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亜米利加のはなし ▶Yuning


皆さまこんにちは、Yuningです。

わたしは、日本に異邦人として暮らして33年目になるが、途中でアメリカに4年半、香港に2年ほど住んだので、正味は四半世紀といったところである。ただし、6~18歳の人格形成期がそこには含まれるため、あちこちへ行ってみたが、結局ここが一番居心地がよかった。
 

大学の4年間をアメリカで過ごしたことは大いなる冒険だったが、銃に触れることもマリファナに溺れることもなく(笑)、シエラネバダ山脈の中腹に位置する小さな街で、勉学に勤しむ地味な日々であった。

そんなこともあったかと忘れかけるほど昔になり、明日で40歳の誕生日を迎えるわけだが、さて、どの本を手に取ろうかと考えて、ふと「Five Hundred Years: America in the World by Scott E. Casper」を思い出した。
 

アメリカの大学の教科書にしては珍しくハードカバーではない。

 
私のいた州立大学では、専攻に関わらず全員必ず取らなくてはいけない授業(Core Humanity 201/202/203)があり、人類史からアメリカ史まで幅広くカバーするものだったが、そのクラスで使った教材である。アメリカの教科書はどれも漬物石のように重くて、ものぐさな私が記念にと持ち帰ったのはこの一冊だけだった。 

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南北戦争中に行われたリンカーン大統領の演説文。たぶん一番有名。


「Five Hundred Years: America in the World」は、タイトルの通り、アメリカという存在を形作って来た人々による書簡、演説、評論、雑文集である。


最初に収められているのは、クリストファー・コロンブスの書簡(1493年)で、そのとき彼は新大陸発見を果たした航海からスペインに戻ったばかりであった。彼に「発見」された新大陸の人々にこれから待ち受ける過酷な運命を思えば、正直、複雑な気持ちを禁じ得ない。
 
本書はそれから、独立戦争とアメリカの建国、南北戦争とリンカーンの演説(写真)、公民権運動におけるキング牧師の演説やマルコムXの檄文など、時代を代表する文章資料を収載し、もっとも新しいものは9.11におけるブッシュ大統領の演説と、2年後の「それからアメリカはどうなったか」という評論文(2003年)である。
 

写真の通り、ひたすら白と黒しかないページが続く文章の海で、これを毎回読まされるのはなかなか骨だったが、アメリカという存在の成り立ちを知るには、間違いなく第一級の資料であった。
 

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理系専攻だったので、私の英語はあまり上達しなかった。実用的だが文法的には微妙なガチャ英語のまま、退学にならない程度には成績を維持しつつ、クラブ活動(女子ラグビー部)とアルバイトをこなして、無事に卒業するなり「日本のメシが恋しい…」とあっさり戻って来てしまった。
 

どんなに遠い所まで行っても、そこで待っているのは日常の生活だ。
日々のうまいメシと、面白い本。これに勝るものはない。
 

それでは、読書会でお会いしましょう!😊


【投稿者】Yuning




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