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【詩】下壇のひと

ジャンクヤードの、倉庫の中に
ガラクタに紛れた、美人が一人
赤い着物に、傘さして
ちょいと首を、横に傾ぐ
すっと結い上げた髪の下に
覗くは白く、綺麗な頸

かつては人を、魅了したろう
誰かの家の、何処かの上
箪笥か棚の、小さな舞台で
きっと切長、憂いを帯びた
人誘う目を、舞台下に

それも幾年前の事か
肌は黄ばみ、髪は乱れ
傘には穴も、空いたりしている
悲しき、趨勢移ろう中で
舞台降ろされ、老いてしまったか

あの薄暗い、倉庫の中の
埃に塗れた、綺麗なひとは
今も誰かを待つように
通りに背をむけ、肩越しに
哀しげな目を、向けている
いつか再び、舞台に上るか
燃え盛る炉の、薪にされるか

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