開くのと富士山頂を見られんことを除いてはな」

 そう言うと鑑三郎は立ち上がってひとしきり桜を眺め、麓しか見えない富士を眺めて、それからサッシ窓を閉めた。

 小さくなった雨音に紛れて、振り子時計が微かに「カ……カ……」と音を主張し始める。

 志乃は鑑三郎に寄り添った。

古都田ことだ現社長の了承を得ていますので、会社の方も、これまで千七百年ほど蓄積してきたエネルギーを全部、吐きだしますわ。きれいさっぱり」

「む。古都田くんがそれを了承したのか」

「私の願いを喜んで聞き入れてくれました。『千七百年もこの会社を切り盛りしてこられた創業社長のご意見に、わずか十余年の経営経験の私が、何の異論がありましょう』と言ってくれました」

「うむ。会社が総力を挙げて挑むのであれば、これは可能性がさらに高まる。さすが志乃、いや、邪馬台国女王、壱与いよだ」

「やだ、昔の名前で呼ばれると、何だか恥ずかしいじゃないですか」

 リアル・ワールドに在世した三世紀頃と変わらず、二十歳そこそこにしか見えない志乃は、着物の袖で赤ら顏を隠しながら、隠されていない目で鑑三郎に微笑んだ。

 雨脚が強まり、春雷が近づいた。


十二

 テレビをご覧の国民の皆様、ラジオをお聴きの国民の皆様、インターネット生中継をご覧の国民の皆様、日本国内閣総理大臣の大泉万三郎です。日本政府を代表して、国民の皆様にこれから、非常に大切なご報告と、お願いを申し上げます。

 私はこれから、悪いご報告を三つと、良いご報告を一つ、お願いを一つ、順番に申し上げます。

 悪いご報告の一つ目です。

 明日、地球に、小惑星が衝突します。

 小惑星の直径は約四百二十メートル、質量は約八千万トン。毎秒十五キロメートルの速さで地球に向かっています。地球と衝突する確率は、計算上は九十九・九九パーセント。衝突場所は、太平洋の小笠原近海の見込みです。衝突予想時刻は、日本時間で明日四月五日木曜日、午前五時十四分、今から十七時間と十分後です。

 天体が地球に衝突した際の予測被害状況を表す国際尺度によりますと、被害の深刻度は、最悪を十とする十段階のうちの九にあたり、この衝突は、空前の地域的荒廃をもたらす破壊力があります。残念ながらその地域には、日本列島がすっぽり含まれます。衝突場所が確定したのは、五日前のことでした。

 国民の皆様もご存知の通り、アポフィスと呼ばれるこの小惑星は、以前から地球に衝突する可能性があったため、世界が共同で小惑星まで無人の宇宙船を打ち上げ、ごく近いところから小惑星にミサイルを撃ち込むことによって、その衝撃で人工的に小惑星の軌道を安全なものに変える作業を進めていました。しかしながら、昨年五月二十五日に観測された、恒星ベテルギウスの超新星爆発に伴う強力な電磁波の影響で、宇宙船のコンピューターが誤作動を起こして、ミサイルは小惑星の予期せぬ場所に命中してしまいました。その後の軌道計算によって、皮肉なことに、小惑星が明日、地球に衝突することが分かりました。

 この事実はいたずらに世界をパニックに陥れる恐れがあることから、わが国を含む各国政府は今日まで厳しく箝口令を敷いた上で、衝突を回避するあらゆる手段を模索し続けてきました。

 有力な手段として、米国とロシアが保有する大陸間弾道ミサイルの一部を宇宙用に緊急改造して、今年二月に一斉に発射し、小惑星の破砕を試みました。残念ながら五日前、三月三十一日になって、その試みが全て失敗に終わったことが判明いたしました。

 悪いご報告の二つ目です。

 ベテルギウスの超新星爆発の影響で、地球の磁場が一時的に非常に乱れております。そのため、これを原因とする異常気象が世界各地で多発しています。現在、日本列島に上陸しようとしている、超大型で猛烈な台風一号も、その影響で発生したと考えられております。

 こうした、地球規模の、水温、気温の変動、海流、大気の流れの乱れにより、小惑星衝突の影響は増幅される見込みです。専門家の見通しによりますと、津波など、衝突の直接的被害に加え、粉じんが地球全体を覆い、気温が下がる影響で、生物相が極端に変わり、食糧が尽きて、五年以内に人類が絶滅する可能性が大きいということです。

 悪いご報告の三つ目です。

 二日前、太陽の表面が大爆発を起こしました。正確な予測ができませんが、もう間もなくその爆風が地球を襲うだろうということです。この太陽嵐の影響は、明日の午前中まで続くと予想されています。地球の地磁気は現在大変乱れていますので、この爆風の影響は甚大で、世界的に停電が起こり、電子機器は誤作動を起こし、テレビもラジオもインターネットもつながらなくなると予想されています。もしこの間に小惑星が衝突すれば、電気も電波も、復旧は不可能です。

 わが国は、巨大台風が国土を襲う中、何一つ情報の来ない、真っ暗闇の夜明け前に、小惑星の衝突を迎える可能性が非常に高くなっています。

 国民の皆様、このままでは、この小惑星の衝突によって、わが国と太平洋沿岸諸国は真っ先に、絶筆に尽くしがたい被害をこうむることになります。今となっては、この悲劇的な衝突を避ける術は、ただ一つの方法を除いては、何もありません。


十三

 人類を救うたった一つの方法、それは、我が国が古くから大切にしているコトバの力、すなわち、「ことだま」の力を結集して、小惑星の軌道を地球から逸らせるという方法です。

 国民の皆様、私は今、内閣総理大臣として正式にこの方法を提唱しております。

 実は、政府内に、ことだまを長年研究してきた部署があります。その担当者の中には、ことだまを小さな物理エネルギーに変換できる技能を持つ者が複数おります。その研究はまだ途上ではありますが、非常に小さいながらも、コトバに物理的エネルギーを持たせることが、一般人でも可能であると結論づけています。

 日付けが変わる午前零時の時点で、小惑星の軌道を、〇・〇一度、動かすことができれば、小惑星は地球に衝突しないということが、専門家の計算で分かっています。

 もし世界七十億人が同じ言葉を発すれば、そのわずかなエネルギーが結集して大きな力となり、小惑星の軌道を変えることが可能かも知れないのです。政府はこれを、「偉大なる絆グレート・ボンズ」作戦と名付けました。

 良いご報告を申し上げます。

 日本時間で今月二日、アメリカ、ニューヨークで開かれた国連緊急特別総会において、グレート・ボンズ作戦を、日本が世界に提案しました。世界は、全会一致で日本の提案に賛成の決議をしました。

 まさに今この時間、その決議に基づいて、各国首脳が、自国の国民に協力を呼びかけています。それは、人類七十億人が、時を同じくしてことだまの力を結集し、文字通り地球を救う、人類史上最大の作戦です。

 日本国民の皆様、私はこの放送を通じて、皆様に切実なお願いをさせていただきます。グレート・ボンズ作戦に、皆様のお力をお貸しいただきたいのです。

 幼稚園に通う前の子どもさんも、百歳を超えるおじいさん、おばあさんも含め、日本国に在住、滞在されている全ての皆様、日本時間で、日付けが変わる真夜中零時を中心として、どうか、声に出して、「ホープ!」と唱えてください。ご存知の通り、英語で「希望」という意味です。現在の世界言語は英語ですので、今回は、ことだまの効果を最大にするために、コトバの「音」も英語で統一することになりました。

 同じ時間帯に世界中の人々が、「ホープ、ホープ、ホープ……」と唱えます。そして、唱える時に、どうか心を明るく持ってください。絶望した心で希望を唱えても、軌道を変える強い力は生まれてこないからです。

 小惑星の軌道は、現在、地球の軌道とわずかな角度で重なっているにすぎません。今ならまだ、衝突を回避する希望が持てる角度です。

 衝突ギリギリまであきらめずにことだまを小惑星に送り出し続けることで、世界人類の「希望、ホープ」が、目には見えませんが、大きなエネルギーの絆となって、小惑星の軌道をわずかに変えることができるはずです。

 私たちはこれから、未曽有の強さの台風に襲われ、磁気嵐によって停電が起こり、テレビもラジオもインターネットも電話もつながらない不安と孤独の中で、刻々と迫ってくる小惑星衝突の恐怖と闘うことになります。

 ですが、私はもちろん、閣僚も、国会議員も、中央省庁の役人も、自衛隊も、警察も、消防も、決して逃げません。この国を守り通します。

 国民の皆様、決して絶望に屈せず、今、日本の、いや世界の一人一人が、心を一つにしているのだ、グレート・ボンズは必ず形成されるのだと信じて、「ホープ」を唱え続けていただきたい。

 古来よりことだ……らを信じてき……私たち日本国民……未来を信……どうか最大限に発揮……ザー……ザザザ……国民……明朝、必ずまた、お会いしま……ザザザー……ザー。


十四

 ショルダーハーネスをつけてジャンプシートに並んで座っている三人の所へ、副操縦士がコックピットから移動してきた。

「申し訳ないですが、離陸前に警告してあった通り、直接小牧基地へ戻ります」

 救国官三人を代わる代わる見ながら、副操縦士は大きめの声でそう言った。

 杏児が訊き返す。

「航空自衛隊の救助ヘリでも、この風ではやはり難しいのですか」

 副操縦士は、口をゆがめ、言葉に詰まった。サングラスをかけているので表情までは分からないが、おそらく悔しかったのだろう。もちろん杏児は単純に残念だという思いがあって訊いただけで、皮肉を言ったわけではない。副操縦士は一度、口を真一文字に結ぶと、やがて言葉を絞り出すようにして丁寧に説明した。

「伊勢湾海上の気圧は今すでに九百六十ヘクトパスカル、平均風速は二十ノットを超えています。すでに普通の台風の真っただ中と同じレベルです。それでもこのヘリは巡航は可能ですが、現在、伊勢のヘリポートや中部国際空港のヘリポートは、暴風の方向が安定しておらず、着陸やホバリングについては困難です。残念ですが……」

「着陸できるか、様子を見に行って、ダメなら小牧基地へ、というわけにはいきませんか?」

「燃料が足りません」

 もちろん不可抗力なので三人にはどうすることもできない。分かりましたと言うほかなかった。

 副操縦士がコックピットに戻ると、杏児が万三郎に言った。

「小牧基地って、名古屋市の十キロか二十キロ北の、元名古屋小牧空港だよな。どうする」

 万三郎が答える。

「隊にお願いして、車を借りよう。高速道路を使って伊勢に行こう」

「国家非常事態宣言発令中だぜ、通れるのか」

「自衛隊の車なら大丈夫だろう。杏児、お前、運転できる?」

「体が覚えている感覚がある。運転はできると思うが、免許証は持ってきていないぜ」

 万三郎はニヤリと笑った。

「道中パトカーに出会わないよう、祈るよ」

 杏児も笑いを誘われて頷き、それから反対側に座っているユキに車で行こうと伝えた。ユキが頷くのを見た杏児は、もう一度万三郎の方に顔を向けた。

「ところで万三郎、顔色悪いぞ。大丈夫か」

 万三郎は笑って答える。

「こんな暗い機内で顔色の良いも悪いもないもんだ。大丈夫だよ」

「そうか。それならいいんだ」

 杏児は正面を向いて黙った。

 冗談とは裏腹に、万三郎は予定が狂ったことに焦りを感じ始めていた。

 ことだまワールド内を伊勢まで移動することもできるのだろうが、作戦の前に移動エネルギーはできるだけ消耗したくない。

 ――平時なら車で三時間もあれば伊勢に着くだろうけれど、史上最強の台風が上陸する前にたどり着けるだろうか。道中で足止め喰って、そのままアポフィス衝突の時を迎えるなんて、情けなさ過ぎるが……」

 ヘリは名古屋市街上空を横切るように飛行していた。まだ雨はさほどひどくなく、空は薄いねずみ色だった。


十五

 航空自衛隊の、通称「ロクマル」ヘリは、着陸の少し前に激しい電波障害を受け、管制塔と連絡が取れなくなったが、幸いにもまだ雨が強くなく、視界が効いたので、熟練したパイロットの腕でなんとか小牧基地のヘリポートに着陸した。

 数時間前、羽田空港内の特別待合い室で、遅れているヘリの到着を待つ三人の元へ、山下和明やました かずあき空佐が自ら、わざわざ遅れを詫びに来てくれた。万三郎はその時にお願いして、メモ用紙に一筆したためてもらっていた。彼ら救国官にあらゆる便宜を図るようにと、関係諸方に要請する署名入りのメモだったが、これが小牧で絶大な力を発揮したので、万三郎は内心舌を巻いた。

「ほう、先ほど首相の国民向けメッセージで言っていた、えーっと、何でしたっけな、グレート……」

「グレート・ボンズ、偉大なる絆作戦です」

「ああ、そうでした。それをアメリカまで行って、国連総会で訴え、世界の協力をとりつけてきた政府の役人というのは、何とあなた方でしたか」

「はい、その作戦の仕上げが伊勢神宮での祈りになります」

 基地の副司令である井関いぜき一等空佐は、羽田警備隊の山下空佐とは防衛大学校の同期だということで、そのメモのおかげで、非常にスムーズに協力を取り付けることができたのだ。

「国家非常事態宣言が出ているので、各部隊とも配置についていて動かしにくいのですが、一台だけ使える車両があります。主に基地構内の機材運搬に使っているピックアップトラックですが、公道も走れます。ただ、三人乗りであって、あなた方三人が乗ると、護衛の自衛官をつけられないが」

「構いません、私たち三人で大丈夫です。すぐにでも出発したいのですが」

 井関副指令はその場で部下に内線電話をかけ、トラックを回すように指示した。

「予備のガソリンは、荷台のポリタンクに用意すると言っています。それから、私の名前で道路の通行許可証を発行して差し上げましょう」

「副司令、感謝いたします」

 通行許可証に判子を押しながら、並んで起立して、それを見ている三人に、井関は言った。

「総理の国民向けスピーチが終わると同時に、太陽嵐による電磁波障害がはじまりました。今はもう、ラジオはおろか、ネットもケータイも使えません。暴風域はもう伊勢神宮辺りにさしかかっているようです。気圧が一番低くなるのが真夜中十二時ごろだと思われます」

 許可証を両手に持って確認した後、井関は席を立って、自分の机を回り込んで三人に近づき、交互に見つめながら柔らかく語りかけた。

「私には、皆さんとそう歳が離れていないであろう一人娘がおりました。私の影響か、娘は防衛大学校に入学しました。その娘が休暇で実家に帰って来た時、夕食を摂りながら私を叱ったんです。お父さん、冷静で客観的でなければ自衛官の仕事はできないけれど、最後の最後で人間を救うのは、根拠のない自信なんだよ。人間はロボットじゃないんだから。お父さんみたいに偉くなって最前線に立たなくなると、それを忘れがちなんじゃないのって。小娘が利いた風な口をきくなと反対に叱り飛ばしましたけどね」

 井関はそう言いながら、許可証を杏児に手渡し、それから視線をユキに移した。

「その娘が去年、訓練中の事故で亡くなりました」

 ユキがハッとして顔を上げる。

「自分の体を預けたロープが少しずつちぎれていく中、娘は、ヘリに引き上げられていく遭難者役の同僚を見上げて笑いかけたそうです。私は大丈夫だから、と」

 井関は穏やかな目でユキを見つめ続ける。

「娘は結局、助かりませんでした。私は自問しています。ロープがちぎれるその瞬間まで、娘は、救われていたのだろうか、救われなかったのだろうか」

 井関は、山下自筆のメモを万三郎に差し出した。万三郎は黙って受け取る。

「総理の訴えを聞きました。私もこれから、『ホープ』を唱えようと思います。小賢しいと娘の気持ちなど分かろうとしなかった私でも、今夜なら、分かるかもしれませんから」

 井関は、メモを受け取った万三郎にさらに握手を求めた。万三郎はしっかりと握手に応じた。次にユキ、次に杏児と、井関は握手を交わす。

「若いお三方。もしまたお会い出来たら、この私の問いの答えを教えていただけませんか」

 杏児が軍隊式の敬礼を返した。

「お借りする車を、お返しに上がりますから」


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