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オタクが学ぶミニマリスト的思考

 ここだけの話、私はかわいいキャラクターが大好きです。
 いや、男なんですけどね、どういうわけかハマっちゃいまして。特に大学生になってからは、かわいいグッズを集めるのに熱中したものです。スヌーピーとかモルカーとかちいかわとか、良さげなグッズを見つけると、あまり深く考えずにポチっていた記憶があります。
 そうは言っても、私の部屋は正直そんなに広くありません。深く考えずにあれこれ買っていると、当然ながら物が溜まっていきます。あれも欲しいこれも欲しい……そんな場当たり的な買い方をしていたら、当然物をしまう場所がなくなっていきました。
 ただ単にしまう場所がなくなるだけなら良かったんです。だって、自分が大好きなものに囲まれて暮らせるなら幸せじゃないですか。実際、スヌーピーのクッションなんかは3つくらい買い並べて満足していましたし、モルカーのBlu-rayの早期購入特典だった巨大なポテトのぬいぐるみをゲットして、部屋に飾る瞬間は幸せでしたからね。
 でもある日、ふと思ってしまったんですよね。「これ、一生続けるのか?」と。 

オタク的思考

 オタクかオタクじゃないかと言われたら、私は間違いなくオタク寄りです。でも、「どういうところがオタクなの?」と聞かれたらちょっと答えに窮してしまいそうです。これまであまり「オタク」の定義を考えたことがなかったんですね。
 そんなオタクを自分の言葉で表現するなら、「強烈な『好き』を持っている人」と言えるかもしれません。なのでオタク的思考は「自身が持っている『好き』という溢れんばかりのエネルギーを発露したい」という想いが根っこにあると解釈しています。私はこの「強烈な好き」を持っているかと言われると微妙なのですが……脱線するのでこの話はまた今度。
 で、オタクが自らの愛を示す表現手法の一つが「推しコンテンツのグッズを買う」なのは言うまでもありません。好きなコンテンツに対してお金を支払うのは、本当に大切なことです。自分の好きなコンテンツを直接支えることができる、最も重要かつ直結的な手段ですからね。そして、自分の好きなものに囲まれて暮らすというのは、単純にとても幸せなことに見えます。嫌な話ですが、SNSの普及により、たくさんのグッズを購入している様子を見せるのは、オタクが自分自身の愛の深さを示す役割も果たしているのです。

ミニマリスト的思考

 一方で、そんなオタクたちとは真逆の位置にいると言えるのが「ミニマリスト」と呼ばれる人たちでしょう。オタクは好きなコンテンツに対して出費を惜しみません。部屋が好きなものであふれかえるのだって、彼らからすれば大歓迎です。ところが、ミニマリストは自分が持っている物や買うものをなるべく減らそうとします。
 ミニマリストと聞くと、「何一つものが置いてない空っぽの部屋」を想像する人が多いのではないでしょうか。で、よくそういう人のインテリアを見て「こういうことができるのは様々な施設が近くにある都会だけだうんぬん」と批判する人が後を絶ちません。
 はっきり言って、ここまでやる人はミニマリストの中でもかなりの変人枠です。ほとんどの人は部屋を空っぽにしたら逆に落ち着かないですからね(笑)

「ミニマリスト」と聞いて想像しがちな部屋

 参考にすべきなのは「持っているものを減らし、本当に必要な物だけを買う」という彼らの心意気、要するに「ミニマリスト的思考」だと思います。

二つの思考は分かり合えないのか?

 私は基本的にオタクの世界に居る人間です。ミニマリストのコミュニティーに属したことはないのを踏まえて読んでいただきたいのですが……一部の人たちは、ミニマリストのことをものすごく毛嫌いしています。本当に不思議なくらい。
 私からすれば、なんでそんなに怒っているのかよくわかりません。だって結局、どこまで行ったって個人の問題ですからね。各々が好きに暮らせばいいじゃないですか。にもかかわらず、ミニマリストを目の敵にしているような人を時々見かけます。一体、何が彼らをそうさせているのでしょうか。
 おそらく、オタク的思考とミニマリスト的思考は分かり合えないと思っているのではないでしょうか。確かに、一見すると両者はまったく別の世界に生きているようです。オタクは自分の好きな物に囲まれることを好み、ミニマリストは物に囲まれないことを望みます。オタクは物をたくさん買うことで対象への愛を示し、ミニマリストは自分にとって価値あるものを買うために、あえて買うものを減らします。こうして比べてみると、彼らが分かり合うことはないようにも思えますね。
 でも、本当にそうでしょうか?

それぞれが交わる場所

 今でもオタク街道珍道中な私ですが、「これ、一生続けるの?」と考えたことをきっかけに、最近はミニマリストたちの思考を生活に少しずつ取り入れるようになりました。
 特に大きく変わったのは本と音楽です。私はもともと、本は紙派でした。子どもの頃から、本の厚さや紙の質感に慣れ親しんできたからです。Kindleも利用していなかったわけではないのですが、やっぱり紙の方がいいよねと思い、ずっと紙をメインで使用していました。
 とはいえ、私が自由に使える本棚は一つしかなく、すぐに埋まってしまうのは明らかでした。そこで思い切って、画集などの大型本や、電子書籍で売られていない本(同人誌など)を除き、ほぼ全ての書籍をKindleで購入するようにしました。すると、今までの躊躇はなんだったのかと思うくらい、電子書籍にのめり込んでしまいました。その理由はシンプルで、めちゃくちゃ使いやすかったんですよね。
 iPhoneやiPadで本を読む――これは想像以上に、読書をするハードルを下げてくれました。電車の中でもトイレの中でも旅先でも、いつでもスマホを開けば自分の読みたい本がある――これは本好きにとってすごく幸せなことで、なんでもっと早く利用しなかったんだろうと後悔したくらいです。
 そして音楽。私はあまり音楽を聞かないタイプですが、それでも好きなアーティストの曲はCDで買うようにしていました。サブスクが便利なのは知っていましたが、元々そんなに曲を聞かないので、 CDで充分だろうと思っていたのです。
 そんな折、家族でYouTube Premiumに入ることになり、そこにYouTube Musicもサービスとして付属していたので、思い切ってCDを手放しました。好きなアーティストさんが皆サブスクを解禁していたのも大きいですね。
 後々気づいたのですが、CDを買ったところで、ダビングして抽出したらCDそのものはもう用済みなので、とっておく意味があまりなかったんですよね。「オタクなら現物を持っておいた方が良い」という意見ももっともですが、何度も言うように私は音楽をそれほど重視していない人間です。これならサブスクで十分かもなあと思いました。
 あとは読まなくなった漫画を処分したり、着ていない服を捨てたり、捨てるのがめんどくさくて放置していたものを覚悟を決めて捨てたり……いろいろ試しました。もともと物を捨てるのがあまり苦にならないタイプだったのは大きいと思います。

 面白かったのは、断捨離の過程で自分の環境や価値観に対する発見が多かったことですね。例えば、整理をしていると親から貰った大量の服を着ていないのにそのままにしてると分かって、「自分が着る服は自分で買わないとダメだなあ……」と思わされました。また、漫画は紙じゃないとイカンと思っていたけど、電子にすると読むハードルが下がって何度も読むようになるので、むしろ作品への愛着が増すと気づいたりとか。
 大げさな言い方かもしれませんが、ものが少なくなっていくにつれて、自分が何を買うべきで何をするべきか、人生の羅針盤のようなものが見えてくるように感じたんですね。

 で! ここからが重要なんですが、ミニマリスト的な思考を生活に取り入れても、オタ活をやめる必要はなかったんですよ。漫画は紙から電子に切り替えただけですし、アニメ・映画・音楽はサブスクで相変わらず楽しんでいます。ゲームに関しては、以前からダウンロード版で購入しているので何も変わりませんでした。彼らは電子上のコンテンツなので、何かあったらパーになるというリスクを抱えているものの、それと同時に「場所を取らない」というとても大きなメリットがあります。
 もちろん「形として残しておきたい」と思う人も多いと思います。その考えもよくわかります。ただ、人によって「何をものとして持ちたくて、何なら電子でも十分か」は違うと思うんですよ。
 例えば私の場合、音楽はサブスクでも十分なのにCDを買っていました。その一方、電子書籍を買うようになっても、大型本は紙で読むのが好きなので、相変わらず紙で買っています。大切なのは、自分自身の価値観を見つめ直し、より適切な「買い方」を見極めることだと思います。

 結局のところ、オタク的思考にせよミニマリスト的思考にせよ、「自分が本当に価値を感じているものを買う」という点は共通しているんですね。なので、自分がオタクだと思っている人も安心してください。オタク的思考とミニマリスト的思考は両立できます。もし私と同じオタク気質の方がこのnoteを読んでいるなら、彼らを奇異の目で見つめるのではなく、小さなことでもいいので生活に取り入れてみることをおすすめします。

 まずは、捨てるのが面倒で先延ばしにしているものを、思い切って捨てるところから始めてみるのはいかがでしょうか。

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