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「花束みたいな恋をした」を観て、本読まないとなぁと思わされた話

映画「花束みたいな恋をした」を観てきた。

日本映画を見ることは稀で、それが更に恋愛モノの映画となれば……いつぶりだろう。高校時代に見た「恋空」以来かもしれない。

公開がアナウンスされた時は全く見るつもりがなかった。人気俳優、人気女優を主役においた話題性たっぷりの映画だろうと思っていた。が、たまたまYouTubeで流れた映画の広告(予告)を見て、なぜかグッと惹き込まれた。

予告を見る限り、どうやら甘々のハッピーエンドではないらしい。主役ふたりの演技も凄い(らしい)。そういう訳で、数年ぶりか十数年ぶりかわからない恋愛映画を見るために、劇場に足を運んだのである。

感想としては非常に面白かった。非常に面白かったので、この数日後にもう一度、映画館に足を運んだ。

なんでこの映画がここまで話題になるのかって。たぶん「共感」なんだろうなぁ。

「あ、その経験ある!」とか「元カレ(元カノ)と静岡でさわやかハンバーグ食べたなぁ」とか「ゴールデンカムイ好きだったなぁ」とか。作中にちりばめられた、そんな「あるある」によって、作品にグッと引き込まれる。

さらにいうと、誰しも少しは当てはまるであろう、20代前半のあるあるエピソードのオンパレードによって、絹と麦の物語からいつしか映画は「自分の物語」だと錯覚までしていまう。そうして、最終的に「面白い映画だねぇ」となる。かくいう私も共感する場面が多かった。

絹と麦ほどサブカル属性は強くないが、高校〜大学〜社会人3年目くらいまでは、本が好きだった。学校帰りや仕事終わりに、阪急梅田の紀伊國屋書店に寄っては、面白そうな文庫本を買い漁っていた。

「Amazonで買えばいいじゃん」といえばそうなんだけど。書店の中を歩いて、まだ見ぬ本と出会うのが楽しかった。ネットは目的買いになりがちだし。

「社会人3年目まで」と書いたのは、その頃からちょうど仕事が忙しくなり、本を読む時間が少なくなった。入社当初は、仕事終わりによくレイトショーに行っていたのだけど、社会人3年目くらいから行かなくなった。

作中でも、彼氏の麦が就職して本や映画から離れていく姿が描写される。仕事が忙しくなったのか、趣味嗜好が変わったのか、それが大人ということなのか。理由はいろいろあると思うけれど、曰く「パズドラしか楽しめなくなった」という。

就職を機に芸術や文学と離れていく姿は、自分とどこか似ていて、なんとなく惹き込まれた。共感ポイントを挙げれば、枚挙に暇がない。作中には、誰しもの過去をくすぐるエピソードや発言が多い。

そういうわけで。1回見て、面白いなぁ、と思っていたのでもう一度観に行った。上映プログラムの関係で、1回目はTOHOシネマズ梅田の第1スクリーン(1番大きいスクリーン)で見れなかったのも、もう一度観に行った理由。

2回目は人が空いているレイトショーを選択。TOHOシネマズ梅田の第1スクリーン。大好きなジョンソンヴィルホットドックを買って観た。ストーリーを知っている分、主演のふたりの演技や冒頭から怒涛に押し寄せる伏線を回収しながら観た。やっぱり面白かった。

この映画を見た多くの人は、過去の恋愛を懐かしんだり、いまの恋愛を見直したり、これからの恋愛を思い描いたり。そんなリアクションをする人が多いと思う。

ただ、私の場合、映画を見終わった後の感想は「本、読まないとな」だった。

というのも、就職を機に文学から離れて仕事脳になっていく麦の描写が、ことさら響いたのである。

「もうパズドラしかやる気が起きないんだよ」「もう今村夏子の『ピクニック』を読んでも何も感じないかもしれない」「(取引先の偉い人に土下座させられたという話の流れで)嫌じゃないよ、仕事だから。生きていくためには必要だから」。

そんな作中の台詞がことさら響いた。

私はいまフリーランスなので、一般的な会社員(サラリーマン)の苦悩は分からないけれど、最近は仕事一辺倒になっている。映画を見に行ったのも久しぶりだったし、エンタメ情報にも疎くなったし、書店に足を運ぶ回数もぐっと減った。そして、自宅にある数百冊の文庫本は埃をかぶっている。

そんな状況だったので、仕事ばかりじゃいけないな、このままだと心が擦り減っていくな、と思わされた。

ゆえにエンドロールの最中には「本読まないとな・・・」という想いが真っ先に浮かんだのである。

おしまい。


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