君の物語 5 だるまさんがころんだ
猫は[だるまさんがころんだ]が好きだという。
ルゥも子猫時代はよくやっていた。
が、だんだん年を取るにつれてそういう遊びをしなくなってきた。
それでもこちらから仕掛ければ付き合ってくれる。
窓から庭を監視するのはルゥの大切な日課だ。
その後ろ姿を飽きることなく眺めているのも、私の大事な日課だ。
視線に応えるようにルゥが振り向くことがある。
その瞬間、テーブルや椅子の陰に隠れなきゃならない衝動に駆られる。
隠れると、ルゥが〈おやっ⁉︎〉と目を丸くして首を伸ばし、反応してくれる。
その仕草がかわいくて、大好物だ。
そっと顔を出し、また隠れてみる。
その度にルゥは少しずつ歩み寄って来て‥‥
だんだん興味が薄れていくのが手に取るようにわかるが、私はあえて気づかないふりをして続行する。
そうして足元までたどり着くと体を軽く擦り付けて踵を返す。
〈もういいだろ〉
と面倒くさそうに庭の監視に戻る。
律儀に付き合ってくれる優しい猫だ。
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