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「妻側の名字に変えてもらう」というマイノリティな選択で感じた悲しさ

以前書いた記事に出てくるパートナーと結婚した。結婚というと出てくるのが「改姓」の話題だろう。うちは妻である私の姓にパートナーが改姓した。このご時世ですごく珍しいわけではないが、それでもまだ自分の周りで事例が少ないというところだろう。

改姓についてのノウハウだとか、社会や制度に対しての意見とかではなく、ただ1組のカップルに起きた認識のズレの話。何か解決するわけでもないが、「妻側の姓に変える」というまだまだマイノリティな立場で沸き起こった気持ちを書いていこうと思う。

ちなみに私は姓を変えるのが嫌で、パートナーも嫌かなと思い、最初は事実婚を提案した。だが、「色々不便が出るなら、名字にこだわりもないし、自分が改姓するよ」とパートナーが改姓を提案し返してくれたのでそうなった。今回の話はそんなやりとりが終わり、両家にもそれぞれ結婚することを連絡し終わった後のことだ。



映画を見る前のランチが運ばれてくる少しの間の出来事 

コロナで遊びに行く機会がめっきり減り、おうちデートがメインになっていた頃。その日は珍しく外に出て、映画を見に行く予定だった。お昼〜午後一くらいの上映予定だったので、先に映画館周辺でごはんを食べようとなった。土日の昼という混みそうな時間帯だったが、コロナということで出歩いている人も少なく、オープン時間すぐということもあり、店内は空いていた。

ごはんが運ばれてくるまで雑談をしていた時、ふとパートナーから改姓について話したいと言われた。意を決したというよりも、ちょうど時間があるし、隙間時間で話題の1つとして軽く喋ろうという感じだった。(ちなみにうちは相談事があると事前に「こういうこと話したいんだけど」と、相談時間をもらうようにしている)

「うまく説明できないから、あなたから親に説明してくれない?」という言葉に泣いた

「自分は説明できないから、うちの家族に説明できるように教えてほしい」
そんなニュアンスの言葉をパートナーは言った。その言葉に少し引っかかったものの、「私が改姓が嫌なんだから」「私の方が知識もあるし」と思い、事実婚についての話や改姓について、社会で話題になっていることを伝えた。とはいえ、私も専門家ではないので、スマホで調べつつという感じで話した。

それでパートナーが改姓について話すための論点は渡せたと思った。だが、パートナーは違ったようで「自分ではそれらをうまく説明できそうにないから、〇〇(妻)から親に説明してくれない?」と言った。その言葉で、私はその場で泣いてしまった。

パートナーは「どっちでもいい」というスタンスであり、それは「あなたが希望する方法にするから、そのための努力や説明はよろしくね」というスタンスなのだと感じてしまった。一緒に悩んだり、説明してくれるというスタンスではないのだと。それは同時に私の「自分の名字がいい」という気持ちを受け取ってもらえてなかったのだとも感じた。

私はそれが悲しく、人目も気にせず泣いた。そして、泣きながら改めて、名字について私が感じているアイデンティティや論理的ではないけど変えたくないという気持ちを伝えた。パートナーはそんなの姿を見て、私の熱量や思いを受け止め、そこからは共に「妻の名字にする」という選択を選び取った仲間として話をしてくれた。

伴走的なスタンスに気づいて、意見を言えなくなってしまうこともある

パートナーは対等に対話もできるし、意見を尊重した上で一緒にどうしていけたらいいか考えてくれる人だ。だからこそ、「こんなことがあって私は深く傷ついた!」と彼を糾弾したいわけではない。そうではなく、「教えて」という言葉や「自分は説明できないから」というスタンスに対して、突き放されたと感じたということをこの記事では書きたかった。

世間一般からするとマイノリティである場合、マイノリティ側が説明を求められる。知識がないから、説明できないから、と。確かに事実としてそういう側面はあるかもしれない。ただ、そこで「私はあなたの意見を‘応援’するだけの立場です」というスタンスを感じると悲しくなってしまうんだと思った。共に仲間として考えてくれないんだと。

今回の改姓の話は、この時を起点として私たち夫婦は同じ立場になれたと思う。ただ、パートナーには何を言っても大丈夫、受け止めてもらえるだろうという関係性を築いていた私でさえ、思いを伝えるのはとてもしんどいことだった。だからこそ、他の話題でもマイノリティ側が悲しくなってそのまま意見を言えなくなってしまうということがあるかもしれないということを、忘れずにいたい。


プチ後日談
ちなみに彼の家族は「まあ、男性側の名字にしなきゃいけない時代じゃないし、いいんじゃない」とあっさりした回答だった。話してみると、社会のニュースを見て、意外とあっさりOKしてくれることもあるんだねと彼と話しました。(むしろうちの親の方が「うちはいいけど、相手は長男だし、いいのかしら」と心配してた)


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