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じゃぁ、なぜアメリカは

某SNSでの話題を元に、一度だけちょっと深く考察するだけの文章です。
今回は、前回の稿「円高と円安」の続きの稿となります。

前回の稿を読まれた方のうち、当然の疑問を持つ方がいらっしゃると思います。
「じゃぁ、なぜ今金利が上がり、かつドル高となっているアメリカの経済が好調なのか?」

なるほど。
これはですね。端的に言うと、「アメリカが、世界でも特別な国」だからです。

順番に見ていきましょう。


基軸通貨としての「ドル」


円もまた、世界の取引で使用できる基軸通貨ですが、昨今の円安から想像されるとおり、世界における円の重要性は下がってきています。
つまり、純粋に取引で使われる機会が少ない、ということです。

これは、日本に代わって長らく中国が世界経済において台頭したことに一つの要因があります。
中国は10年代、世界の工場たり得ました。つまり、人民元における取引量が増え、かつてそうだった日本のお株を奪った、ということになります。
ただ、この様相は今後変化していくでしょう。
中国への投資が鈍化しており、それゆえ中国における土地価額暴落が起こっており、それはかつてのバブル期の日本を彷彿とさせるからです。

逆に、ドルは、実に世界の取引の60%を担っております。
これは、オイルマネーの言葉通り、原油取引にドルが使われる……原油産出国の一つであり、かつ他の産出国に経済的な影響を持っている……ことに理由があります。
ニクソンショックが起こるまでは、ドルは金兌換紙幣でした。
が、これによって金のくびきから逃れ、自由意志によって発行額を上下できるようになりました。
その伝でいけば、今のドルはさながらオイル兌換紙幣、と言ったところでしょうか。

さて。
世界の基軸通貨である、ということは、ドルはアメリカ一国が、世界を相手に(世界で、取引における準備資産として、米ドルを持つ必要がある、ということです)ドルを準備しなければならない、つまり、世界のドル需要にアメリカ一国で応えなければならない、ということであります。
やや感覚的な話になりますが、これだけ聞いて、
「そうなるとアメリカは、アメリカだけが必要な額を超えてドルを準備しなければならない」
という発想が起こるかと思います。
つまり、アメリカは、自国の収入以上にドルを供給する必要があり、ドルを過剰に供給するということは、自国収入を超えて過剰に国債を発行する、ということと同義であります。
財政赤字を恐れて緊縮財政を取り、米国債の発行を縮小したならば、ドル不足による極端なドル高を誘発するだけで、かつ基軸通貨としての信用を失いかねないのです。

ただ。
そうは言っても、限度というものがあります。
リーマンショックの対処療法として、アメリカは長らくドルの異次元緩和を実行しておりましたが、これを引き締める方向へと今はシフトしております。
また、適切を通り越したと見られるような、あまりにも多い財政赤字に、たとえば毎年国債発行でまかなうことへの反対が議会から起こり、たびたび政府機関が閉鎖の危機に瀕していることはしばしばニュースになっております。

さて。
ここまでざっと見てきたことで、アメリカドルは、「経済拡大」し続けなければ財政赤字の本質的意味を問われかねないという、非常に危なっかしくも重要な位置にあることが分かるか、と思います。
逆説的な言い方になりますが、「ドル(米国債)を増発し続けているからこそ、経済は拡大(発展)している」というような意味になるかと思います。

アメリカも、内実はやばい。でも


昨今アメリカで注視され続けている経済問題の一つが、
「中間層の破壊」
であります。
アメリカは、日本を遙かに凌駕する「資本主義徹底国」であります。
すごく雑に言えば、弱者を切り捨て、強者の発展に枷をかけないことで、社会保障というハンディキャップを縮小して経済にステ振りしている、ということであります。

実は、アメリカでは今、ホームレスが急増していると問題になっております。

経済が発展している、ということは、土地価額が右肩上がりであることと同義、と以前私は申しました。
そして、アメリカの住宅需要と土地価額は、多少の増減はありつつも基本、右肩上がりとなっております。
それが、昨今の金利高で、住宅が買えない、ローンが払えず土地を手放さざるを得ない、賃貸の高騰で家賃が払えない、などの問題が顕現し、仕事がきちんとありながらホームレスへと転落する例が後を絶たないそうです。

日本でも原油高、電気料金の高騰は問題となっており、しかしそれに対し不十分であるという指摘は常々あるものの、政府は補助金を出して対処に奔走してくれております。

つまり。
日本だったらおそらく、大問題になって内閣が三回くらい倒れるような社会的弱者の無産者転落が、アメリカでは普通に起こりまくっている、ということであります。
ただ。
アメリカ政府はただ単に弱者に厳しい、というわけではありません。
そもそもアメリカの現在のインフレがなぜ起きたかということ、コロナ禍における港湾管理者・トラックドライバー・飲食店等の従事者が仕事がなくなり、困窮したことへの対処として、一律の給付金を配りまくったことで、その給付金が仕事に従事している給料より高くなり、コロナ禍が一服したあとも誰も働かなくなったことによるものであるのです。

また。
少し違う話になりますが、アメリカでは日本で言ういわゆる「リボ払い」をする人が圧倒的に多いそうです。
日本は、その危険性が堅実に知れ渡っており、多重債務者問題は、発生すれども一部であるのに対し、アメリカはその割合が日本より遙かに高いと言います。
彼らは消費が大好きであり、大量消費を美徳とすら感じている様が見て取れ、そんな彼らがいわば借金で経済を支えている。そんな危なっかしい社会状況こそが、アメリカ「好況」の正体、というわけです。

まとめ


最後に、まとめですが。
アメリカもまた、大きな社会問題を抱えつつ、経済にステ振りし、世界と競り合っていかざるを得ない、というジレンマを抱えております。
アメリカ経済が強い、と一言に言いましても、それは日本ではおそらくマネのできない、凄惨な背景あってのものだ、ということでもあります。
日本が今、金利引き上げをすれば、ローンを組んでる人へのダメージが大きすぎ、ただでさえインフレで疲弊している国民にさらなるダメージが入ること必然でしょう。
ですが、そうも言ってられない状況はまた、すぐそこまで来ています。
このドル独歩高に起因する構造的円安に、日本経済がどこまで耐えられるか。
その綱引きは、これからの争点でありましょう。

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