見出し画像

テレワークに疲れました

 4月7日の緊急事態宣言から一か月半が経過し、国民の多くが外出の自粛、人との接触を8割減らすといった生活を続けた結果、5月25日ついに緊急事態宣の解除が発表された。この間、爆発的に普及したテレワークという働き方は緊急事態宣言が解除されたからといって途端に無くなるものではなく、新たな生活様式の中に組み込まれ、我々の生活の中に溶け込んでいくことになるだろう。

 このテレワーク、良い点は多くありつつも、結構疲れるという人は意外と多いのではないだろうか。実は僕もその一人で、テレワークが快適だったのは最初の1週間だけでその後は徐々に辛くなり、今はこのテレワークによる何とも言えない謎の疲労感に頭を悩ませている。

 ただ、テレワークについてネガティブな発言をすることは自分が時代の波に乗れていない頭の固いオールドタイプであることを宣言しているような気がして何となく気が引ける。だが、この謎の疲労感を感じているのは僕だけではないはずだ。この疲労感についていちいち説明するのも何なのでnoteにまとめることにした。
とにかく僕はこの良く分からない謎の疲労感がとてつもなくしんどい。

テレワークに向いている人、向いていない人

 そもそも僕はコロナショックによる緊急事態宣言発動の前からテレワークを活用していた。出張先でも家からでも仕事ができるテレワークが便利だということは知っていたし、テレワークで働くのは今回が初めてではない。

 僕と同じように緊急事態宣言の前からテレワークが働き方として既に組み込まれていた人は少なくないはずだ。ただ、今までのテレワークとこの2~3カ月の間に爆発的に広まった強制的テレワークは全く別物だ。外出や面会の自由が効かない。なので、テレワークがしんどいというよりは強制的なテレワークがしんどいというのが正しい言い方なのかもしれない。

 だが、今回のような強制的なテレワークであっても快適さを見出し、『テレワーク最高!』と言っている人がいるのも事実だ。これは、本人の性格的なものと環境的要素が大きく関わっているのだと思う。

 そもそも、性格的にテレワークに向いている人、向いていない人はいる。

 人とのフィジカルな付き合いがあまり好きでない人や自分のペースで仕事をするのが好きな人は今までのようなオフィスで膝をつき合わせた働き方よりテレワークのほうが働き心地が良い。それとは逆に、場の空気を作るのが上手でコミュニケーションを重視している人やフィジカルで五感を使ったコミュニケーションを求めている人はテレワークよりオフィスで皆で働く方が働き心地が良い。要は、人それぞれ心地よさが違うということだ。そんな多種多様な考え方がある中で皆がオフィスに行かなければならないという選択肢しか無かった事自体が異常だったのかもしれない。

 また、その人の持つ環境的要素もテレワークの向き不向きを大きく左右する。僕の周りを見てみると、単身者(独身)の一般職社員(管理職でない社員)は「テレワーク最高!!」と言っている層が多い。一方で、家族持ちでしかも小さい子供がいる世帯や管理職はテレワークに疲れている傾向がある。
 他には元々、仕事の時間より趣味や副業といったパーソナルな時間に重きを置いていた人達はテレワークを大歓迎している。通勤時間や余計な会議が無くなって空いた時間を自分の好きなように使えるようになったからだ。

 オールドタイプの管理職に多いのが、組織の仕事にどっぷりはまり、仕事命でやってきて仕事以外にやることが無く、家にも居場所のないという人だ。
 こういう人には地獄の空き時間が生まれ、単にいつもより遅く起きてダラダラとテレビを見ているという生活を送っている。この手のタイプはテレワークが全然ダメで、自粛を促されているにも関わらず出社し、テレワークをしている同僚を悪く言う傾向がある。

テレワークをする環境を作れているか否か

 テレワークを快適と思えるかどうかは仕事環境も大きく左右する。
 まず、日本の住居は一般的に家族とのコミュニケーションを重視した作りになっているので、子供部屋はあっても大人の部屋は無く、寝室はあっても書斎は無いという家が多い。つまり、仕事のための部屋がある家はともかく、それがなくてリビングや寝室での仕事を余儀なくされている人にとってテレワークは辛い。
 リビングや寝室には働くことに適した机や椅子が整備されていないのが一般的なのでそもそも仕事に適していない。ワンルームに住んでいる人も同様でワンルームにありがちなコーヒーテーブルと座椅子・ソファの組合せでは長時間の仕事は厳しい。

 また、同居人の有無も仕事環境に与える影響は大きい。仕事専用の部屋が無い人はリビングで仕事をすることになるが、共働きの場合、夫婦二人でリビングのテーブルで向き合って仕事をし、テレカンの時だけ寝室に移動なんてやりくりをしている家庭もあるだろう。これはとてもストレスがたまる。仕事をしているときに他人ならともかく同居人が自分の空間にいるのはとても気になる。加えて今は学校が休みなので外で一人で遊ぶことができない年齢の子供がいる家庭なんかは絶望的に困っていることだろう。

 逆説的に言えば、同居人のいない一人暮らしで作業用の机や椅子が整備出来ている人、若しくは同居人がいても仕事に集中できる環境が整備出来ている人はテレワークをする環境が整っているので無駄な会議や上司からの「ちょっといい?」という仕事の邪魔が無いテレワークを満喫している感がある。

テレワークは精神的にしんどい

 いくら、仕事環境が整備されていても精神面でのテレワークの辛さは未だ残る。オンとオフの切り替えだ。今までは、朝の通勤時間を使ってゆっくり仕事モードに入り、帰りの電車の中でゆっくりとプライベートモードに切り替えて家に着いた頃にはすっかりプライベートモードで心と体を休めることができたがテレワークはそれが難しい。勤務開始の報告を職場に入れた後もスイッチが入らなければ仕事モードに移行できず、なんとなくベッドに戻ってスマホをいじり出してしまうという人もいるだろう。逆にオフモードに出来ず、仕事モードから抜け出せずに苦しんでいる人もいる。

 オフィスで仕事をしていた時は常に仕事に追われていたわけではなく、トイレに立ったり、コーヒーを飲みながらちょっとした雑談をしたり、オンの中にちょっとしたオフを混在させながら仕事をしていたはずだ。それなのに、自宅だとそのちょっとしたオフですら休めない人もいる。

 テレワークは家というプライベートスペースと仕事が切り離せない。そのため、心の切り替えが出来ないので人々の熟睡度が下がっているという調査結果もある。

 また、テレワークは感情に振れ幅が生じにくい。リアルなオフィスは実は良くできていて、人と人がすれ違い、何気なく会話が発生するようにできている。オフィスでの会話にもオンとオフがあり、元々あったちょっとした雑談や相談、先輩・上司の過去の失敗談、アイディアの壁打ちなど会話にグラデーションがあったが、テレワークではオンの会話しかできない。業務の根詰めた話ばかりで、プライベートな話や上司や仕事の愚痴と言ったオフの会話が出来ず、ネガティブなことが心の奥に押し込められ、心理的な振れ幅が無く、気持ちが動かない。
人間は喜怒哀楽のバランスが悪いと苦しくなるので、この苦しみもテレワークの見えないストレスの原因と言えよう。

テレワークは生産性を低下させる?

 仕事に対するモチベーション議論は過去幾度となく挙げられてきたが、どの論者からも共通して挙がるのは仕事への関与度と貢献性、自己実現性や成長の実感という要素だ。テレワークはこれらが欠ける。目的がないまま仕事をするのは辛いし、仕事も全体が見えないと自らの関与や貢献度が確認できず、モチベーションが削がれていく。目的がないまま仕事をするのはとても辛い。だが、オールドタイプの上司は部下に仕事を任せるのが不得意で自立性、裁量権を削りたがる傾向がある。しかし、テレワークは上司によるマイクロマネジメントが難しく、個々の自主性に任せざるを得なくなる。結果、オールドタイプの関与できる領域が格段に減少し、オールドタイプはやる気が削がれる。日本人が得意としていた阿吽の呼吸も使えない。では、部下は上司からのマイクロマネジメントから脱していつにも増して仕事ができるのかというと、そういうわけではなく、上司の細かい指示が無くなるため、逆に自由を得て仕事をしなくなる。

 テレワークはアジェンダが決まっている会議には適しているが立ち話やフラッとした会話というレイヤーが抜け落ちるため、その中から生まれるアイディアや、偶発的なクリエイティビティが欠落する。人と人とのつながりが減るということはその分、学びが少なくなるということだ。
 仕事は没頭し、何かをしたかどうかで満足感が変わるがテレワークは達成感が少ないため、自己肯定感や満足感が低い。
 会話や会議に計画性の無いものが無く、決まってること以外議論ができないのでフラストレーションなんかがどんどん溜まっていく。かといって、皆家にいるので仕事終わりに飲みに行く、誰かとコミュニケーションを取るという要素が欠落し、生活の満足度も下がるので仕事のパフォーマンスがとにかく下がる。

テレワークの利点

 テレワークは時間と場所の自由度が高まるので副業やライフワークを充実させたい人には良い働き方だ。
 テレワークの会議に参加していると自分主催の会議以外では、意外と自分の出席の必然性が低い会議が多いことに気づく。今まではどんな会議であれ出席している以上、会議中に別のメールを打ったり、調べものをしたりすることは出来なかったが、テレワークでは耳を貸しながら別のタスクを実行することができ、会議に自分のリソースをどれだけ割くかを自分で決めることができる。  
 これはテレワークならではの仕事の仕方だ。また、今まで1時間かかっていた会議が必要なことしかしゃべらなくなったことから20分で済むなど、会議の無駄がそぎ落とされる。

 加えて、今迄は会議でも何でもリモートを提案するとリモートでなければならない必然性や優位性を説明しなければならなかったが、これだけリモートが普及すると人々のリモートに対するハードルも下がっているので受け入れられやすくなっていて、その説明ステップを省くことができるようになってきた。初対面の人にリモートで面談を依頼するのは失礼に当たったが今後は、リモートで初対面の人と面会をすることもニューノーマルになっていくような気がする。

まとめ

 テレワークが疲れる原因は以下に纏められる
  ・ 一人作業用の環境が整っておらず仕事に集中できない
  ・ 仕事に対する達成感と満足感が無い。
  ・ 気持ちのスイッチOn/Offへの切り替えが非常に困難
  ・ テレカン過多、会話の余白不足
 要するにこの謎の疲労感の正体はフィジカルなコミュニケーションの不足と孤独感に収斂されるのではないだろうか。オン・オフの切り替えが出来ず毎日、毎日同じ風景、PCモニターという無機質なものに向き合い、全ての情報を視覚・聴覚に偏らせることによる五感の不活性は体にも心にもよろしくない。

 テレワークをしていると組織に属するメリットとその感覚が薄れる。同じ空間を共有して仕事をしているときは頑張っている感を伝えることができたし、上司もそういった面を評価してくれた部分があるが、テレワークでは純粋にアウトプットでしか評価されないため、頑張った感は何も評価されない。働き方がフリーランスに似ているため、組織に属することに慣れきっている人には働き心地が悪い。

 コロナウィルスの感染者数は減っているが、ウィルスが無くなるわけではないのでワクチンができるまではガードを下げることはできない。つまり、テレワークを活用した働き方はまだまだ続く。バーチャルをリアルに半端に似せると色々と歪が生じるのでリアルはリアル、バーチャルはバーチャルで別物と考えるべきだ。
 強制的なテレワークの導入によって人それぞれの働きやすい働き方があるということが分かった。今後はテレワークかフィジカルワークかを選択する時代になるので、ベストパフォーマンスを出せる働き方を選択し、働き方をデザインできるようになったと前向きに考えればよい。

働き方の選択はこれからのニューノーマルだ。

テレワークによるストレスは全てコロナのせいにして、テレワークとの上手い付き合い方を模索していくことが大切だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?