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日本最古級の民営鉄道 松山の支配者  伊予鉄道

「伊予鉄(いよてつ)」は愛媛県の県庁所在地 松山市の中心部にある松山市駅を中心に高浜線、横河原線、郡中線の3路線と、松山市内の路面電車5系統を有する私鉄。電車線総延長は33.9km。路面電車は9.6km。

電車と路面電車画平面交差する日本唯一の場所。ダイヤモンドクロスと呼ばれています。左奥からバスもきてますね。

電車線は郊外電車・郊外線と、路面電車は市内電車・市内線と呼ばれている。JRの松山駅が町はずれにあり、市内電車はJR松山駅から松山市中心部や、日本を代表する温泉地の道後温泉とのアクセスを担っているので観光で利用したことがある人も多いかもしれない。

日本書紀にも記録がある日本最古の温泉の1つで、聖徳太子も利用したとの記録もある。この建物は道後温泉本館で明治創建、夏目漱石も利用した頃のもの。写真は2019年の様子、2024年5月現在共同浴場は利用できるけど修繕中で外観は覆われてます。
道後温泉駅。伊予鉄を象徴する駅の1つ。
梅津寺駅は浜直結の駅。伊予鉄を代表する風景。

松山は過去に何度か訪れていて、いくつかの区間は乗車済みだけどこの度改めて、ちょっとばかしトラブルもあって遠回りしつつも無事完乗してきました。

伊予鉄は今でこそ地方都市の小規模私鉄ではあるものの、国鉄路線となった会社を除くと日本で2番目に古い私鉄として、1885年開業の阪堺鉄道(現 南海)次いで、1888年に現在の高浜線の前身となる松山駅~三津駅の間で開業させている。しかもこの路線は関西圏を除く西日本では最初、もちろん四国でも最初の鉄道路線でもあり、意外にも日本の鉄道史的にもパイオニア。三津は明治以前より松山の外港で、今よりも船が重要であった時代に外港と松山市内を結ぶ重要な役割があり、今でも瀬戸内の離島や、山口県の柳井航路が発着。一方で高浜港、後に松山観光港(高浜港そば)が整備され、利用者が多い呉・広島や小倉行きのフェリーは松山観光港発着となり、依然として高浜線が港へのアクセスを担っているのは変わらず。

松山観光港からはシャトルバスが高浜駅まで運行。直通のリムジンバスもあり。
高浜駅は1892年開業、高浜港に隣接。今の駅舎は昭和初期に建て替えられたものとのこと。高浜駅からちょっと北に松山観光港という大型港が整備され、長距離航路はそちら発着になった。

1888年に開業した伊予鉄線は1892年には高浜駅まで延伸され高浜線が全線開業。次は松山から逆方向の東方面方面へも延伸され、1889年には平井駅まで、1896年には横河原駅まで開業し現在の横河原線となった。郡中線は別会社の南予鉄道によって1896年に郡中駅からの区間が開業、1900年に伊予鉄に吸収されている。東西私鉄の雄である東急と阪急の最初の鉄道路線が1907年開業なので、いかに歴史があるかわかると思う。ちなみに、横河原線のいよ立花駅から分岐する森松線が1896年に開業していたものの、利用者が伸びず1965年に廃線となっている。

愛媛の青空と朝日に映えるみかん色がイメージカラー。元
梅津寺駅は駅がビーチ直結。駅前にはみきゃんパークという柑橘を使ったスイーツや料理を食べられるカフェ、お土産などが買える施設がある。
京王初代5000系の中古を導入した700系。1964年から高度経済成長以降の多摩地域の発展を担った名車両がまだ生き残ってるのはうれしい。ちなみに一部は中古の中古として銚子電鉄に譲渡されている。
古町駅。伊予鉄道の本社所在地。今でこそ伊予鉄に吸収されてるけど道後温泉方面へ道後鉄道が分岐していた駅。
郊外電車と市内電車両方の基地が置かれている。
大手町駅は郊外電車と市内電車が交わる駅、JR松山駅まで徒歩5分ほどの立地。
横河原線石手川公園駅。車両長編成化対応のため石手川にかかる鉄橋の上に無理やりホームを増設した。この鉄橋自体も1893年から現役の日本最古級の鉄道鉄橋。
なかなかアグレッシブな狭さ。
いよ立花駅からは森松線が分岐していた。この駐車場の奥に線路跡がわかる。
横河原線橋本駅で交換
愛大医学部南口駅は、英語名だと愛媛大学病院なんですね。
横河原線の終点横河原線。松山市に隣接する東温市に位置する。
京王井の頭線の3000系。伊予鉄の主力車両。
郊外電車3路線の中心に位置する松山市駅。
郡中線だけは独立している。

郊外電車の高浜線と横河原線は一体運行されていて、平日・休日ともに昼間は15分に1本と地方鉄道にしてはかなりの高頻度運行。ラッシュ時には少し感覚が狭まる。高浜線と横河原線はJR予讃線と直接乗り換えできる駅は無く、JR松山駅に最も近いのが大手町駅になる。

郡中線だけは独立していて、平日は15分に1本、休日は20分に1本に減る。終点の郡中港駅の目の前にはJR予讃線の伊予市駅が隣接。特急宇和海も停車するし、普通列車でも駅が少ないので時間は速いけれど、本数は郡中線の方が圧倒的に多いため差別化できている。

改札はローカルICのいーカードだけ使用可能だけども、2025年3月からICOCAへ置き換える。自動改札は無い。
松山市駅だけ途中下車が認められている。グルーブ企業で固められた駅ビルや地下街での消費は歓迎なので。
郡中線は郡中港駅まで。
重信川を渡り松前町へ。
古泉駅の駅前には愛媛県最大級のショッピングモールのエミフルMASAKIが。松山市駅を除いてダントツに利用者が多かった。エミフルMASAKIの運営はフジ。
フジは現在の本社こそ広島で、イオングループ傘下ではあるけども、創業は松山のスーパーチェーン。食料中心の中型店のフジと、大型GMSのフジグランは中四国を中心に展開する安心のスーパーチェーンですね。写真は郡中港駅近くの店舗。
松前町の中心駅松前駅。
1896年開業の南予鉄道の起点駅だった郡中駅。旧郡中町の中心部、現在は伊予市。
終点の郡中港駅。1939年に郡中駅から延伸開業。目の前にはJR予讃線の伊予市駅が隣接、1930年南郡中駅として開業

市内電車も元々は道後鉄道と松山電気軌道という別会社として開業した路線が伊予鉄に吸収された歴史がある。道後鉄道は高浜線の古町駅と道後温泉、道後温泉と松山市内中心部を結ぶ路線を1895年に開業。これは現在の市内線の北側と道後温泉方面に引き継がれている。松山電気軌道は1911年に三津と松山市内を結ぶ軌道線=路面電車として伊予鉄に対抗して三津と道後温泉を松山城の南側をの中心市街地を通るルートで開業された。結局1921年に吸収合併され、現在の市内線に引き継がれている。その後、国鉄松山駅の開業や、市内の道路整備にあわせて市内線はルートが整理され、現在のJR松山駅前を経由する環状路線と、道後温泉方面を中心とした路線に集約された。

ダイヤモンドクロス。電車を待つ路面電車。
昼間は1時間に4本、上下線がほぼ同時に来るのでチャンスは4回。市内電車本数が多いので比較的高確率で電車を待つところに遭遇できる。
JR松山駅前のホテルの窓からの風景。奥がJR松山駅、高架化工事が進んでいるのがわかる。手前に市内電車乗り場。路線バスもみかん色が目立ちますね。

市内電車は現在5系統が運行されている。1系統は環状線で松山市駅から時計回りに松山駅前→大街道→松山市駅前に戻る系統、2系統が反時計回りに松山市駅から大街道→松山駅前と回る系統。3系統は松山市駅と道後温泉を往復、4系統は欠番、5系統が松山駅前と道後温泉を往復する系統となる。6系統が平日限定で松山市駅と本町6丁目を往復する系統。

https://www.iyotetsu.co.jp/rosen/
松山市駅に到着する6系統。この6系統は松山市駅と本町6丁目の間、平日朝4往復、昼3往復のかなりのレア系統。
西堀端通りを南北に行く6系統
本町6丁目。ここは環状線との接続駅になる。これだけ本数が減ってしまったのは、路線が短くてほかの系統にも近いから必要性がないからなのかなと。
奥を横切るのが環状線系統。
GWの中日の平日でしたが、朝4本を狙って乗る学生や通勤利用者が意外と多いのが驚き。平日朝に本数が限界の環状線やバスを補う形で残されているとわかる。
本町線はJR松山駅や道後温泉方面などに直通しないので乗り換え券が利用できるようで、中々レアもの。1の数字は5月1日だから。
郊外電車とクロスするダイヤモンドクロスを車内から。
松山市役所を背に。右に行くと松山市駅。
松山城を望む
奥に見えるのは愛媛県庁本館。1929年完成。
松山市の中心商業エリアの大街道付近。
大街道アーケード入り口
道後温泉方面と環状線方面の分岐地点、上一万交差点。
道後温泉駅は1911年開業の駅舎を復元したもの。
環状線は北側区間では旧道後鉄道の名残から専用軌道に移る。
右手は愛媛大学
古町駅
実は古町駅でも郊外電車を市内電車が横切る。写真の斜め右手に続く線路が市内電車。
松山駅前。環状線と道後温泉行の3系統が利用できる。
図らずもほぼ同じ構図で2022年1月にも写真撮ってましたね。
ご当地PR車両として、みかん、一六タルト、ひのき・すぎ、砥部焼、今治タオル電車が運行中。
夏目漱石の作品「坊ちゃん」にも登場したことにちなんだ当時の汽車を復元した坊ちゃん列車。夏目漱石が松山に赴任した1895年には伊予鉄線で走っていたので、実際に夏目漱石も乗車したとされ、その経験を坊ちゃんの中に登場させたと言われている。
土日休日に松山市駅、古町から道後温泉の区間で走っている。当時は石炭で走っていたけど今は見た目は当時の復元だけど動力はディーゼル車で、方向転換は車体だけ回転させている。
5分に1本と高頻度でやってくる市内電車の隙間で手早く方向転換の準備、手動で動かす。
発車。汽笛も再現されています。
道後温泉駅に展示されている坊ちゃん列車(2019年)
古町駅は郊外電車と市内電車の車両基地が併設
松山城天守閣から古町の車両基地が見えた(2019年)

伊予鉄グループは持ち株会社となる(株)伊予鉄グループがあり、四国唯一の50万都市松山市を地盤に様々なビジネスを展開している。鉄道事業を担うのが伊予鉄グループの中核となる伊予鉄道株式会社となる。そしてこの伊予鉄グループは規模は小さいながらも、私鉄としても地場企業としても教科書的な事業展開をしている。路線バス・高速バス、タクシーは当然ながら、船、貨物輸送、松山空港のターミナルビル(さすがに航空会社は持ってないw)、自動車やトラック販売代理店などあらゆるニーズにあった交通事業を展開。

伊予鉄のターミナル松山市駅直結のいよてつ高島屋、伊予鉄グループが3分の2を出資した業務提携。四国最大級の百貨店。屋上観覧車が目印。元そごうだったらしいです。
伊予鉄バス。これは空港から市内へ移動。松山駅まではリムジンバスが15分で700円のところ、路線バスだと市中心部まで20~30分で460円なので少し節約できます。
実は市内電車の6系統に乗るためにわざわざ高知から松山へ一度戻りました。高知駅19:30発、松山駅22:08着の最終便。この便は伊予鉄担当でした。とさでん交通と共同運航です。
いよてつの高速バスは四国の県庁所在地間や、しまなみ海道を通って中四国各地を結ぶ。もちろん関西圏へも乗り換えなし。松山~高松間はJR四国で最も鉄道が発達しているのにも関わらず高速バスの方が特急より速いので、もうJR四国も踏んだり蹴ったり。
石崎汽船は伊予鉄グループ。愛媛県の離島路線の他、広島・呉~松山線のフェリーとジェット船はジェット船が広島~松山観光港で最速70分1日9往復、フェリーは基本呉経由で2時間40分1日10往復。瀬戸内海汽船と共同運航。

松山市駅直結で四国最大のデパートのいよてつ高島屋、松山市駅直結の四国唯一の地下街、高速道路のサービスエリア運営、東京に自前のアンテナショップを展開するなど流通業。旅行代理店、ホテル事業、保育園、事業所や住宅を扱う不動産、ゴルフやボウリング場や遊園地などのレジャー施設、自動車販売、グループのバーコード決済アプリ運営、クレジットカードや保険取り扱いなど。2023年3月期のグループ売上は約297.8億円、経常利益15.8億円となかなかしっかりした経営力。コロナ禍前の売上は大きく落とすものの経常利益はほぼコロナ禍前に戻していて財務健全化で筋肉質になったと言えると思う。中心となる鉄道やバスなどの運輸事業はニュースなどの情報を見る限り約70億円程度の売上でちゃんと黒字だと思われる(ちゃんとした財務諸表閲覧できず)。

伊予鉄グループ本社、松山市駅前。
1階はスタバと、その奥が坊ちゃん列車ミュージアムとして伊予鉄の歴史紹介。
四国唯一の地下街、まつちかタウン。こちらも伊予鉄グループ。
創業者で初代社長の実業家、小林信近。日本で2番目の私鉄として鉄道開業にまでこぎつけた実力者。
三越松山。三越伊勢丹本体ではなく子会社店舗ながらいよてつ高島屋と合わせて2店舗も百貨店が生き残る地方都市はそうそうない。右のANAクラウンプラザホテルが伊予鉄グループ。

四国のという長らく孤立した地域において、本州に対して玄関となった高松とは立ち位置が異なり、道後温泉を有したりと歴史ある都市を地盤としたから独立志向が高いからなんだろうと予想。あとは、松山においてJRは予讃線しかないし、そもそも国鉄松山駅の開業は1927年で伊予鉄に遅れること40年という歴史の重さが違うしJRが圧倒的に弱い立場にあるからかなと。

おまけ:愛媛県庁の公用車ではないみたいだけど、イベントとかに使うらしい。手前の0は四国一周約1000kmの起点。

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