廃用症候群について
こんにちは。健康生活アドバイザーのだんごママです。
病院薬剤師の仕事中に、治療対象になる疾患名に「廃用症候群」と書かれた処方箋を見かけるようになりました。成人病の治療薬を服用していた記録もなく、動けない状態が続いているということはわかるのですが、老衰と何が違うのかわからなかったので調べることにしました。
廃用症候群は安静が必要な状況になったことがきっかけで全身の機能に様々な影響が出た状態のことです。老衰の加齢に伴う筋肉量の減少によっておこる状態とは区別されています。ほかにもサルコペニアやフレイルという状態もありますが、サルコペニアは筋肉だけを対象とし、フレイルは身体機能の衰えだけではなく、心理・精神的な衰えや社会性低下も関係しています。
廃用症候群は、1950年ごろに提唱されていた身体の不活動状態により生ずる二次的障害として体系化された概念で、不動や低運動、臥床に起因する全身の諸症状です。内的要因として、疾患に付随した身体症状、精神症状により不動の状態が続く場合(麻痺、疼痛、息切れ、うつなど)と、外的要因の外部環境が身体活動を制限しているために不動が続く場合(ギブス固定、安静の指示、介助者の不在など)があります。症状の出方として多様な状態が報告されています。
1. 筋骨格系
筋力低下、筋萎縮、骨委縮、関節拘縮(かんせつこうしゅく)など
2. 循環器系
運動耐容能低下、起立性低血圧、眩暈(めまい)、失神、静脈血栓症など
3. 呼吸器系
肺活量の低下、細菌感染による肺炎など
4. 消化器系
体重減少、低栄養、食欲低下、便秘など
5. 泌尿器系
尿路結石、尿路感染
6. 精神神経系
うつ、せん妄(もう)、見当識(けんとうしき)障害、睡眠覚醒リズム障害など
高齢になればなるほど誰にでも表れてくる症状です。しかし、私の義理の弟(50代後半)が一時期廃用症候群と診断されたことがあります。もともと腎機能が悪く、透析治療も選択肢の一つという状態です。少し無理をしたため、痛風の痛みが増し、横になっている時間が増え、必要最低限の動作になり、2週間後には松葉づえがなければ体を支えられなくなりました。50代で95歳の父より動けなくなって初めて事の重大さに気付き、プロの指導を受けリハビリを始めました。少し動けるようになると温泉施設の歩行湯(松山市内の温泉施設には併設されているところが多数あります)を利用し、2か月後には自転車にも乗れるようになりました。
安静臥床のままでは、1週間で10~15%の割合で筋力低下が起こり、3~5週間で50%の筋力低下が起こると言われています。コロナに感染して隔離療養後に、疲れやすく動くとすぐ息切れを起こすといった後遺症が報告されています。日常生活に戻れない方の中には、適切なリハビリの必要性を知らず、廃用症候群の状態から抜け出せないままの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
廃用症候群の悪循環を断ち切るには個人によって違いますが、家族の協力や理解、自力で動くための環境整備、地域社会とのかかわり、適切なリハビリや運動が必須条件となります。回復するための条件がそろったとしても、元の状態に戻るには廃用症候群に陥った倍の期間が必要になります。きっかけは、風邪を引いたとか、寒い時期に外出が減ったとか、家族の同居に向けて住居が変わったとか、誰にでも起こりうることです。
廃用症候群は回復よりも予防に気を付けることが一番です。心臓バイパス手術を受けても8時間後にはベッドから起きて椅子に座るリハビリが始まり、翌日には歩行訓練が行われています。体調の悪い時には安静第一ですが、あまりいたわりすぎると高齢者だけではなく若年層でも廃用症候群に陥る可能性があることを覚えておきましょう。
参考サイト
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/haiyo-shokogun.html
公益財団法人長寿科学振興財団 高齢者の病気より