見出し画像

暮瀬堂日記〜鶏頭

 公園の片隅に鶏頭が咲いていた。今年初めて遭遇したが、見るたびに子規居士一句が頭をよぎる。

  鶏頭の十四五本もありぬべし

 何でもないような句であるが、歳を重ねるごとに惹かれてゆくので不思議なもので、

  鶏頭の十二三本しかあらず

 などと戯れに一句を興じてみたくなる。

 別の背高の品種の前では、子供がじっと見つめたあと、鶏冠の部分と己の頭を測っている素振りをしていた。

  鶏頭と背くらべする美少年

 そんな様を眺めていると、指が濡れるような感触がした。見れば、数日前に出来た血豆が破れていたのだった。燃えるようなな鶏頭の赤に驚いたのだろうか。
 指先に鼓動を感じながら、その場を後にしていた。

  鶏頭の前で破れし血豆かな
 

(旧暦六月二十八日 立秋の節気 蒙霧升降【ふかききりまとう】候)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?