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里山と里海を行く のと鉄道七尾線

のと鉄道は石川県能登半島の付け根にある七尾市の七尾駅から中部の穴水町の穴水駅を結ぶ七尾線を運行している第三セクターの鉄道会社。この日は夏晴れに恵まれ沿線の風景は、少し黄色くなりつつある田んぼ、里山の濃い緑、七尾湾の青、能登島の風景、眼下にすぎる能登の黒瓦の家々など素晴らしかったです。

七尾駅はJR管轄、窓口は分かれていて端のホームから乗車する。
終点の穴水駅。ここから先、輪島や蛸島方面へ路線は伸びていた。
里山と田んぼの風景。能登中島で行き違いを行い、大きくカーブする対向車が見える。
七尾湾にあるボラ待ち櫓。櫓の下に網を設置し、上から見て魚が通ったら網を引き揚げるという原始的な漁が受け継がれていた。
奥に見えるのは能登島に渡るツインブリッジ
深浦の入江
穴水駅直前のトンネルは七尾湾のイルカのイルミネーション。

七尾線の路線長は33.1kmで七尾駅と穴水駅を入れても合計8駅程度とかなり小規模。第三セクターということで例にもれず国鉄の赤字路線を引き継ぎ、石川県を中心に沿線自治体や地元金融機関などが約3分の2の株式を保有している。ただ少々特殊な事例であり、七尾線の線路はJR西日本が保有・管理し、その線路の使用料をJR西日本に支払って、のと鉄道が保有している車両を運行している形をとっている。

また、のと鉄道の路線は最盛期には七尾駅~輪島駅の七尾線と、穴水駅から珠洲市の蛸島駅までの能登線があったところ、赤字ローカル線の存続を目的として設立されていながら、需要減少を理由に能登線と七尾線の穴水以北がすでに廃線化しており、現存するのはわずか3分の1の区間となっている。

のと鉄道の成り立ちは後半にて。

運行本数はよくある朝夕のみ30分に1本くらい、昼間は1時間~1時間半に1本くらい。七尾駅から穴水駅まで約40分ちょっとくらい。新潟トランシス製で日本中の非電化ローカル線で見る1両編成の気動車が走る。この日はお盆の休日ということで9割方観光客で往路はほぼ満席。

あとは主力路線として建設された名残に、JR西日本が保守しているからなのか線路の状態も良く、このレベルのローカル線にしては珍しく全体的にかなりスピードを出している印象。

1日乗車券が助成金で半額に(枚数限りあるはず)。もともと片道850円なので往復するならお得。さらに観光列車で休日限定運行の「のと里山里海号」に空席があったので乗ってみました。チケットが雨でぬれてしまったので汚くなってしまった。

この日の穴水駅から戻るタイミングがたまたま観光列車ののと里山里海号が普通列車と併結運行する時間だったので(乗換案内では往復普通列車で検索していた)、思い付きで乗ってみました。席は半分も埋まっていなかったし空席が目立っていたので結果としては良かったんだろうなと。この観光列車は寿司御膳かスイーツが付くプランは事前予約必須で、普通に乗るだけなら+500円。海側に面した席の配置になっていて、内装はこの地方の伝統工芸である木組み細工の田鶴浜建具や麻織物の能登上布があしらわれ、輪島塗や焼物の展示なんかもある。

のと里山里海号は2両編成、この便は同時刻に運行される普通列車が前に併結されて3両編成での運行。のと里山里海号側は設定されている途中停車駅の能登中島駅と和倉温泉駅以外では乗り降りできない。
ホーロー看板に白ペンキのレトロ駅
能登中島駅に展示されているのは郵便車。現存するのは2両の貴重な車両らしい。もう一両は東京都国立市の郵政大学校にあるとのこと。
のと里山里海号に乗ると途中の能登中島駅での交換待ちの時間中に入れる。郵便車は国鉄時代に長距離列車に併結されて利用しており、職員が郵便を仕分けながら途中途中の駅で降ろしていた。
里海車両
里山車両

1987年にのと鉄道が設立され、翌1988年には民営化したばかりのJR西日本から最初に譲渡されたのは穴水駅から蛸島駅を結ぶ能登線。この能登線はかなりの問題路線で、計画自体は1922年はあったものの着工したのは1953年、全通したのは1964年。1950年代にはすでにローカル線は利用者が減少しており、国鉄の赤字体質は顕在化しているさなか。その結果、1986年にわずか22年間で廃止が決定してしまい、のと鉄道へ譲渡される。

七尾線は北陸本線の津幡駅から七尾への支線が発端で1898年には開通しており現在JR西日本の七尾線として運行されている区間。その後、温泉地だった和倉駅(現和倉温泉)が1924年、穴水駅まで1932年に延伸開業している。さらに、1935年に輪島駅まで延伸している。七尾線の中でも開通の早かった津幡駅から七尾駅・和倉温泉駅までは金沢方面への直通需要があるため1991年にはJR西日本が電化させ、それと同時に非電化でもあった七尾駅~輪島駅の運行はのと鉄道に移管するということとなった。

しかし人口が希薄でどん詰まりの半島の宿命でもあり結局利用者が伸び悩むことは避けられず、2001年には七尾線の穴水駅~輪島駅が、2005年には能登線全線にあたる穴水駅~蛸島駅が廃止され、七尾駅~穴水駅の区間のみの現在の形へ収束することとなる。穴水駅から廃止区間の鉄道代替バスが運行されている。コロナ禍前ですら鉄道収入1.6億円に対して鉄道運行経費は3億円超、お土産などの収益で少し埋め合わせ、補助金を入れても慢性赤字という厳しい状態であることには変わりない。

ちなみに七尾駅~和倉温泉駅の1駅区間は2社が重複しているのは、七尾駅は車両基地も併設され運行拠点となる駅ではあるものの観光需要から大阪方面への直通特急は和倉温泉駅まで乗り入れるほうが便がいいため。普通列車はすべて七尾駅で乗り継ぎが必要で、和倉温泉駅までは1駅だけはJR区間として18きっぷが利用できるけどのと鉄道の車両に乗ることになるし、七尾駅~和倉温泉駅の区間はJRの運賃として計算されるので少し安くなる(ICカードで乗り入れることはできない)。

能登半島の自然や歴史文化、アニメ聖地巡礼などの観光など。車が便利ではあるけど鉄道も活用してみて欲しいです。能登島とか千枚田は鉄道とバスでも行けなくもないので・・・。廃線跡を細かくめぐるとなるとやはりきついかな。

花咲くいろはの放送開始は2011年、この車両ラッピングも3代目とのこと。アニメツーリズムの代表例として地域に根付いている。
西岸駅は花咲くいろはでは湯乃鷺駅のモデルとなったため駅名看板まで再現してしまった。
こちらは2023年の作品で、七尾市を舞台とする君は放課後インソムニアのラッピング車両。
穴水駅構内に無造作に残されている能登線などでも使われていた旧車両。
輪島駅まで運行されていた急行のと恋路号。

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