見出し画像

おじいちゃんのスペシャルジュース

小学校の3、4年生くらいまで、母方の祖父の家へよく泊まりがけで遊びに行っていた。

以前は下宿をやっていたので部屋数が多く、広い家だった。下宿エリアとの境界線あたりにトイレがあり、ガランとした中に個室が3つくらいあったと記憶している。

居住域とは少し雰囲気が違うエリア。そこだけ家というより何かの施設のような雰囲気で、よそよそしかった。

しかし、そんなことよりも私がここのトイレを苦手と感じる1番の要因は・・・

カマドウマ

昼間でも〈隅々まで確認したい。でも怖くて確認できない。急に出てきたらどうしよう。〉とビクビクしながら用を足していた。
夜は尚更。
灯りは頼りない裸電球ひとつだけなのも心細い。できるだけ行きたくなかった。


それなのに、おじいちゃんはお構いなしなのである。
手作りジュースを差し出してくる。ミキサーに入れるのは牛乳、バナナ、りんご、あとはその時その時で家にある野菜や果物。

これを寝る前に「飲め」と言う。

夜中にトイレに行きたくなるから飲みたくないと拒否すると、
「手作りの特性ジュースなんだから、飲まなきゃ。」と譲らない。

嫌だ!となお拒否すると
「俺が作った特別なジュースだから、ぜ〜んぶ栄養になって吸収される。オシッコは一滴も出ない。」

ーだと。

これ以上言い返しても無駄なので飲む。おじいちゃんのゴリ押しには敵わない。


美味しい。

美味しいんだ、これが。

案の定、夜中にトイレに行くハメになる。

そうして遭遇する。
カマドウマに。
どうして必ずいるんだろう?

ギャーと騒ぐとおじいちゃん来てくれるけども。
ほうきで掃いてしまうのだ。
ピョーン!と飛んできたらどうするの!?

おじいちゃんはサァーッといとも簡単に掃いてしまう。

えっ?
どこ行った?
ねえねえ、どこ行ったの?

「どっか行ったから、もう大丈夫。」

それ大丈夫じゃないよね?
また、いつどこから出てくるのかわからなくなっただけだよね?
得意そうな顔してもだまされないよ?

「大丈夫。ここで見張っててやるから。」
きっとだよ?

ーーなのに個室から出ると、おじいちゃんはいなくなっている。


こんなことを飽きもせず、泊まりに行くたびに繰り返していた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?