暮瀬堂日記〜枯蘆
六郷橋を渡ると、東京側の蘆原が刈取られ、ブルーシートで覆われたバラックが露わになっていた。シートは所々千切れて風になびき、既に人の住む気配は無かった。
昨年の台風で浸水してから、住人は居を転じたのかもしれない。それを待って河原を整備しようとしたのだろうが、あの二つの大風雨は多くの人の住処を混乱させてしまった。
それでも蘆は青々と伸び、蘆汀(ろてい)の流れは元に戻っていた。やがて蘆は枯れて思いがけず刈られてしまったが、また春には芽を出すであろう。
枯蘆を稲と見紛ひ雷落つる
何処かで光った雷が、遠く上流の方で轟いていた。
(二〇二〇年 十一月卅日 月曜 陰暦十月十六日 小雪の節気 朔風払葉【きたかぜこのはをはらう】候)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?