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なぜRPGは敵の体力を表示しないのか?

少し前に『MOTHER2 ギーグの逆襲』をクリアしました。
で、その後すぐに見た動画がこちら。

Angry Video Game Nerd(AVGN)は、海外の動画クリエイターであるジェームズ・ロルフ氏によるゲームレビュー動画。この回ではMOTHER2を取り上げていますが、普段はもっとひどいゲームをキレながらレビューする動画シリーズです。まさに「Angry Video Game Nerd(怒れるゲームオタク)」なわけですな。

昔からこのシリーズが好きで、MOTHER2回は「クリアしてから見よう!」と思い、ずっと見ずに取っておきました。

ロルフ氏曰く、この動画はAVGN史上2番目に制作期間が長くなったそう。実際、視聴するとそれも納得の出来栄え。編集・ゲームプレイ・考察など、多方面から『MOTHER2』を徹底的に掘り下げています。ロルフ氏の愛を感じるとても良い動画でした。

さて、本題はここから。
AVGNの動画そのものには満足しているのですが、その動画の4分15秒あたりで、ロルフ氏が興味深いコメントをしていました。

Also a common complaint I have all RPGs is I really wish you could see the enemies' hit points. When I inflict damage on them, those numbers nothing to me.
訳:あと、これはRPG全般に対する不満なんだが、敵の残りHPを表示してほしい。与ダメージ表記なんてなんの意味もないだろ?

なるほど。言われてみれば、有名なRPG作品のほとんどが、敵の体力を表示していませんね。

当たり前のことにも、そうなった理由がちゃんとある。
ロジックをきちんと考えるのは大事なことだと思います。桜井政博さんもそう言ってましたし。

というわけで、このnoteでは、私が思う「RPGが敵の体力を表示しない理由」を3点挙げてみます。

ドキドキさせるため

一番考えられる理由は、やはりこれかなあと。

特にボス戦でこの恩恵は大きいと思います。単純に、敵の体力が分からないとハラハラしませんか? 「ヒイーッ、いつになったら倒せるんだこいつ!」って、泣きべそをかきながら遊んでいた、あの頃の記憶が蘇りませんか?

通常、時間が経つにつれて味方の体力も魔力も尽きていくので、後になればなるほど1ターンの重みが増します。これで敵の体力が見えちゃっていたら、興ざめとまでは言いませんが、ちょっと台無しですよね。

逆に、「このボスは相当強そうだぞ……!」と思わせておいて、意外にあっさり倒せちゃうパターンもあります。「え? これで終わり?」みたいな。これも残りHPが見えないからこそ可能な演出と言えます。

ただ、ここまで話したのは、ボス戦やイベント戦に限った話。通常の雑魚敵との戦いは、体力が見えなかったとしても、やがて作業感が上回ってきます。そのため、雑魚戦に限り、何回か戦った敵の体力を見えるようにするのは、意外とアリかもしれません。

ただしその場合、次に挙げるリスクが浮上します。

数字を追いかけるだけになってしまう

地味に大きいと思う理由がこちら。
聞いただけだと理解しにくいと思うので、別の事例を使って説明させてください。

みなさんは、オープンワールドゲームを遊んだことがありますか?
オープンワールドゲームは、A地点からB地点に移動し、何らかのミッションを達成し、また移動……というサイクルで構成されています。当然、オープンワールドは広大なので、いちいちどこに何があるかなんて覚えていられません。そこでマップが必要になります。

多くのゲームでは、画面にミニマップを表示できますが、その時に一つ問題が発生します。移動中、画面端のミニマップを見るだけのプレイになってしまいやすいのです。

ここまで読んでいただけた方は察しがつくかと思いますが、敵の体力を表示すると、同じ問題が発生する可能性があるんです。
プレイヤーの視線が、敵キャラクターではなく数字に向かってしまう。これはなかなか無視できない問題です。特に、RPGはキャラクターとストーリーを重視していますから、それらの存在感が薄れてしまうのは致命的です。

見えていたところで意味が薄い

「そもそも見えていたところで意味あるの?」と思った方もいるでしょう。私もあまり意味がないと思っています。

なぜなら、基本的に敵に与えるダメージにはバラつきがあるからです。ほとんどのゲームにおけるダメージ計算は乗除算ですからね。加減算で行うゲームも少しはありますが。
敵の体力が見えていたところで、次の一撃で倒せるかどうかなんてはっきりしないのです。それこそ「かいしんのいちげき!」であっさり倒せてしまう場合もありますしね。

もっとも、「瀕死の敵にイオナズンを使いたくない」と考える人には役立つかもしれません。ただそもそもの話、雑魚戦は何回か戦えば敵の体力をざっくり把握できますよね。ボス戦にしても、終わった後に回復できることがほとんどなので、節約を考える必要性は薄いはず。

多くの場合、威力の高さは「なんとなく」で覚えるものです。イオよりもイオラの方が強い、イオラよりもイオナズンの方が強い……といった具合に。迷ったらイオナズンを撃っときゃいい――そんな感覚の人がほとんどでしょう。

SRPGならともかく、初見のRPGで常に節約して立ち回ろうとするのは、やや窮屈なプレイングに思えます。無駄も含めて、楽しんだもの勝ちでしょう。

まとめ

RPGで敵の体力が表示されない理由を、私は以下の3点で考えてみました。

  • ドキドキさせるため

  • 数字ばかり見てしまうため

  • 意味が薄いため

皆さんはどう思いますか? よかったら教えて下さいね。

もちろん、全てのRPGが体力を表示していないわけではありません。
有名どころだと『ポケットモンスター』は相手ポケモンの体力が見えますよね。通常のRPGと比べて1ターンの価値が大きく、途中入れ替えも発生すると考えれば、表示も納得です。

また、『マリオストーリー』や『Undertale』も敵の体力が表示される、または表示できる仕組みがあります。
前者は以前にnoteで指摘した通り、RPGの皮を被ったSRPGであることが理由です。

後者も一見するとRPGですが、戦闘はどちらかというと弾幕シューティングの側面が強い作品です。また、敵を見逃す独自のシステムが存在するため、体力が残り少ない敵を示し、プレイヤーが見逃す選択を取れるようにする必要があります。

いずれにしても、敵の体力を表示する・しないは、各作品のゲームシステムによって左右されます。そこに正解はなく、目指しているゲーム体験に沿って選ぶ必要があると考えるべきでしょう。

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