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トマト缶の上手な使い方

料理の稿です。

トマトが嫌いな方、というのは不思議と、トマトジュース、トマトソースは大丈夫な方が多く、逆にトマトジュースやトマトソースが嫌いな方はトマトが好き、ということがわりとよくあるそうで。

ちなみに私は若い頃は前者でしたが、今はどちらも大好きです。

で、このトマトソースですが。
イタリアンのプロは、わりとトマトそのものの旨みとオリーブオイルの旨みで勝負! という感じで、玉ねぎやにんにく、セロリ等の香味野菜をあまり乗せないそうですね。
ですがこのトマトソース。苦手な方からするとその理由の一番に
「酸っぱい!」
というのがあると思います。
特に、自作のトマトソースをトマト缶で作ったときなど、大量に作ったのに食べるとあまり……で、残しておいてそのまま冷蔵庫の腐海に飲み込まれる……なんて経験、あるんじゃないでしょうか。

トマト缶の酸味の原因はトマトに含まれるクエン酸が原因ですが、このクエン酸をなんとかできれば、トマト缶でつくるソースが酸っぱい問題はほぼ解決したもどうぜんです。

ではどうするか。

三つのアプローチがあります。

ひとつは、オリーブオイルでことこと煮込んでやることで、クエン酸の酸味を目立たなくさせる方法です。
よく、クエン酸は170度以上の熱でよく炒めてあげると別の(アコニット酸などの、酸っぱくない)酸に分解される、という方がおられますが……じつはこれは少し間違いです。
なぜかというと、クエン酸を含むトマトを、170度に加熱する方法がないからです。なのに、多少は酸味が軽減されている。これは実は、別の原因によるものです。

そもそも、フライパンの中でトマトを「揚げ炒め」すると、オリーブオイルの量よりトマトの水分の方がはるかに多いので、この水分がある限り、フライパンの中、とくにトマト自身は必ず100度以上にはなりません。
また、そもそも170度以上の熱による分解がほんとうに起こるのだとしたら、トマトの酸味は「強火で焼き付く寸前まで炒める」方が、「弱火でじっくり炒める」より飛ばないとおかしいです。
ですがとある方が実験をしたところ、後者の「弱火でじっくり炒め」た方が、口当たりがまろやかになって、酸味を感じにくかった、と言います。

結局これは、トマト以外の具材……例えば別で炒めてた玉ねぎやにんにくが含む……が含む糖分、これが炒められることでカラメル化したものが煮汁にとけこむことにより、トマトの酸味をまろやかに感じた、というのが真相のようです。

ですので、加熱による方法を採る場合は、弱火でじっくり、香味野菜をやや多めに入れて炒め合わせる……ということをするとうまくいきます。

もうひとつの方法は、砂糖を入れることです。
酸味と甘みはベクトルでいうと逆ベクトルの作用を味にもたらすので、砂糖を入れると酸味は基本、緩和されます。
酢と塩だけではとても食べられないなますが、砂糖を入れることでおいしくいただけるのも、レモネードがおいしいのも、この理屈です。

砂糖のかわりにはちみつを入れると、より料理に奥行きが加わり、おいしくなることも分かっています。とくにトマトとはちみつの相性はいいので、酸味が気になったら少し入れてみましょう。

そして、最後の三番目。
じつはこれこそが、今回この記事を書こうと思ったきっかけの内容となります。

まず、トマト缶は必ず「ホールトマト」を選びます。
次に、トマト缶のトマトを、汁ごとボウルか深めの皿か、なにかにぶちまけます。
そして、手でぐちゃぐちゃに身をつぶします。
そしてこれを、ざるなどを使って「うらごし」します。
そこまで丁寧でなくていいので、金ざるの上からスクレーパーかなにかでこすりながら押してやると、トマト殻と汁とに綺麗に分離してくれます。
ざるの裏についたトマトも、スクレーパーできれいにぬぐって汁に落としてやります。
トマト殻、つまりしぼり滓は捨てます。

この汁で調理してやると、驚くほど酸味のないトマトソースができあがります。
これは……実は、「トマトジュースはそもそも酸っぱくない」ということと関係があります。
トマトと塩しか使ってないトマトジュースが酸っぱくない理由は、トマトからトマトの酸っぱい原因「クエン酸」を取り除いて作っているからです。
何かというと。

実は、トマトは「種」に酸っぱさの原因があるのです。
クエン酸の含有は、トマトの種にわりと集中しており、これを取り除くことで酸っぱくないトマトがとれてしまうのです。

ただ。
この方法の難点は、なんといっても「汚れ物がどさっと出る」……つまり、「しちめんどくさい」ことにあります。

ですが、なんとしても安価なトマト缶で酸っぱくないトマトソースを! と願ってる方は、試す価値があると思います。

そして。
第四の方法として。
そのトマトジュースやトマトピューレ、あるいは最近スーパーでも売り始めたトマトペーストを使う。
こうすれば、ラクに酸っぱくないトマトソースが作れます。

ただし。
注意として、出来たトマトソースは、「逆に全然酸っぱくなさすぎてものたりない」となる可能性があります。
まぁ、酸味はタバスコやワインビネガーでいくらでも補強出来るので、味付けを工夫してみて下さい。
あるいは。
裏ごしして残った滓の種を、逆に少しだけ鍋にもどしてやる。
こんな方法もあったりするのではないでしょうか。

トマトはリコピンを豊富に含み、体によい食べ物です。
積極的に食べて、健康増進に努めましょう!

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