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進路と親権の話

医学部受験を9浪させられた娘が母親を殺害した事件がありました。教育虐待の果てに親子は不幸な結末を迎えます。

精神障害で心を病んで入院する人は進学校、有名大学出身者が多いそうですが、この事件も教育虐待の弊害でしょう。

親が子に与えられる最大の資産は教育です。しかし、教養というよりは学歴が出世や社会的地位に直結するため、子供に試験で高い成果を強いる親もいます。

ここでは進路の設定にあたって、第三者機関が入り、子供と話をかさね、当人に相応しい進路を決めるべきだ、ということを私は提唱します。

医学部受験を、ということですが。何かしら志(こころざし)があって、医者になる、というよりは、国家公務員や弁護士や大企業の正社員よりは安定して、給与も高く、社会的な地位もある医者にさせるため、医学部に子供を合格させたい、そうした希望を持つ、保護者がいるのでしょう。

ただ、医学部入試は難関であり、医学部受験は5浪、6浪も珍しくありません。私が学生のころの知ってる範囲でも、医学部受験を多浪したあげく、不合格を重ね、最後は工学部で妥協した人々がいたものです。

しかし、親によっては我が子を何としてでも、医学部に、と考える親もいて、なかには狂気じみた虐待をしてしまう親もいます。そして、たまりかねた子供が親を殺害してしまうと。

私は提唱します。進路を決めるのは当人であって、親ではないと。

県外に行く、県内にとどまる。どの大学の、どの学部を受験するか。浪人するか、しないか。それらの決定権は子供にあると。

親の意向で進路を決め、子供がそれに反対しても、従わせることは親にはできないのだと。子どもの人生は子どものものです。

「言うことを聞かないと、学費を出さないぞ」と、子供に進路に関して、親に従わせようとする、そうした親もいるでしょう。

こうした親がいれば、親子は分離すべきだし、そのうえで、子供の学費、その他、医療費や生活費など、支払いを親に義務化、強制徴収するべきです。

我が子を医者に、ということですが。まず、医療という業界は医者だけで成り立っているわけではありませんよね。看護師がいて、医療事務がいて、製薬、医療用の器材や資材の製造、販売に係る業種の人々がいて、病院建設に特化した建設会社や、医療現場で使われるパソコン、そのソフトウェアを開発する業者なども含めて、医療という業界が構成されているわけでして。あなたの子供が医者になる必然性はなんですかと。

進路コンサルで触れましたが、進路の決定は親ではない、専従の第三者機関が当人と話を重ね、あたること、将来、政治家になりたい、国際公務員になりたい、そのために何をしなければならないのか、必要な知識、情報を伝えるべきです。

親からすれば、自分が偏差値40代の大学だったから、自分の子供にはそれ50以上の大学を目指してほしいとか、自分は医学部を目指していたけど、合格できなかったから、自分の子供には医学部に入ってほしいとか、自分がなしえなかったことを子供に託す傾向があるでしょうが、繰り返します、子供の人生は子どものものです。

そして、強調したいのは、子供の成績が学年で最下位だろうが、1位だろうが、どの子も等しく親から愛されるべき、であると。

トロフィーチャイルドという表現があります。自分の子供の学歴を自慢する親。子供といることが嬉しいのではなく、子供の学歴を周囲に披見することが嬉しいのだと。お前に用があるのではない、お前の学歴に用があると。

高校進学校でも無断で遅刻、中退する子がいます。国立大学でも、授業に出なくなる生徒がいます。こうした生徒には様々な事情があるでしょうが、親子の関係を振り返らなければならない生徒もいることでしょう。

愛情とは相手を知ること、だから、愛される、というのは、自分に関心を持ってもらうこと、ですよね。しかし、親の関心は子供の学歴、偏差値にしかない。子供自体には関心がない。そうした親の本性がわかるにつれて、子供は意欲を失うのでしょう。

当然、こうした親からは子供を離さないといけない。無自覚のうちに子供を苦しめる親はいます。冒頭で書いたように精神障害になる人は進学校出身者に多いのです。

全て、子供が高い成績を取り続けるわけではありません。たとえ、私立中学に合格しても、そこで成績は上位、中間、下位、と別れていきますし。果たして、成績が下位になる子もいる。しかし、子供からすれば、高い成績を取らなければ、親から愛されない、認めてもらえない、という強迫観念がある。その結果、やがて、心を壊す子も出てくるのでしょう。

あらためて、親権と子供の進路、子供の人生について。子供には子供の人生があります。親が子供を不幸にするだけなら、その子供はその親と離れるべきだし、そのための便宜は社会が図らなければなりません。この辺りは「育児の社会化」と関連してきますが。

子供がどこに住み、どの進路を選択するのか、それを決定する権限を親からはく奪すること。また、子供の学費や養育費、必要であれば、医療費や介助費用、そうした各種支援も含め、社会で面倒をみないといけません。

せっかく、進学しても、親が学費を出さないと、経済的虐待をしてくる親もいますので。このあたりのことは次回、取り上げます。





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