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こんなもんだよ、年相応

 どこも痛くなくて、いつも食欲があって、出るものも当たり前に出て、どこも庇うことなく歩くことができて、痒いところに手が届き、自分の尻も当たり前に拭けて、言葉も喋り、美しいものをみんなと同じように美しいと思えて、綺麗な旋律にもうっとり聴き惚れることができて、美味しいものを美味しいと感じられる。

 それらのことが、当たり前じゃないんだなってことを知った時から世界が変わる。

 それまで当たり前と思っていたことが、有り難いことだと思うようになり、どうにもならないことを受け入れ、どんな理不尽なことも祈りで甘受せねばと思うようになる。

 何ものにも負けない強さというものは幻想であるが、惨めで哀しい生きものだと卑下するほどでもない。その時の年齢に応じて強く逞しく生きればいいし、全てを受け入れて騙し騙し生きればいい。一つのことがダメになっても人生は終わることなく続いていく。人目を気にせずまた違う歩き方で歩けばいい。

 自分なりの年相応で歩けばいいと、自分に言い聞かせる。

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