くりちょこ編集委員会のコピー

報告・相談が上がってこない……のは、何のせい?

期待する役割にギャップがありませんか?

職場でのコミュニケーションは、友達や家族とのコミュニケーションとは、だいぶ異なります。職場では、「私が期待する役割」「相手が果たしている役割」がコミュニケーションの質に影響するのです。

たとえば、あなたはドクターに「毎回必ず主病がどれか指示してほしい」と期待している。
でもドクターは2回に1回のペースでしか明示してくれない。
あなたがドクターへ期待する役割を、ドクターが果たしてくれていないことになります。

それでは同じケースをドクターの視点で想像してみましょう。
ドクターは「〇〇さんも、だいぶなれてきた。この患者さんの主病はカルテを見たらわかるだろう。不明なら後で聞いてくれるだろうし」
── こう考えて、あなたに「つけられる主病はつける、もし不明なら必要になるときまでに聞く」役割を期待している。
このときあなたが「主病をつけるのは先生の仕事であって私には関係ない」と認識していると、あなたのほうが、期待される役割を果たせていないことになります。

コミュニケーションエラーの原因は、2つの側面から考える必要があります。

1つは、

相手に期待している役割と、相手が示す行動とにギャップがある

もう1つは、

自分が果たしている役割と期待されている役割にギャップがある

自分がどんな役割を果たすべきか、相手にはどんな役割を期待しているかの認識が一致していて、お互いにそれを果たせていれば、自然とコミュニケーションがうまくいっていると感じられるものなのです。

さて、ここでよくあるお悩みを考えてみましょう。

報告や相談が上がってこない……。患者さんからご意見をいただいたら、私に報告するのは当たり前でしょ! ドクターから○○さんに言いたいことがあるなら、○○さんに言う前に、私に一言かけるべきでしょ! もう、人としてなっていないわね!!

確かに、そうやって育った人にとっては常識かもしれません。ですが、あなたにとっての「当然」が、全世界共通の「当然」ではない。常識は疑いましょう。

報告や相談は自然に上がってくるものではありません。
あなたが相手にどんな役割を期待しているのか、その相手は理解しているでしょうか?
「『こういうことがあったら報告・相談してほしい』と上司は考えているのだな」── まずはこれが伝わっているかどうかです。(※伝えることと理解されることは別の話ですが、それはまた別の機会に。)

もしあなたが上司の立場であれば、あなたのほうから、報告・相談のハードルを下げる働きかけも必要です。
ハードルを下げるのは日頃の積み重ね。
たとえば、つねづね「どうだった?」「困っていることはない?」と問いかける(だけ)。失敗を報告されたときは、「報告する」という役割をきっちり果たしたことを評価してください。繰り返さないための指導は必要な場合もありますが、叱責が適切だとは限りません。
あなたがつくる積み重ねによって、報告しておくほうがよい、相談に乗ってもらえるという気持ちにさせることです。

そもそも話をします

職場でのコミュニケーションの目的は何でしょう。

雰囲気がよくなると仕事がはかどるから? 仲良くなると助け合えるから? 楽しげにしているほうが患者さんに感じがよさそうだから?
……それらもあるかもしれませんが、職場メンバーは仲良しグループではありません。何らかの目的のために集まったプロフェッショナルの集団です。(仕事により報酬を得る立場である限り、みなプロフェッショナルです。)職場では、上記のような事柄は第一目的とはならないでしょう。

職場という場に限っては、コミュニケーションの目的は、

共通の目標を達成するために、誰が何をするかの分担を図ること

だといえます。

医療機関では、多職種間でコミュニケーションを図るという難題があります。異なる職種では、ものの見方、価値観が異なり、コミュニケーションエラーは起こりやすくなりますが、この職場に集まった「共通の目標」に立ち返り、目指すところを思い出して、前向きに対話しましょう。


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