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SDGsの先駆者 山万 ユーカリが丘線

鉄道や地理好きじゃなくても、成田空港に行く途中で目に入る路線図で奇怪なしゃもじのような、スプーンのような形の路線を見たことがあるはず。それが山万ユーカリが丘線。

ユーカリが丘線というのは千葉県佐倉市西部にあるユーカリが丘という住宅街を走る新交通システム。京成線のユーカリが丘駅から北向きに、しゃもじのような形で反時計回り一方通行で6駅、4.1kmを14分で周回している。

まさに人口の町という感じの区画。

この路線を運営する山万株式会社は、ディベロッパーとしてユーカリが丘という住宅分譲地の総合開発を行っている。佐倉市西部、八千代市に隣接した名前通りの丘を1970年代にかけて開発をスタートさせ、近くを通る京成線にお金を積んで1982年にユーカリが丘駅が開業。開業の翌日にはユーカリが丘駅と住宅街を結ぶユーカリが丘線を開業させた。

この路線が特異的なのは、日本でも珍しい不動産会社が自社運営している鉄道路線(中央のガイドレールを使いゴムタイヤで走る新交通システム)という点。日本の鉄道会社では自社路線沿線に住宅地を誘致したり、分譲したりして鉄道を利用してもらうというのが阪急電鉄から始まる伝統芸。もしくは公団や地方自治体がニュータウンを開発を行って同時に新路線への出資などをすることはある。一方でこのユーカリが丘線は、「一」不動産会社が自社分譲地のアクセスのために路線を作っているという究極形。ちゃんと鉄道事業法に基づく鉄道路線。今ではユーカリが丘線を補うようなバス路線も運行している。

京成線に乗り継げば上野まで1時間強、成田空港へは30分。国道16号沿いの町なので、通勤圏としてはギリ普通。ユーカリが丘の人口は1.8万人ほどらしい。ユーカリが丘線の平均乗車人員は700人/日、ユーカリが丘駅だと乗車人員は8000人/日くらい。

1乗車200円。レトロな券売機。
SUICAは使えず。
車内の様子。冷房は無いことで有名。

このユーカリが丘のコンセプトは、未来を先取りした持続可能な町づくりがテーマ。その中心となるユーカリが丘線も、開業から40年冷房のない車両を大切に使っていることがなんとも逆説的。

無骨なコンクリむき出しホームといい、微妙に人のいない感じといい、時代感のアンバランスさがオタクを引き寄せる魅力なのかもしれない。

出自から特異的なユーカリが丘線は投げやりな駅名でも有名で「公園」駅には文字通り公園が、「中学校」駅には文字通り中学校が、「女子大」駅には女子大ができる予定が、市川市の和洋女子大学の移転計画は無くなりセミナーハウスだけがある状態。

この駅の目の前に佐倉市立中学がある。写真奥に見えているのはスーパー。
女子大本体は来ていないけどセミナーハウスはある女子大駅。
ユーカリが丘線の車庫は女子大駅にある。見切れているけどバスの基地も隣接。

このユーカリが丘という町は、昭和期のニュータウンにありがちな雑な無謀な計画に基づく雑な過剰開発をせずに、毎年の分譲数をコントロールすることで世代が偏らないようにしている。公園などの緑を融合しつつ、ユーカリが丘駅前には高層マンション、商業施設や文化施設を集積、ユーカリが丘線沿線の各駅からすべたが10分圏内になるよう戸建てや低層住宅を分譲販売。幼稚園や介護施設なども、さらに24時間体制で町全体の警備まで民間企業の山万が行っている。

文字通りなんもないところに突如路線を作ったことがうかがえる。
農業区画と居住区がくっきり分かれた計画都市
内側はあえてなのか緑を残してある
広々とした住宅が広がる。
千葉ニュータウン方面からカブで向かった時、まさにこの先に見える丘を登ると突如整然とした住宅地が広がっていて度肝を抜かれた。これが千葉。

1日乗車券500円で始発から終電まで周回し続けるという奇祭が話題になったこともある。



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