見出し画像

小説 オーズ Anything Goes! 12

復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい

前作から読みたい方はこちら

今作から読みたい方はこちら

前回のお話はこちら

「ちょっ、信吾さんっ!この事は火野には言わないって、約束したじゃないですか!」

「この件にアンクが絡んでいるなら、話は別だ。映司くんにアンクの事を黙ったままだなんて、俺には出来ない」

電話口の向こうから後藤さんと信吾さんのやり取りが微かに聞こえるが、俺の耳には全く入って来なかった

別の世界からアンクが来ているって、どういう事なんだろう。別の世界ってもしかして、4年前にエニグマが発動した時に見た世界のこと?

仮にそっちの世界とまた繋がったんだとして、何でアンクはそっちの世界で生きているんだ?何でこの世界にやってきたんだ?

「…ねぇ、映司くん?聞いてる?」

俺がしばらくの間頭の中で思考を巡らせていると、比奈ちゃんに意識を呼び戻された

「え、ああ、うん。大丈夫、少し考え事してて…」

俺の言葉にその場の全員が不安そうな顔で俺を見つめたが、後藤さんが電話の向こうで再び口を開いた

「まぁ、もう話してしまったなら仕方ない。問題はここからだ。実はそのアンクが世界移動をしている事が原因で時空が歪み、過去に倒したはずの怪人が蘇っている可能性がある。火野、今から画像を転送する。見覚えがあるはずだ」

後藤さんから俺の携帯端末に送られてきた画像に映っていた怪人には、確かに見覚えがあった。こいつは俺と弦太朗くんが10年前に倒した、財団Xのレム・カンナギ、超銀河王だ

あの時ミハルくんからあのコアメダルを貰ったから、俺達はこいつを倒す事ができた。だが横に映っているもう一体の怪人には見覚えがなかった

「この超銀河王やアクマイザーといった、ライダー達が倒してきた怪人が蘇っていることと、ここ最近イマジンやドーパント、ファントムと言ったヤミーに似た存在が時折街で暴れていることには、何らかの関係があると、俺達刑事は踏んでいる」

比奈ちゃんが話していた後藤さんと信吾さんが担当している極秘のプロジェクトは恐らくその事だろう。きっと俺が日本を離れている間に、二人にはたくさん負担を掛けたに違いない。俺がもう戦わなくてもいいように

「そして他の刑事達は皆、その元凶がそのアンクにあるかもしれないと睨んでいるんだ。俺は映司くんがきっと上手くやったんだと思ってたんだけど、でも違うんだもんね…」

信吾さんの言葉に俺はもう一度ポケットにある割れたアンクのコアメダルを握りしめる。俺はどうすればいい?俺は心の中でアンクに尋ねた。知るか、お前ならきっとそう言うよな

「火野、俺達は明日にでもアンクを探し、元の世界に帰ってもらうよう説得するつもりだ。しかしアンクがまたグリードの力を利用するとなれば、他の刑事達は黙っていない。アンクを攻撃することになるだろう」

「お兄ちゃんも後藤さんも、ちょっと待ってよ!そんな勝手に話進めたら、映司くんが…」

俯く俺を心配して比奈ちゃんが声を上げたが、俺は笑って顔を上げて比奈ちゃんに言った

「比奈ちゃん、いいんだ。後藤さんも信吾さんも、気にしないでください!でも…でも、後藤さん達が会うよりも前に、俺だけでアンクに会う時間を貰えませんか?もしアンクがグリードの力を使った時には、俺が止めるので」

「でも火野、変身できないんだろう?」

そうだ、俺はミハルくんに貰ったコアメダルも含めて鴻上さんに全てのコアメダルを預けていた。そういえば、それらも一緒にヨーロッパに持って行ってしまったのだろうか

「はい。でも俺にしか出来ないことは必ずあると思うんです。世界が違ってもアンクはアンクだし、それにアイツとは戦い慣れてますから」

しかし俺の笑みを吹き飛ばすように、ずっと黙っていた伊達さんが呟いた

「火野、お前、この10年何学んできたんだ。誰にも頼らねぇって事は強いって事じゃねぇ。俺はそう言ったはずだぞ。もっかいよく考えろ」

確かに昔の俺ならこのまま一点張りだった。伊達さんの言う通りだ。俺はあの日、欲しかったものをちゃんと手に入れられたんだ。俺は伊達さんの目を見て頼んだ

「じゃあ、もし俺が無理そうだった時は、後藤さんや伊達さんにも手伝って貰いますね!」

「分かった、俺からも警視庁の皆にそう伝えておく」

「おい火野、名医のギャラは高ぇからな!」

そういって後藤さんと伊達さんは俺の考えを受け入れてくれた

「私もお兄ちゃんも、知世子さんも里中さんも、みーんな映司くんの力になるからね!」

その様子を見ていた比奈ちゃんは笑ってそう言ってくれた。本当に俺は恵まれているな。欲しい物が何でも手に入っていた、父さんと過ごしていたあの頃より、今の方が比べ物にならないくらい充実している

「よし、それじゃあ明日の朝、全員クスクシエで集合しよう。それまでに進展があったら連絡する」

そう言って電話が切れた。俺は心の中で再びアンクに尋ねた

『なぁ、アンク。お前はお前の偽物を凄く嫌っていたけど、今回もお前はそう感じるのかな』


次の日、アンクSide

万丈龍我に連れられ、俺と黒い男、緑の男は薄暗い研究室に案内された。至る所に貼り紙が張ってあり、緑の男は興味深そうにそれを読んでいる

「おい、戦兎。言ってた奴ら、連れてきたぞ」

万丈龍我が卓上でパソコンを触っている男に声を掛ける。男は椅子から立ち上がり、俺たちに尋ねた

「なあ、この筋肉バカ、ちゃんと仕事してた?」

筋肉バカ?あぁ、万丈のことか。確かによく見るとこの研究室の端に部屋に似つかないトレーニングマシンが置いてある。男の言葉に黒い男が返事をした

「いや、俺が見る限りは全然売れてなかったけどな」

「う、うるせぇよ!大体あんなガラクタ売れるわけねぇだろ!勝手にノルマとか設定しやがって!」

男が笑って此方に近づくと、自己紹介を始めた

「俺は桐生戦兎、仮面ライダービルドだ。創る、形成するって意味の、ビルドだ。以後、お見知り置きを」

「僕はフィリップ、翔太郎と一緒に探偵をやってる仮面ライダーダブル。そして彼がその依頼人だ」

「俺たちの依頼はこいつ、アンクを万丈龍我に会わせることだったから、依頼自体は完了だ。だが、俺の仲間がお前らが別世界のライダーだって言ってたもんでな。詳しく話を聞きたくて、万丈龍我に連れてきて貰ったってわけだ」

事情を理解した男は、俺達に奴等の身に起きたことを話した。黒い男はさっぱりわかっていなさそうだったが、緑の男は納得していた様子だった

「成程、つまり君達の居た世界、Aの世界と僕達の居る世界、Bの世界は君達の手によって重なり合い、新たなCの世界に創り変えられていたというわけだね。実に興味深い」

「話が早くて助かる。あなたとは気が合いそうだ」

「俺が前に万丈龍我にあった時、目の前に浮かんでいたもう一つの世界。あれこそがお前らの言うAの世界だったってわけか」

俺の質問に男が首を縦に振る。しかしそこで緑の男が俺に余計な事を聞いてきた

「君の話を整理すると、元々BやCの世界ではない別の世界に居て、そのタイミングでBの世界に居る夢を見た。しかし実はそれが現実で、そして昨日このCの世界に降り立ったと、そういう事であってるかい?」

「待ってくれ、別の世界からこの世界に降り立ったって、どういうことだ?それにどうやって?おい、万丈。聞いてないぞ」

「俺も知らねぇよ、今初めて聞いた」

何でもかんでも話す緑の男に苛つきながらも、俺はバースドライバーXと手持ちのコアメダルを男に見せつけた

「これを使って俺はこの世界にやってきた」

男は飛びつくように興味を示し、まじまじと眺めている。あの日の鴻上のようだ

「このメダル、これは確かオーズが変身に使うアイテムだ。でもこのドライバーはオーズのものではない。現代の科学では解明できないシステムが組み込まれている」

「そもそもコアメダルは800年前、錬金術を元に作られたものだ。そしてそれは俺も同じ、俺は元々コアメダルを元にして作られた存在だからな」

俺は目の前で右腕をグリード化させ、すぐに戻した。すぐに戦闘態勢に入ろうとした万丈龍我を黒い男が止める

「安心しろ。アンクは悪い奴じゃねえ」

「それに、人間ではない要素を持っているのは僕も、そして君も同じだろう?万丈龍我」

万丈龍我が人間ではない要素を持っている?こいつも俺のように怪人だったり、緑の男のようなデータの塊だったりするんだろうか

「やっぱり、あなたは凄い。こいつ、火星人なんだ」
「あ!?ちげぇよ!流石に語弊あんだろ、それ!」

男は再び俺に視線を向ける

「別世界、錬金術。気になる事はたくさんあるけど、それは一旦いい。アンク、万丈から聞いたが、お前の目的はオーズを救う事、なんだよな?」

俺が頷くと、男が話を続ける

「世界ってものはある程度バランスを保とうとする物なんだ。だから基本的に2つの世界が接触する時、何かしらの異変が起きる事は多い。そしてそれは今回も例外ではない。アンクがこの世界に降り立った事で、必ず何かの異変が起きているはずだ」

「俺にどうしろと?映司を救うためだ、俺はこの世界から退くつもりはない」

「それなら策は1つしかない。現実的ではないが、アンクの元の世界とこの世界を融合させて、また新たな世界を創る」

元の世界との融合、つまり元の世界の比奈の奴や信吾達とまた逢えるということだろうか

「でもよ、戦兎。エニグマも白いパンドラパネルもねぇんだぞ。そんな状態で、そんな事出来んのかよ」

「それは分からない。そもそも世界の融合が正しい答えなのかも分からない。アンクに元の世界に帰ってもらうことの方が間違いなく現実的だからな。でも本人がそれを拒むんだから、何とかするしかない」

さっきこいつが言っていた世界の異変。もしそれが俺の見た夢に繋がってるんだとしたら、やはり俺がこの世界に来たことがきっかけで映司は死んでしまうのだろうか

俺がこの世界を退くことが映司を救うことに繋がるのなら、本当はそうすべきなのかもしれない。だけど、俺は…

「アンク、世界を融合させる方法を探るのに少し時間をくれ。このドライバーとメダルも少し調べたい。貸してくれるか?」

「この3枚は渡せない。こいつにエネルギーを充填できるのは映司だけだ。だが俺にはまだ力を失ったメダルがある。こっちなら貸してやるよ、あってもなくても、今はセル同等の力しかないからな」

元エタニティメダルを渡すのは、力の激減に繋がると考えた俺は一旦それらを自分の体内に投げ込み、代わりにエネルギーを失った5枚のコアメダルを渡した

「ありがとう、もし力を復元出来そうなら、やってみる。という事なんだけど、ダブルのお二人は今の結論に納得出来るか?」

「あぁ、俺達は映司に何度も世話になったからな。映司が救える方法でアンクが納得してんなら、アンクの好きなようにすりゃいいさ」

「世界の融合を意識してる中で見られるかもしれないのは非常に興味深いから僕も賛成だよ。ただ、僕と翔太郎は一旦ここでお別れみたいだねぇ。照井竜から合流したいと連絡を受けた」

照井竜、あの赤い仮面ライダーか

「フィリップ、悪い。俺はテディと合流する約束をしてるから、弦太朗の所に向かうんだ。照井の方は任せた。取り敢えず依頼は完了だが、何かあった時のために俺とフィリップの連絡先を教えておくぜ。んじゃ、またな、アンク」

「あ、万丈、お前もマーケットに戻れ。早く全部売ってこいよ〜」

「はあ!?また行かなきゃなんねぇのかよ!ったく面倒くせぇな…おい、待ってくれ!俺も行く!」

そういって緑の男と黒い男と一緒に万丈龍我までもが部屋を立ち去り、部屋には俺と男だけが残った。しばらく沈黙が流れたが、奴がそれを破った

「オーズの変身者、映司って人さ、アンクが万丈に会ったエニグマ事件の時に万丈を助けてくれた人なんだってな。万丈がそこで死んでたら、俺はそもそも今ここに居ない」

「お前が俺に協力する理由は、映司に恩返しがしたいからなのか?」

「それもあるけど、俺や万丈が戦う理由は昔からずっと愛と平和、ラブアンドピースのためだ」

よくそんな恥ずかしい台詞を言えたもんだ、そう思いながら男を見ると、奴は妙に嬉しそうに笑っていた

「何処へ行く?今はあんまり外に出ない方がいい。下手に動くと異変のきっかけになりかけない」

俺が椅子から立ち上がると男に呼び止められたが、振り向かずに答えた

「少し風に当たりに散歩するだけだ。すぐ戻る」

そういって俺は部屋を出た。ここに来るまでの間、近くの公園を横切ったはずだ。俺はその場所へと向かった


その数時間前の午前9時、デンライナー

「それで、皆オーズを見つけられずにここに帰ってきたと。やっぱりオーズではなく、アンクから探した方が早いかもしれないな。テディ、アンクは大天空寺に向かったんだっけ?」

「あぁ、もしゴーストが仮に違うとなれば、アンクくんの探していた仮面ライダーはクローズということになる。その時はもう既に移動しているだろう」

「じゃあ俺が先輩に連絡取ってみるぜ。後で天高に来て貰うように掛け合ってみるから、それまでは皆ここから動かない方がいい」

如月弦太郎の言葉に湊ミハルとミツルくん、駿くんは全員黙って頷いた


同刻、クスクシエ

「後藤くん、照井刑事達はなんて?」

「はい、一応納得はしてくれましたが、何かあるかもしれないと、今アンクが一緒に行動している照井刑事のお仲間とだけ合流するために連絡を取っているそうです」

俺が信吾さんと話していると、伊達さんが話に入ってきた

「ってことは、アンコは一人になるってわけだな」

「はい。そういえば、比奈ちゃんは?」

「比奈、昨日の夜と今日一日ずっと店に不在になるのは店長としてまずいって、出勤して行ったよ。何かあったら連絡するからこっちの事は任せろって、俺から言っておいた」

比奈ちゃんも大変だなと思いつつ、まだ火野が居ないことにも気付いた俺は知世子さんに尋ねる

「知世子さん、火野は…?」

「きっとまだ上で寝てるのよ。アンクちゃんのこと、昨日もずっと考えてたんだろうし」

しかし様子を見に行った里中が叫んだ

「皆さん!火野さんが居ません!!」

火野は俺達の話を聞く前に、クスクシエを飛び出していた


公園に到着した俺は暫くの間ベンチで横になって目を瞑っていた。お前が死ぬ運命を辿る事が世界の異変なのであれば、お前を救うには桐生戦兎の言う通り、俺が元の世界に帰るしかないのか?

「───ンク…?アンク…!ねぇ、アンク!」

そんな時、聞き馴染みのある声が俺の耳を刺激した

「おい、アンク!起きろって!」

俺は眼を覚ました。何故ならその声の主は

「おはよう。やっと、逢えたな…今日、この日が…俺とお前が居る明日…だったんだな、アンク」

そう、俺の視線の先に居たのは、お前──映司──だったからだ


次のお話はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?