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繰り返される推敲 ~【欅坂46・櫻坂46】楽曲やMV制作の裏では~

 秋元グループの大先輩・指原さんのYou Tubeチャンネルが登録者数100万人を突破したということで、スペシャルゲストに秋元さんを迎えて、お二人が対談をしている様子がアップされた。

 その中で、彼がプロデュースしている各グループに、提供される楽曲の制作について触れている場面がある。
 指原さんの「なんで、櫻坂46(欅坂46)の曲はいいんですか?」という直球な質問から始まる話なのだが、その中で、楽曲制作の流れを説明している。

①各グループごとに作曲家が作った
 デモ音源が集められる。
②それぞれのグループ用に集められた
 100曲以上ある中から、
 グループカラーに合うかという観点で
 楽曲を判断し、グループ分けを変える。
③全てを聞いた上で、選曲する。
④セレクトした楽曲のアレンジを発注する。
⑤その楽曲を元にして、作詞をしていく。

 指原さんと言えば、欅坂46がデビューしたばかりの頃、「2016 FNSうたの夏まつり」に出演した時の、48グループと坂道グループのコラボ企画を思い出す。それぞれのグループの代表曲から披露する楽曲を視聴者が投票で選んで、それをコラボチームがパフォーマンスするという企画だったのだが、投票の結果「サイレントマジョリティー」が選ばれた。
 その時に対象となっていた曲は、
  「恋するフォーチュンクッキー」
  「365日の紙飛行機」
  「君の名は希望」
  「サイレントマジョリティー」
というラインナップで、どれも各グループを代表する名曲ばかりである。この中にあって、「サイレントマジョリティー」が選ばれたということからも、当時の欅坂46の勢いが凄まじいものであったことがわかるだろう。
 指原さんとしては、キャリアとしても、CD売上げ枚数としても、当然のように「恋するフォーチュンクッキー」が選ばれると思っていただけに、この結果はかなり屈辱的なものであったようだ。
 それでも、本番ではしっかりと振り入れをして、48&46ドリームチームとして、パフォーマンスをしていたのは流石さすがである。これ以降、指原さんにとって、欅坂46は気になる存在となったようで、新曲が出るたびに、いろいろな場面で欅坂46の楽曲を紹介してくれている。
 同事に、秋元さんに対して、「欅坂46のような楽曲を書いてください」と直談判しているようであるが、なかなか、その願いは叶っていない。
 今回の動画でも、以下のように、彼女の願いは一蹴されている。

秋元さん
 昔からあれだもんな
 「サイレントマジョリティー」とか
 「不協和音」とか
 ああいう系をやりたいって
 言ってたもんな
指原さん
 めちゃくちゃ好きです
秋元さん
 でも、それ似合わなくない?

 以前にもご紹介したが、秋元さんの作詞は、各グループの「メンバー」という存在が、着想の元になって生み出される。
 「彼女たちの口から何を発したら、一番刺さるか」という視点で、歌詞が書かれていることから、それぞれのグループごとに、曲調が異なってくるのは当然であろう。
 実際、48グループと坂道グループがコラボしたドリームチームによる「サイレントマジョリティー」には、全く説得力がなく、メッセージ性も感じられなかったという記憶がある。
 当時、グループアイドルがそれぞれ勢いを増していたこともあり、各グループの選抜メンバーがコラボしたら面白いのではないかという企画意図があったのだろう。繰り返し、異なるグループ同士の組合せによるコラボが披露されていた。
 しかし、それまでのアイドルという枠から、かなり逸脱していた欅坂46の楽曲は、他のグループには似合わないということが、このような企画でも証明されてしまう。

 今回ご紹介している動画を観ていて面白かったのは、「恋するフォーチュンクッキー」のアレンジに苦労したという話だ。
 50回ほど直して、今の形になっているようであるが、発売前に一度TVで披露したものですら、発売する時に再度手直しをしていたことが明かされている。この事実は、歌っている指原さんも知らなかったようで、それを聞いて、かなり驚いていたのが印象的だった。

 秋元さんの制作手法は、何度も細かい線を重ねて輪郭を形成していくデッサンのようなものであるという話を読んだことがある。
 歌詞を何度も推敲した決定稿が送られてきても、レコーディングやMV制作の時点で、歌詞が変更されることは稀ではないという。
 歌詞が起点となって、全てが動き出す『チーム櫻坂』としては、これは一大事である。振付が変更されるのはもちろんであるが、MV制作などは、セットや衣装などの準備もあるため、急な変更に対応するためには、大変な苦労が強いられることだろう。
 それに対応できるメンバーや制作スタッフという前提があるからこそ、実現できていることだとは思うが、そのような努力や苦労の結果と考えると、提供されている楽曲やMVを、しっかりと受け止めていかないと申し訳ないという気持ちになってくる。
 MVを観ていると、本来であれば、メンバーの歌っているシーンが続くべきところで、リップシーンがない箇所がいくつかある。そのような場面は、元々の歌詞がない場合も多いようで、歌いたくても歌えないというのが真実であるようだ。そのような条件の下、映像作品として仕上げていかなければならない監督さんのご苦労は、並々ならぬものだろう。
 それでも、世間からの評価は、結果に対してのみ下されていく。それが生み出されるまでの過程にある、メンバーや制作スタッフの苦労は評価の土俵にすら上がることはないのだが、それでも、そこに到るまでに傾けた情熱は、画面からも伝わってくる。

 欅坂46時代から、彼女たちのMVは、「MTV VMAJ」(「MTV Video Music Awards Japan」)で、何度も受賞している。

2017年「Best Buzz Award」部門を受賞
2018年「最優秀邦楽グループビデオ賞」
    (「アンビバレント」)
2019年「最優秀邦楽グループビデオ賞」
    (「黒い羊」)
2021年「最優秀邦楽新人アーティストビデオ賞」
    (「流れ弾」)

 彼女たちや制作スタッフの努力や情熱が、きちんと評価され、このような賞へとつながる瞬間の喜びは格別なものだろう。
 彼女たちが、努力を積み重ね、大きく進化していく姿をしっかりと応援していきたい。



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