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かたつむりのいる日常

 かたつむりが好きすぎるあまり、サイゼリヤのエスカルゴが食べにくい今日この頃、皆様御機嫌如何でしょうか(挨拶)

今まで飼ってきた生き物

 ペットというと、だいたい犬や猫がメジャーです。続いてハムスターやインコ等の鳥、あとは爬虫類(レオパとか)やカエルとか。それ以外になってくると、マニアックなものになってくる印象があります。私も動物は大好きで、猫ブームになる前から猫好きなのですが、しかし単純に好きというのと、ペットとして飼う事ができるというのはイコールではありません。飼うからには、きちんと責任を持ってお世話ができなければなりません。犬や猫はきちんとしつけの出来る生き物ですが、それでもやはり大変な事も多いです。彼らの体には毒になったり危険なものが人の生活の中には沢山あり、それらを避けなければいけない事もそうですし、出かける時には留守をさせる事になりますが、懐きまくったペットをおいて出かける事に個人的に耐えられないので、自分の場合は外出が非常にしづらくなる事が容易に想像できます。あと、基本的に「懐く」生き物は寿命を迎えたりした時のペットロスがすごそう。
 そういった訳で、自分で飼育するのは植物か、水槽の魚やエビか、虫とかそういった生き物がメインです。これは上記問題の比重が許容範囲だということ以外に、そもそも色んな生き物の生態を観察したい、という理由もあります。

 上の記事の最後に書いたように、虫趣味に回帰して以降、撮るだけでは飽き足らず飼育や繁殖に挑戦したりすることが増えました。様々な種類のバッタだとか、ハナムグリにカナブンとか、昆虫だけにとどまらずダンゴムシにワラジムシ。一時期はすぐ通える場所に汽水干潟があったので、小さなハゼとかカニとかシジミとか、海の色んな小さな生き物を飼ったりしました。特に干潟のタイドプールや転石の下には、ヨコエビを始め様々な微小生物がいてなかなか面白かったです。今はもうなかなか行けなくなりましたが。5年前に採取したテッポウエビの仲間だけは、今も元気に日々パッチンパッチン音鳴らして餌を催促してきます。

でんでんむしむし

 ……で、ちょっと前置きが長くなりましたが、かたつむりです。

関東ではお馴染み、ミスジマイマイさん

 よく、「最近あまり外でかたつむりを見なくなった」みたいな話を聞きます。これは感覚としては、多分雑木林だとかの広がるエリアが都会や住宅地では昔より減った事が理由なのかな……という気がします。街の中でも、昔からの木々やその周辺の草地が残っている場所ならば、雨の日には中型以上(2cm以上くらい)の目立つかたつむりは今でも活発に出てきますし、晴れた日でも、看板だとか墓石だとかガードレールなんかに彼らが齧った跡が残されているのが分かります。

こんなのとか
こんな感じの跡

 これは、看板とかガードレールとかの表面に付着した藻類等を、かたつむり達が齧り取って出来る食痕です。こういうのが見られる場所には、周辺にかたつむり達が潜んでいます。晴れた日にはびっくりするくらいどこにいるのか見えませんが、彼らは普段落ち葉の下とか石の隙間とか、そういうところで乾かないように引っ込んで寝ています。

 一方、町中であってもそれほど減った感じがしなくて、かなり見かけるタイプのかたつむりもいます。オナジマイマイとかウスカワマイマイ等の、大きさ1cm~1.5cmくらいのやや小型のかたつむりです。サイズが小さいこと、またちょっとした植え込みの隙間や落葉下でも繁殖しやすいことから、都会のあちこちでもたくましく生き抜いています。何なら、コンクリート塀の下のちょっと崩れた部分に生えた雑草の根本にわんさかいたりします。かたつむりには色んな種類がいますが、特に古い時代に東南アジア方面等から入ってきたオナジマイマイは全国にいますので、小型のかたつむりだと多分一番よく見るかたつむりだと思います。

\オナジマイマイダヨ/

身近なかたつむりの飼い方

 で、このシティータイプ(?)のかたつむりですが、山奥だとか限られた生息地にしかいない種類のかたつむりに比べて、とても飼育が容易です。虫かごか、コンビニのやや大きめのサラダ容器なんかでも飼えます。(後者だと換気の為に穴を開けて、脱出防止のネットを貼るとかすると良いです)
 床材はキッチンペーパーかティッシュ。これを霧吹きで湿らせた状態にして、その上に餌として野菜くず、隠れ家になる何か(卵の殻とか、アワビの貝殻なんかが便利)。餌は大抵の野菜が使えますが、かたつむりの殻はカルシウムでできていて、健康な殻を作るのにとても大事な栄養になりますので、カルシウムの豊富な野菜が適しています。おすすめは小松菜やさつまいも。理想を言えば、時々小鳥用のカトルボーン粉末(イカの甲を粉末にしたもの。インコ等のカルシウム補給用として売られている)を少量置くと、どのかたつむりもめちゃくちゃ夢中で食べに来ます。かわいい。なかったら卵の殻でいいですが、赤ちゃんかたつむりや年寄りかたつむりは歯が弱くて殻をけずり取れないので、粉末タイプの方が良いです。昔はすり鉢で卵の殻を自力ですり潰してあげてましたが、これは正直しんどいのでおすすめできません。
 餌や床材の入れ替えは毎日でなくても大丈夫。もちろん傷んだり汚れてきたら替えますが、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。何なら床材のキッチンペーパーすら食べますし、何よりかたつむりの💩はほとんど匂いません(ここ重要)。💩を再度自分で食べる子もいるくらいです。新しい餌の方を食べればいいのに……と思いますが、もともと落ち葉や他の生き物の死骸を食べて分解する役割を果たす存在でもあるので、あまり気にしていないようです。とはいえ新鮮なさつまいもを食べる時なんかは触角を垂らしてめっちゃ夢中でかぶりつきますので、味の違いは分かるようです。

オナジマイマイ:ノーマルカラー。一番多い
オナジマイマイ:茶色カラー。ややレア
オナジマイマイ:縞タイプ。結構レア

 茶色と縞模様はどちらも潜性遺伝なので子孫に残りづらく、茶色で縞模様のタイプは特にレアになります。その他、オナジマイマイとは違う種類なのですが、コハクオナジマイマイという、形はほぼ同じだけど殻の真ん中が緑がかった不透明の黄色という個性的なビジュアルのかたつむりも西日本を中心に存在します。時々野菜に付着して関東にも侵入定着してたり。

これは目立つ

かたつむりを飼う魅力、メリット

 かたつむりは基本的に貝なので、懐く生き物ではありません。あいにく意思疎通も出来ないし、当然ながら芸も覚えません。鳥や哺乳類とは異なる付き合いになります。懐いてくれる、一緒に遊ぶ、といった事をペットに求める人には向いていません。が、飼育が容易で場所を取らないことはとても大きなメリットです。また、大きさの割には結構長生きします。オナジマイマイは冬眠無しでも半年~1年近く生きます。冬眠を挟むと、もっと生きる事もあります。ミスジマイマイやヒダリマキマイマイ等の大型かたつむりになると、数年生きる事になります。今回紹介しませんでしたが、キセルガイという細長いかたつむりの仲間は、記録に残っているものでも17年間生きた例もあるそうです。
 あと、オナジマイマイの場合ですが繁殖がとても容易です。雌雄同体なので、2匹いれば連日交尾して産卵しまくります。ばらつきはありますが、孵化率、生存率もなかなか高く、何代にも渡って累代飼育を続けることができます。(増やしやすい、ということは別の問題がある訳ですが、それについては後述)
 あと、仕草がかわいいです。何を言っているんだお前は、と言われそうですが、もう一度いいます。かわいいです。ねちょねちょしてて気持ち悪い、畑の野菜や花壇の花を食い荒らすからナメクジと同様に嫌い、という人がいるのも理解していますが、やはりかわいい。(三回言っちゃった)
 かたつむりの顔には表情があります。もちろん人間とか犬猫のそれのようにはいきませんが、見ていると彼らのテンションの違いが分かります。かたつむりの触角は4本あって、上の長いのが先端に目がついていて、下の小さい方は主に匂い等を感知します。この目が付いている触角の方の位置や動きで、かたつむりの気分がだいたい読めるのです。さっきも言ったように、美味しい餌を夢中で食べる時は、ちょっと短くなって垂れ目(?)になります。

うめ、うめ

 もぐもぐと目を垂らして食べる様子は、牧場で草を喰む牛みたいな趣があります。かたつむりは漢字で「蝸牛」と書きますが、なるほど牛です。
 また、やる気に溢れた時とか活発な時は、触角がぴーんと伸びます。触角の開く角度の違いでも差があるようです。他、寝る時とかぼーっとしてる時などは、触角だけ引っ込めている時もあります。野生下なら殻の中に閉じこもっているところでしょうが、かたつむりは(なめくじもですが)見た目に反してなかなか記憶力が良いので、安全(かつ乾燥の心配がない)だと分かっていると、横着して触角だけ引っ込めて休む事が時々あります。
 かたつむりの特徴はもちろん殻ですが、この殻はとても大事なので、彼らは頻繁に手入れを行います。殻口を整える為に口で舐めたり齧って揃えたり、また殻の背中のキメを整える為に舐めたりします。結構きれい好きですね。その様子を見ていると、猫の毛づくろい見てる気分になれます。私にとっては、かたつむりは牛であり猫なのです。そして動きがとてもゆっくりでスローライフなので、見ていると和みます。かたつむりが食事をしている様子は、時間が許すならいつまでも眺めていられます。とても忙しくて疲れる現代社会、のんびりかたつむりを眺める事で癒やされます。

かたつむりを飼う際に気をつけること

 当然生き物ですから、注意するべきこともあります。
 その最たるものは、「増えすぎに注意」です。
 雌雄同体で2匹いれば、いくらでも産卵を繰り返す、と先程書きました。数日間隔、最盛期ならば連日生みまくります。一度に産む数は、小型のオナジマイマイでも30個前後、何なら40個近く産む事もあります。なので、正直に全部孵していたらねずみ算どころじゃなく収拾のつかない事になります。むやみに数を増やすことは絶対に避けなければいけません。累代するなら孵化させる数を絞り(数匹程度)、他の卵は心を鬼にして処分です。間違っても家の周りに放してはいけません。これはあらゆる飼育生物にいえますが、そうやって外に放す事は周辺環境に対して遺伝子やバランスの撹乱等の波及的な影響を与えてしまい、加えて飼育環境に付随する様々な細菌、微生物等をも一緒に外へ広げる事になってしまいますので、避けて下さい。殺処分、というと抵抗感のある人も多いかとは思いますが、動物と違って貝、しかも卵となれば比較的割り切りやすいというのはメリットではあります。
 同様に、死んでしまったかたつむりも基本的に外に置かない・埋めないようにしたいところです。ゴミとして出すのは気が引ける、そんな事はしたくない、という場合におすすめなのは、室内やベランダに植物等を栽培する植木鉢やプランターを置いて、そこの土に埋めることです。これならやがて埋められた殻や肉体は朽ちて植物の栄養になります。周囲の自然への影響も避けられます。
 その他、飼育にあたって乱獲はしてはいけません。かたつむりはそのゆっくりな動きからも分かるように、移動能力、活動範囲の非常に狭い生き物です。数を取りすぎると、どんなに沢山いる場所でも気がついたら絶滅してしまうなんてことはザラです。町中にたくさんいるオナジマイマイですらそうなので、これが生息地の限定された希少種ならば尚更論外です。日本各地で絶滅危惧種になっているかたつむりもたくさんいて、すでに絶滅してしまった種も多数です。節度を持って、大事にしましょう。

最後に

 かたつむりを継続して飼うようになって、今ではすっかり生活の中心がかたつむり基準になっています。スーパーで買った小松菜は、美味しい葉の部分は全部かたつむりのごはんになり、残った茎だけが人間の食料です。野菜くずで飼えるよ、とは言いましたが、ここまで来ると本末転倒感があります。まぁ、かたつむりちゃん達が元気ならオッケーです!


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