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Gift 05 〜 愛していないのに愛しているかのような行動を求められたら?

Gift 03で「形のないものが原因で、行動は結果」と書いたように、私たちがどのように動くかは「想い」によって決まります。その源泉である愛を封印すれば、当然、あらゆる行動から原因が失われてしまいます。

それはすなわち「どこまでやるか?」「なぜそこまでやるか?」の目的や動機をもたずに、日々のロールを手がけるということでもあります。これが何を意味するかは、あなたもよく知っているはずです。

私は真っ先に、大差のついたスポーツの試合で見せる「気のないプレイ」や、家族からの依頼をいやいや引き受けるときの「やっつけ仕事」を思い出しました。心の片隅では「できればしっかりやりたい!」と感じています。頭でも「ここで手を抜かないほうがいい」とわかっています。それでもやはり、想いという原動力をなくした身体は、まるで鉛のよろいをまとったように重くなってしまうのです。

これによって、私たちはかなりやっかいな問題に直面します。そんな事情などお構いなしに、職場でも家庭でも、依然として質の高い成果を求められるからです。

愛さえ使えれば、それぞれの状況に呼応して自然と「形のないもの」が発揮され、身体も最高のパフォーマンスを出すことに快く賛成してくれます。けれども、前話で見てきたとおり、何層にも積み重なった微かな怒りはそれを強く拒みます。

だからといって、いまさら上司やパートナーに「あなたの数年前のひと言にいまもカチンときている。だから私はそのようには動きたくない!」と訴えるわけにもいきません。

そこで、私たちは、形のないものや愛など最初からなかったことにして、

「あらかじめ、依頼主と仕上がりの質を合意しておき、文句を言われない結果を淡々と出し続ける」

という苦肉の策を発明しました。

想いの代わりに、頼む側と請け負う側のあいだで交わした取り決めを、行動の目的や動機にするということです。これなら「形のないもの」の有無を気にせずにすみます。

加えて、誰が何をすべきかの「分担」をきっちりと決め、どのように動くべきかの工程も記した「マニュアル」を用意すれば、心がどうであれ、一定の成果を期待できるようになります。

この「行動と想いを完全に切り離す」やり方は、愛を使いたくない人にとって、むしろ望ましい選択のように見えました。微かな怒りが解消されないまま「もっと気持ちを込めろ!」と要求されるくらいなら、結果がすべてと割り切ってもらうほうがまだ楽な感じがするからです。

ところが、その代償として、私たちは何かを手がけるたびに疲弊し、本来、人生を彩るはずのロールに耐えがたい苦痛を感じるようになってしまったのです。

なぜならば、ここでは、

「本当は愛していないのに、まるで愛しているかのように行動する」

という、かなり無理のあるいびつな振る舞いを自分に強いることになるからです。

私たちにとってそれがどれほど辛いかは、Gift 03で書いた「来客に一杯の飲み物を出すロール」に当てはめてみればわかります。先の話とは違って、今回は、過去の経緯からパートナーの両親にいくつもの怒りを抱いているとします。言うまでもなく、愛を発揮する気など少しも起こりません。

それでも、パートナーはあなたのとなりでしっかりと目を光らせています。いくら義父母が好きではないといっても、あとから「あの人は常識がない」などと酷評されてはたまりません。結局は、グラスを選んだり、丁寧にお茶を注いだりしながら、ありったけの愛を使うのと同じ行動をすることになります。

たまたま、その時間にパートナーが不在なら、事前に「失礼のないお茶の入れ方」を細かく伝えられているかもしれません。彼らをまったく愛していないのに、その指示に沿って忠実に動く自分の姿を想像するだけで、私は心が苦しくなりました。おそらく、何もかもが面倒で、不愉快で、ずっと苛立いらだちを抱えたまま、最後には屈辱さえ感じると思います。

私たちが「ストレス」と呼ぶ辛さの原因もここにあります。愛を封印した心は間違いなく「それはやりたくない!」と叫んでいます。にもかかわらず、身体はそれなりに質の高い仕上がりを目指して動こうとします。この、両腕を反対の方向に引っ張られているような葛藤が、私たちの心身に強い緊張をもたらしているのです。

愛を使えていたとき「どこまでやるか?」「なぜそこまでやるか?」の答えは、つねに「私の内側」から生まれていました。ところが、動く目的や動機を、想いから「依頼主との取り決め」に置き換えた瞬間に、同じ問いの答えが「私の外側」に追いやられてしまいました。やはり、両者の違いは、私たちが想像するよりもはるかに大きかったのだと思います。

もちろん、これだけの厳しい状況を放っておくわけにはいきません。すでに、愛が使えずに手を抜いてしまう問題は「想いがあってもなくても、約束どおりに結果を出すのが常識!」と受け入れる第一の対策で乗り切りました。ここからは、それによって生じた辛さや葛藤にどう向き合うかの課題に挑まなくてはなりません。

第二の対策として、私たちはまず「未来」という名の、実際には存在しない仮想の時間に注目しました。そのうえで、

「現在の行動は、すべて未来の目的を達成するための手段である!」

と考えることにしたのです。

(次章に続く……)

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