見出し画像

あの日起きたこと ~ある欅坂46ライブの思い出~

 2018年9月5日。欅坂けやきざか46『夏の全国アリーナツアー2018』のファイナル公演。前日の台風21号も過ぎ去り、とても暑い日となっていた。

 当時、たまたま海浜幕張に職場があったため、徒歩で幕張アリーナに駆けつけることができた。
 幸い、9月4日、5日と2日間ともチケットがとれたので、しっかりと17時に仕事を終え、会場に向かった。

ライブ1日目(9月4日)

 9月4日、幕張1日目。平手さんが参加しているライブが開催される。
 当日は、ねるさんとTAKAHIRO先生の誕生日ということもあり、途中、Happy birthdayタイムもあったのだが、恒例の「Overture」は無しという独特なスタートとなった。
 「Student Dance」から始まったステージは、いつも通り、平手さんを中心とした素晴らしいもので、20曲余りが披露された。
 元々、台風の接近もあり、開催自体が危ぶまれていたのだが、中止となることもなく、無事に参戦できたことに本当に感謝した。ライブ後、台風の影響で、帰りの電車がなくなり、近くのカーシェアで借りた車で帰ったことぐらいが、想定外の出来事だった。

ライブ2日目(9月5日)

 9月5日。前日の台風が過ぎ去ったことから、暑さがぶり返す。
 今日が、「夏の全国アリーナツアー2018」の最終日なので、メンバーもいつも以上に気合いが入ったパフォーマンスを見せてくれるだろう。そんな期待を胸に、真っ暗な舞台を見守る。
 昨日同様の「Overture」なしの開幕。「Student Dance」「AM1:27」「エキセントリック」と、これぞ欅坂46というパフォーマンスが続く。平手さんの様子も、昨日より迫力が増している。
 4曲目「ガラスを割れ!」。
 メインステージで踊っていた平手さんが、一人、メンバーから離れて、花道を突き進んでくる。MVのソロダンスシーンを彷彿とさせる気迫で、会場を一気に盛り上げていく。
 平手さんの突進に照明が間に合っていない様子も、イヤモニが外れるほど激しく踊っている様子も、まさにこの瞬間に立ち会いたくて参戦してるんだよ、と思わせてくれる渾身のものであった。
 5曲目の「音楽室に片想い」。6曲目「制服と太陽」と、昨日と同様にステージは進んでいく。昨日と違うところは、センターの平手さんがいないバージョンで曲披露が続いている点だったが、その当時、ライブ全曲に平手さんが参加しないことも少なくなかったので、「今日もそのパターンか?」というくらいの印象であった。
 むしろ、その年の春に行われた『2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』で、代理センターによる楽曲披露が話題になった、《小池さんの「二人セゾン」》、《理佐さんの「避雷針」》を観ることができたことから、とても得した気分であった。仕事の都合で、参戦できなかったライブパフォーマンスをこんなところで観られるなんて、ラッキーすぎる。そんな呑気なことを思いながら、ステージを堪能していた。

ライブの裏で起きていたこと

 舞台の上では、セットリスト通り、進行されていた。
 しかし、その裏では、大変なことが起きていた。
 観客にそれが伝えられたのは、11曲目「もう森へ帰ろうか?」が終わった後である。
 なんと、平手さんがステージから落ちて、救急車で近くの病院に運ばれたというのだ。
 「それで、平手さん無しの楽曲披露だったのか。」
 呑気に代理センターのパフォーマンスに喜んでいた自分が、とても恥ずかしかったことを覚えている。

 この衝撃的な出来事を伝えられた後も、ライブは続いていく。
 突然の事態に、メンバーも動揺していたはずであるが、それでも、代理センターあるいはポジション明けのまま、パフォーマンスが披露されていく。平手さんがいなくなってしまった分を補うかのように、ものすごい気迫でパフォーマンスをするメンバーたちに応えて、観客も精一杯コールしている。
 14曲目の「サイレントマジョリティー」では、平手さんの歌割り箇所を、観客たちが、誰ともなく歌い始める場面もあった。まさにメンバーと観客が一体となった瞬間と言えるだろう。
 足を運んでくれたお客さんに楽しんでいただきたいというメンバーの皆さんの気持ちと、それに応える観客たちの気持ちが1つとなった素敵な時間。その時間を共有している自分も、自然と涙を浮かべながら、「サイレントマジョリティー」を歌っていた。

 アンコールになるまで、平手さんがいないパフォーマンスが続いていたのだが、ダブルアンコールとなり、嬉しい知らせが・・・。
 どうしてもステージに戻りたいと懇願した平手さんが、最後の1曲に帰ってきてくれたのだ。そこで歌われたのが、「W-KEYAKIZAKAの詩」。
 ライブTシャツを着たメンバーたちに迎えられる形で、平手さんが合流する。
 この感動の場面は、『櫻坂46・日向坂46 応援 [公式] 音楽アプリ=ユニゾンエアー』や、ベストアルバム『永遠より長い一瞬』(Type-B)の特典映像でも確認することが出来る。

 この平手さんのステージ落下事故は、ドキュメンタリー映画『僕たちの嘘と真実』で、彼女の行く末を暗示するショッキングな出来事として、何度も登場するシーンである。正直、映画で問題のシーンを観るまで、彼女がどのように落下してしまったのか、知らないままであった。
 ライブから帰宅して、TVでニュースを見ていた時、そのライブでの事故が報道されていた。さっきまで、現場にいたはずなのだが、何かリアリティがない、どこか遠くの会場で起きた出来事を見ているような気分だったことを思い出す。

 ドキュメンタリー映画で映し出されていたシーンは、非常に衝撃的なものであったが、その場にいた自分としては、とても素敵なライブに参加ができたという印象しか残っていない。
 その日の平手さんのパフォーマンスが、前日のライブをさらにパワーアップした、とても気合い十分なものであっただけに、最後の楽曲まで、平手さんセンターのパフォーマンスを目撃したかったというのが、唯一の心残りだったかもしれない。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?