アウトドアではご用心

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                       2020/06/05 第573号
          ☆★☆ TIPS通信 ☆★☆
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【 アウトドアではご用心 】

こんにちは。身近な自然観察アドバイザーのmimosaです。

今年の春は、草花や新緑を自由に楽しむこともままならず、気がつけば、桜の時期はとうに過ぎ去り、若葉は濃い緑になり、明るい日差しに包まれた野山は、早くも初夏の気配です。私たちが家にこもっている間に、季節は巡って、生きものたちはいきいきと成長したり、活発に動き回ったりしています。

在宅勤務が続いて、そろそろ屋外の業務に出たいと思っていたところ、希少なラン科の植物の調査に行くことになりました。現場に着くと、今年はマイマイガの毛虫(幼虫)が大量発生しているとのことで、周辺の植物、山道など、あらゆる場所に毛むくじゃらの愛嬌のある顔をした毛虫が無数にいました。毛虫たちは、そこらじゅうの草や木の葉を食べつくさんばかりです。

森の中では、耳を澄ますと、ぷちぷちぷちと、地上の草木や地面に何かが当たる聞き慣れない微かな音がずっとしています。何だろうと思っていたら、なんと、毛虫の糞が降ってくる音でした。もちろん、糞だけでなく、毛虫も降ってきます。常時腕や背中などに2~3匹の毛虫が這っていましたが、マイマイガはドクガ科でも毒はないとのことで、体質にもよると思いますが、触ってもかぶれることはありませんでした。また、調査対象のランも無事であったのは幸いでした。毛虫の多くは毒がなく、知らずに触ってしまったとしても問題ないようですが、イラガやチャドクガなど一部の毛虫には皮膚炎を起こすものがいるので、注意が必要です。

里山保全の活動地を、久々に担当者のみで様子を見に行く機会もありました。市民ボランティアさんたちの活動は3月から休止中です。継続して刈り取りなど管理している観察路はササ類が伸び放題で、すっかり草に覆われていました。里山の自然環境は、人の手が入らなくなると、近付きづらい場所へとすぐに戻ってしまいます。人の営みも含めての生態系が、美しい景観を保っているのです。

膝丈ほどのササ類に覆われた道を進んでいると、「ダニが多いので、注意してください。ササを踏みつけるようにして進むといいですよ。」と、声をかけられました。その直後、足に刺すようなチクリとした感覚があり、通り抜けた場所でズボンの裾を上げて足をよく見ると、靴下の足首部分に、ぺたりと4ミリほどのマダニがはりついていました。少々焦りながら、ダニを指で弾き飛ばして、ほっと一安心です。

この日、私の服装は、いつも通りのアウトドア用の長袖シャツ、長ズボン、帽子、手袋を着用し、首にはタオルも巻いて、肌の露出が少ない、野外での基本スタイルでした。ただ、長靴に履き替えるのを忘れて、ズボンの裾を靴下の中に入れてもいなかったため、足元にマダニが入りこみやすい隙間がありました。久々のアウトドアとはいえ、油断は禁物です。

マダニなど野外に生息するダニについても注意が必要です。ダニがウイルスや細菌を保有している場合、咬まれた人が感染症を発症することがあり、発症後に治療が遅れれば、重症化や死亡する場合もあります。近年、マダニ媒介感染症である日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などの発症数が増加傾向で、自治体などが注意を呼びかけています。

マダニ媒介感染症には有効なワクチンはありません。これからの季節は登山やキャンプ、畑作業など野外へ出かける機会も増えますが、その前に、ダニに咬まれないためのポイント(前述の肌の露出を少なくした服装など)や、ダニに咬まれたときの対処法(無理に引き抜こうとせずに医療機関で処置するなど)を確認しておくことは大変重要です。とくにシカやイノシシなど野生動物が多い地域ではダニも多いことが知られています。

毒のある毛虫やマダニ以外にも、スズメバチ、マムシ、ヤマビルなど、アウトドアでは注意しなくてはならない生きものが多く生息しています。だからといって、私は出かけるのをあきらめる気にはなりません。緑のグラデーションの美しさ、季節ごとの花、風のおと、鳥のさえずりなどの出会いや発見が、いつも私の中の何かを整えて、元気にしてくれるからです。

街中や日常のコロナ渦から一時でも逃れて、リフレッシュすることは大切です。野外においても基本の注意を怠らず、予防対策をしっかりしたうえで、のびのびと楽しみたいものです。

こちらでしっかり確認を!
厚生労働省ホームページ「ダニ媒介感染症」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164495.html
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