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KEYAKIイズムとは ~欅坂46からの系譜④~

第4回 表現者たち

 欅坂46の周りには、クリエイターたちが引き寄せられてくる。
 これは、やはり、彼女たちが内に秘めていたものが、大人たちを刺激するからだろう。

 多くの時間を共に過ごすようになって見えてきた彼女たちは、さまざまな思いや葛藤を内に秘めながら、常に負けないように、届けるためにこの壁を乗り越えようとしている。「目立ちたい」「可愛く見られたい」というよりも「伝えたい!」という思いをとても強く感じる。
 作品ごとに表現への「熱」が彼女たちから湧き上がっており、僕に限らず関わるクリエイターたちは、皆その熱に触発され、作品のたびに情熱を燃やしたくなってしまうのだった。

~TAKAHIRO著『ゼロは最強』(光文社)より

 単なる振付師とアイドルとの出会いに終わっていないのが、本当に素晴らしい。

 ある種のプロの人たちは、たとえば何度でも同じことを同じようにできるのだろうが、彼女たちは「この瞬間だからこそできること」をやっている。
 そのため、ミュージックビデオの撮影現場やコンサートのリハーサル現場は常に激流が流れている。
 当日の現場での彼女たちを見て、刻一刻と創るものが変化していく。リアルタイムで演出も振付も変わるし、歌詞さえも変わっていくこともある。
 表現者としてのプロフェッショナルな部分と、彼女たちの生身の部分が絶妙なバランスで「今」にしかないものを表現している。生きた楽曲表現が生み出す、その奇跡的な時間が今の欅坂46なのだ。

~TAKAHIRO著『ゼロは最強』(光文社)より

 TAKAHIRO氏も、彼女たちの潜在的な能力を、どのようにしたら引き出せるのか、苦労してきたことが伺える。
 以前述べた彼の「振付の流儀」でも、「メンバーが自由に表現できるパートを作る」というものがあるが、これも、メンバーが表現者としての自覚が持てるように促す意味合いがあったのだろう。

MC:
・・・彼女たち自身の目力というか、
持ってる雰囲気もすごく強いなと
伝わってくるんですけれども・・・
そういうところも
『もっとこうしたほうがいいよ』って
表現力みたいなのも教えたりするんですか?

TAKAHIRO:
いや、表現力に関して教えるのは
とっても難しい。
それは与えるものではなくて
受動じゃなく能動だから。
なので、一個一個の作品で自分のものにして
自分の声として歌い、表現する。
そこにその目力が宿る。
彼女たちはアイドルでありながら
表現者でもあるんだなと
いつも思って・・・
傍で見ながら
凄く尊敬するところが多いです。

~『SEASONS』(J-WAVE)より

 彼の指導を受けて、一番その才能を開花させたのは、センターの平手さんだったかもしれない。元々、素直な性格であったこともあり、何でも見聞きしたものを吸収して、どんどん自分のものにしていった。当時、平手さんについていたマネージャーの話では、一度注意したことやアドバイスしたことは、それ以降、忘れずに実践していたという。
 また、努力の天才でもあったようで、自分が納得するまでレッスンを繰り返すという話は有名だ。
 彼女のソロ曲『角を曲がる』のMVを監督した月川翔さんも、以下のような話を紹介している。

MVの中で、地面に膝を打ち付ける場面があるんですけど、本当に手加減なくやるので彼女の脚は腫れていきました。誰かが強制的にストップをかけないと「まだやります」と言う人だから、もしかしたら壊れるまでやろうとしてるのかなと思いました。「自分の100%はこんなもんじゃない」という気迫がすごかったですね。

~『BRODY』(白夜書房)より

 彼女のダンスの素晴らしさについては、『2017 FNS歌謡祭』で平井堅さんとコラボした時にも、遺憾なく発揮された。自分も、一視聴者として、TVの前で感動し、涙を流していたことを思い出す。
 『FNS歌謡祭』の際、平手さんに振付をしたCRE8BOYのRuiさんは、『めざましテレビ』のインタビューで、次のように応えている。

気持ちを込めて踊ることに関して、
今までに会ったことがないぐらい、
ずば抜けてすごい。
まさに全身全霊、
彼女にしかできないパフォーマンス。
(ダンサーとして)完成しちゃってます。

~『めざましテレビ』のインタビューより

 一言も歌うことなく、内側から溢れ出る感情を爆発させたパフォーマンス・・・。それだけで、多くの聴衆の心を揺さぶることができるのだ。
 欅坂46にとって、ダンスという言葉を自在に操り、楽曲の世界を人々に届けることができる存在(=平手さん)がいたことは、最高の幸運であり、とてつもない武器であったことは間違いない。(次回につづく)


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