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人生の優先順位と教育費負担のお話

こちらでは随分と久しぶりの投稿になります。

大学4年生である三女の後期分学費振り込みを終え、これにて三人娘のすべての教育費の支払いが終了しました。卒業式に着る袴のレンタル料数万円もすでに支払済みなので、いわゆる「子育て費用」がめでたくエンディングを迎えたので、振り返りを兼ねてまとめました。

3人の子どもに掛かった教育費の総額

全ての記録が残っているわけではありませんが、長女が3歳のころからFPとして活動し始めていた僕は、教育費に関する記録を割と細かくつけてきました。
それを見ると、子ども三人に掛けたお金の総額(=自己負担額)は、約2,780万円。

長女:幼稚園~高校が公立で、大学は私立文系。
二女:幼稚園~中学校が公立で、高校と大学が私立。大学はスポーツ系。
三女:幼稚園~高校が公立で、大学は私立スポーツ系。

スポーツ系って「?」の人も多いでしょうが、説明は省略します。文系よりも学費は高く、理系よりも少し安いぐらいにお考え下さい。三人とも4年生の大学で、最後まで自宅通学でした。

子ども手当の対象年齢や金額は、この間何度か変わりましたし、途中から高校の授業料無償化が始まりました。また、お月謝を現金で渡していた習い事の記録が見当たらないことやおじいちゃんおばあちゃんから何度かいただいたお祝いで記録をつけていないものなどもあるため、完全に正確な数字ではありません。
それでも結果として、「子ども1人の教育費はだいたい1,000万円」という数字が、ほぼそのまま当てはまった感じですね。

計画的に準備できる人ばかりではない

ライフプランの中の「三大資金」である教育費は、FPの学習でも必ず出てくる話題の1つで、「時期が決まっているのだから計画的にコツコツ貯めましょう」という考えが王道です。

当然、FPである僕に対して、さぞかし模範的な準備をしてきたのではないかと思う方もいらっしゃるようですが、それは全く違います(苦笑)。

そもそも、僕の子育ては大学4年生の12月に始まりました。22歳の時です。

当時を思い出すと、それだけで1週間分ぐらいの記事が書けそうなので、細かいことは割愛しますが、まだ社会人でもなく、ましてやFPという言葉すら知らない若者ですから、「子どもが生まれたから将来に備えてコツコツと積み立てる」という意識はなかったです。考えてもいなかった、という方が正しいでしょうか。

必要な時期と金額がある程度予測できる教育費を計画的に準備することが大切なのはその通りで、当然ながら、僕自身も今はそのようにアドバイスします。

一方、わかっていてもそれが無理なケースもあります。はい、結婚当時の僕ですね。
今の僕が当時の僕にアドバイスしても、「え?そんなの無理じゃん・・」で終わっていると思います。
だから、「わかっていてもできない状況がある」ことを十分に理解していますし、それほど悲観的にならなくても、結果的に何とかなる人もいるのです。はい、今の僕ですね。

ただ、ここが難しいのですが、「大丈夫!何とかなりますよ!」というのは、やっぱり無責任なので人に言えません。「何とかならなかったらどうするの?」ってことですよ。
あと、周りの環境も人によって全然違います。僕自身、実質的に貯蓄ゼロに近い状態で社会人生活&子育て生活をスタートしていますが、幸いにも周りの方や仕事に恵まれたことで、平均より多く稼ぐことができた期間もあったので、何とかなった面もあります。

今回のコロナ禍においても、経済的な理由で学校を辞めざるを得なかったケースを見聞きしているので、本当になんともならないことが世の中にはあるのです。
それでも、教育費に関する情報は「きちんと準備できた人が、きちんと準備する方法」を伝える内容ばかりが目に付く中で、準備できないままその時期を迎えたけど何とかなった話があってもいいんじゃないかなっていうのが、今回のお話の趣旨です。

繰り返しますが、計画的にきちんと準備できるなら、それが一番なんですよ。

教育ローンと奨学金をフル活用するとどうなるか?

では具体的にどうするかというと、すごく単純な話です。
自分でお金が準備できないのなら、「借りる」か「もらう」しかありません。

「もらう」というのは、親族からの援助などが典型ですが、さすがに他力本願すぎて、それだけに頼れる人は少ないでしょう。そこで、自主的にできる「もらう」方法といえば「給付型奨学金の活用」になります。
以前に比べて、格段に枠が広がっていると思いますから、まずはこの給付型奨学金のフル活用を検討してみてください。代表的な日本学生支援機構だけではなく、大学独自のものや自治体が実施しているものもあるので、とにかく「調べる」ことが大切です。

ただし、要件や枠があるため、希望する人全員が利用できるわけではありません。
そこで次に来るのが「貸与型奨学金」と「国の教育ローンです」。

日本学生支援機構の調査を見ても、今は約5割の学生が奨学金を利用しています。
貸与型は返済が必要なので、あまり借り過ぎるのは良くないですが、仮に月8万円の貸与を4年間受けたとしましょう。年間96万円、4年間だと384万円です。

卒業後、利息を付けて返済することになりますが、今年(2021年)3月に貸与を終了した人が、利率固定方式を選ぶと基本月額分に対する利率は0.268%。返済年数を20年とした場合の返済額は月額約16,400円、年間約197,000円です。

原則として、奨学金は卒業後に学生本人が返済しますが、「子どもに負担をかけたくない」と考えるのであれば、親が返済原資を贈与してもいいですよね。贈与税の基礎控除は将来的に見直しの可能性はあるものの、現在は年間110万円。年間約20万円で他の贈与が無ければ贈与税を気にする必要はありません。

さて、ここでひとつ問題となるのは、奨学金の貸与は「毎月一定額」であることです。つまり、入学時等に必要な一時金のカバーはできないわけです(別枠で一時金の貸与もありますけど)。

そこで、教育ローンとの併用です。

日本政策金融公庫が実施する国の教育ローンは、子ども1人あたり350万円までの借入が可能です。仮に、入学金や初年度の学費分として150万円を借りたとしましょう。
現在の返済利率は1.66%なので、150万円を15年返済にすると、毎月の返済額は約9,400円。卒業後には、奨学金の返済とダブルになるので、25,800円の返済を考えておかねばなりません。老後資金の準備なども考えると、またまた悩んでしまいますが、子どもが卒業した後は、家計支出のコントロールは随分と柔軟にできるようになるので、その時に考えましょう。

さて、奨学金の貸与総額384万円と教育ローンからの借り入れ150万円で、534万円を確保できました。2つの返済総額を併せると、約563万円なので、差額の29万円が利息相当額です。別の言い方をすれば、教育費の積み立てを先送りにしたコストと言えます。

人生における優先順位

貯蓄ゼロの状態で子どもが誕生し、18年後に必要となる大学の初年度費用150万円を準備する場合、単純計算(=利息を考えない計算)で毎年8.3万円の積み立てが必要です。
月額にすると7千円ほどなので、決してハードルは高くないかもしれません。

そして、世の中の多くのアドバイスは、この7千円を積み立てることを推奨しますし、その時に利用する金融商品や様々な制度を紹介します。これこそ王道で、正しい方法であることは間違いありませんが、そのためには「今」使えるお金が年間8.3万円減ってしまいます。準備に利用する商品や制度の中でどれがいいのか?と悩む時間も少なくないでしょう。

だから、今の僕がこの状況になったなら、年間8.3万円の積み立てをあれこれ考えるのではなく、8.3万円かけて毎年家族旅行に行く道を選びます。もちろん旅行はたとえです。その時に大切なこと、その時にしかできないこと、と思っていただければいいです。
単純に、お金のことは将来なんとかなる(はず)だけど、子どもとの時間は二度と戻らない、という価値観に従うだけです。

その結果、入学資金の150万円を教育ローンに頼ることになるわけですが、その計算は先ほど紹介した通りです。
子育てをしながら積み立てるのではなく、子育てが終わってからゆっくり返そうと考えるわけです。つまり利息として払う29万円は、家族旅行という時間を作り出すために必要な経費と考えるわけです。

ローンの借入について補足しておくと、当然ながら審査があるため、希望した人が必ず借りられるわけではありません。
申込に際しては、年収を証明するための源泉徴収票や確定申告書のほかに、家賃や住宅ローンの支払状況、電気やガス、水道などの公共料金の支払い状況などが確認されますし、他の借入があればそれをすべて申告しなくてはいけません。
いざという時にローンの借り入れを断られないためにも、月々の支払いを滞納しないことだけは守りましょう。

もちろん、積み立てによる準備をしながら、旅行にも行けるならそれが一番ですし、何なら、家族旅行に行きたいかどうかという価値観も人によって違いますから、ばかばかしく感じる人もいるでしょう。じゃあ、老後の資金はどうするのよ?って声も聞こえてきます。

だから、子育て費用の負担が終わった今でも、正解が何かなんてわかりません。
ただ、教育費の積み立てができないことで思い悩むのであれば、こんな考えで幸せに暮らしている人もいるんだよってことを、伝えておきたかっただけです。

思うようにお金が無いと、不本意な選択をしなければいけないこともあるでしょう。
辛い思いや厳しい環境に悩むこともあるでしょう。
その結果、周りの人に迷惑を掛けてしまうこともあるでしょう。
だから、今回紹介した方法をおススメすることはできません。

借金に頼るのは、お金の管理ができていないからだとか、問題の先送りだ、と言われればそれまでですが、人生の価値観や優先順位なんて人それぞれだし、返済計画さえしっかり持っていれば大丈夫なんじゃないの?というお話でした。

そして最後にひと言。
この旅路は、一人では乗り越えられなかったのは間違いありません。

27年間一緒に歩んできた奥様への感謝を込めて。

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