ブレイディヴェーグのGⅠ勝利にみられる、血統傾向の変遷(3)
1回目の記事で、ヌレイエフとミスタープロスペクターの血を同時にクロスしているブレイディヴェーグは、過去の成功例とは違う珍しいパターンであることを書きました。2回目の記事では、母の父ディープインパクト産駒の傾向が変わり、牝馬の活躍馬が増えていることを書いています。
一見無関係に思える二つの流れですが、広い視点でみると実は繋がっているのではないかと思うのです。最終回の今回はそのお話しをします。
ですがその前に、もうひとつ別の話に脱線させてください。昨年の5月に、メジャーエンブレム、タイトルホルダー、パンサラッサの3頭は、おなじ血脈を原動力とした競走馬だという記事を投稿したことがあります。
このとき最後に書いた内容が、今回の流れに大きく関わってきます。全体の詳細は記事を読んでいただくとして、その部分だけを抜粋して、以下に掲載します。
ディープインパクトを頂点とした、サンデーサイレンス直仔種牡馬の産駒が減少。切れ味主体だった競馬界が、パワーやスタミナを含めた総合力で戦う土壌になりつつあります。この変化が大きな規模で、いろいろなところに影響をもたらしているのではないでしょうか。
ロードカナロア産駒の場合、切れ味で戦うためにはヌレイエフの増幅が必要。ミスプロを同時にクロスして、ヌレイエフらしさを薄めると、強みを失うことになりました。しかし今は切れ味を武器にする必要がありません。キングマンボの突進力が立派な個性として通用する時代なのではないかと感じます。
母の父ディープインパクト牝駒についてもおなじです。重厚化したディープの資質が、女性的な強みを活かしづらくさせていたことが、不振の一因だと考えられました。しかし今は女性的であることの利点自体が薄いのかもしれません。牝馬から活躍馬が出だしたのは、母の父ディープの傾向が変わったのではなく、母の父ディープの特徴が活かせるように、環境のほうが寄り添ってきたのでしょう。
似たような事例として思い浮かぶのが、以前は不振だったサドラーズウェルズもちのロードカナロア牡駒が、いまではニックス配合になっているということ。過去に記事を書いたので読んでいただきたいのですが、これも今回のお話と無関係ではないでしょう。
タイトルホルダーが菊花賞を勝ったのが21年。パンサラッサが覚醒して福島記念を勝ったのも21年。オールアットワンスが母父ディープ牝駒として初めて重賞を勝ったのも21年。具体的にどこと断定できることではありませんが、転換期はこのあたりだったと言えるでしょうか。
このような変化は、血の入れ替わりによって起こることもあれば、そのときの環境や育成などの外的要因によって起こることもあります。それらが混ざり合うことで、また別の変化を引き起こすこともあるでしょう。個人的にはジャイアンツコーズウェイの時代がくると考えているんですけど、いつか機会があればお話ししたいと思います。
ブレイディヴェーグは、ヌレイエフとミスタープロスペクターを同時にクロスしたロードカナロア産駒。また母の父にディープインパクトをもつ牝馬でもあります。この馬の登場によって、いろいろなことをあらためて見つめ直すきっかけになりました。
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