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「女性活躍社会と日本株投資」について考えてみました

「女性活躍社会と日本株投資」

今回のnoteでは「女性活躍社会と日本株投資」について考えてみました。なぜ取り上げたかというと、

①女性活躍社会の実現を自民党総裁選に向けた討論会で菅新総裁(当時は官房長官)が重点政策の一つに挙げ強化方針を示し、アベノミクスを継承する菅新政権では成長戦略として重要な位置づけにあること、

②日本株投資という視点からもESG(環境、社会、ガバナンス)要因の重要性が増してきていること、

③女性活躍支援の関連株式指数・投信のパフォーマンスに良好なものがあること、などの要因を指摘することが出来るからです。

今年の7月中旬に、「テーマ型株式投信」に関するメモを作成しました。その中でテーマ型株式投信に内在する諸問題を色々な角度から指摘する一方で、「女性の活躍」と「SDGs(持続可能な開発目標)」に関するテーマ型投信なら有りかなという考え方を示しました。ご記憶の方もいると思いますので今回のnoteはその続編か関連記事という位置づけとなります。

まず、女性活躍社会というと思い起こすのが「ウーマノミクス」です。大手外資系証券のチーフ日本株ストラテジストが1999年から提唱している概念で、「ウーマン」+「エコノミクス」を意味する造語になります。その骨子は、日本の女性就業率の改善のための労働環境の整備と雇用格差の是正などの処方箋、経済的なインパクトと関連銘柄の投資リターン等となります。

今後の日本の人口構成をみると、生産年齢人口(15歳~65歳未満)が大きく減少する一方で高齢者人口は逆に激増するとみられています。こうした危機への対応策として女性の力で経済を活性化、底上げしようとするウーマノミクスの有効性は高いとみられています。働く女性を増やすことは減り続ける生産年齢人口を補うだけでなく、多様な視点やアイデアによってビジネスに付加価値をもたらす存在として期待されるという訳です。

政治的には、アベノミクスの始動で女性雇用促進が成長戦略における最重要課題の1つに位置付けられました。その流れの中で2016年に「女性活躍推進法」が施行され、企業に女性活躍に関する情報公開が義務付けられます。さらに、自民党・菅新総裁は総裁選前の討論会の中で少子化・女性活躍に対する安部政権の路線継承を訴え、目標を外側から設定し女性が活躍できる環境を作るのが大事だと述べています。

また、女性活躍を支援するビジネスを後押しするお金の流れという点でも追い風が吹いています。世界最大級の年金基金で資産運用で影響力の大きいGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人、前年度末運用資産額150兆円強)はESG投資に一部資金を振り向けていますし、国連の主導するSDGs・17テーマ(「ジェンダー平等を実現しよう」など)実現に向けての取り組みも始まっています。

ところで、9月6付日経新聞は、総務省の労働力調査から今回のコロナウイルス禍では女性雇用が大きく減少したと報じています。7月の女性雇用者全体は2663万人と昨年末から87万人(3.2%)減り、減少数が男性の26万人(0.8%)減を大きく上回ったそうです。女性就業者に減少が目立つのは、対面型のサービス業や小売業で外出自粛や営業時間の短縮の影響が大きく、これらの業種で非正規の女性が多く雇用調整の対象になったためとしています。

一方で、介護サービス、情報通信といった分野では女性に対する引き合いが強く業種間で温度差が大きいことも指摘しています。ただし、こうした女性の力を必要とする業種では政策面の対応余地が大きといわれているだけに、コロナ下では新政権によるデジタル人材の育成強化、成人の再教育の進展などが期待できますから女性活躍場面は広がると考えられます。換言すると、女性活躍支援に官民挙げて本気で取り組み進捗スピードが速まれば、雇用面でのピンチがチャンスに転じるのではないでしょうか。

女性活躍をテーマにしたファンドがいくつか設定されてきましたが、純資産額はさほど大きくなっていません。なぜなのか考えてみると、

①CSR(企業の社会的責任)的な捉え方が前面に出過ぎた結果、リターンに関する議論が余りなされなかったこと、

②対象企業の収益等を短期で劇的に変貌させるような触媒にはなりにくいと見られていたこと、

③対象企業数に制約があったことが背景と思われます。

ですが、ESG投資の重要性、コロナウイルスによる生活環境の激変というフィルターを通してみると対象企業、関連投信に対する見方は明らかに変わってきます。

今年7月20付日経新聞は「女性を生かす企業に高評価」という見出しで、女性の雇用や昇進などをデータをもとに構成する「MSCI日本株女性活躍指数」の株価は今年3月末比でTOPIX上昇率を上回ったと報じています。また、代表的な女性活躍関連投信である女性活躍応援ファンド(愛称:椿、純資産額300億円強)の8月末までのリターンは2015年3月末の設定来で+91.0%、コロナウイルスの影響を大きく受けた過去6ヵ月で+23.8%とTOPIXのそれぞれ+4.9%、+7.1%を大きく上回りました。個別投資銘柄10社は月報で把握できますので詳しくは触れませんが、女性の活躍に関連するIT関連銘柄、電子商取引企業、食材の宅配企業などコロナ下でも勝ち組になれそうな銘柄が含まれています。

テーマファンドというと、その後のパフォーマンスがよくないというイメージが付きまとい気味です。ところが、女性活躍に関してはこれからのテーマで、しかも日本のような少子化・人口減少国にとっては最重要課題となってきています。それだけ、投資対象企業に対する評価がまだこれからということと、政府の後押しもあって新興企業から大企業まで投資先企業も少なくないことを確認出来ると思います。女性活躍に関する個別有望企業を自力で見つけることもできますが、関心のある方にはいくつかの関連投信がありますのでそれらの月報・目論見書等に記載されている設定来のリターン、純資産額、投資方針、上位組み入れ銘柄、信託報酬等が参考になります。

なお、なでしこ銘柄として経産省と東証は共同で女性活躍推進に優れた上場企業を選定し、2012年度より公表しています。今年選ばれたなでしこ銘柄は46社。準なでしこ銘柄19社を合わせると65社になります。知名度の高い大企業が中心で、組織を挙げて取り組んでいる企業が選ばれている印象を受けますが、どんな企業が高評価を受けているか、過去の受賞履歴なども確認できますので閲覧をお勧めします。

Malon, 9.18. 2020

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