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わがままな作家▶Yuning

みなさま、こんにちは。
よく晴れた皐月の青空ですね。
 

2022年4月に河出文庫より復刊されたバージョンの『弱法師』


みなさんは、本を「何で」読みますか?

私は以前、おさがりのkindleをもらって、これで電子書籍デビューだ、ぴゅー!と盛り上がったのも束の間、ほとんど読まぬまま紙の本に戻ってしまいました。いくら表示方法を工夫したところで、充電が必要な機械で本を読むことにやっぱり違和感があったのです。
 
さて、最近読み進めている中山可穂さん。熱量が高すぎて暑苦しい(褒めてますw)恋愛もの以外にも、現代能楽集と銘打って、能楽や源氏物語などの古典に材を採った短編~中編集を2冊出しており、『弱法師』(弱法師/卒塔婆小町/浮舟)と『悲歌<エレジー>』(隅田川/定家/蝉丸)がそれに当たります。
 
 
***
 
 
そのあとがきに、電子出版への期待が綴られていました。
少し長くなりますが、引用します。
 
「なかなか新刊をお届けできなくて、すみません。
これだけ長くスランプが続くと、各出版社に見捨てられつつあり、もしかしたら紙の本でお目にかかるのはこれが最後かもしれません。しかし、これからはいざとなれば「kindleで自費出版」という最終手段もあるわけで、わたしのようにたくさん書けずたくさん売れない超マイペースの作家にとっては、kindleの登場はある種の福音となりえます。紙の本はいつか必ず(そして驚くほど早く)絶版になりますが、電子書籍の寿命はもう少し長いでしょう。(中略)
出版社とも取次とも印刷会社とも書店とも無縁のシステムから本が生まれ、直接読者に届けられるとしたら、それはやはり革命的なことであり、魅力的なことと言わざるをえません。作家が作品を仕上げてアップロードすると、それを読みたい読者がお金を払ってダウンロードする。そこには余分なものは何も介入せず、不当な中間搾取もありません。誰かに足元を見られて自尊心を傷つけられることもありません。(中略)
真摯なる読者のみなさん、書店からわたしの本が消えたら、いつか電子書店で探してみてください。銀河系のように巨大な電子の密林の片隅で、小さな流れ星のようにかぼそい光を放ちながら、まだ見ぬ新しいタイトルの小説があなたに見つけられるのをひっそりと待っているかもしれません。銀河系の広大さと流れ星の儚さを思うとき、一冊の本がそれを必要とする正しい読者とめぐりあい、さらにその胸の奥深くに届くことは、ほとんど奇跡のようなものだと思います。
わたしは心からその奇跡を願い、信じています。
いつかまた、どこかの宇宙の片隅で、あなたとめぐりあえますように。
 
2012年12月 京都にて 中山可穂
 
(悲歌<エレジー>文庫版あとがきより)
 
 
***
 
 
ああ、可穂さん…。あなたはなんと正直なお人なのでしょうか。
 
この本にしたって、出版社と取次と印刷会社と書店によって世に出たというのに、あなたはそのあとがきで、「不当な中間搾取」や「足元を見られて自尊心を傷つけ」られることについて切々と訴えている…。読む方としても、ちとフクザツな気分になりますが、「作者/原作者の立場の弱さ」が色々と明るみに出ている中で、本音なのは間違いないでしょう。
 
紙でもいい、電子でもいい。あなたの新作のためならば、埃をかぶっているkindleだって再充電する。だから、きっとまた宇宙の片隅で――。
 
 
紙の本派もkindle派も、どちらも大歓迎です♪
 


【投稿者】Yuning
 



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