たもち続けたい

やりがいがなくてもいいんですよね。
やりがいになることって見つけにくいです。

寺地はるなさんの『カレーの時間』を読みました。


『「べつに、仕事に『やりがい』なんて持たなくてもいいんですよ、佐野くん」
あれは新谷さんが館長になった直後だった。昼食を一緒に食べた時に、そんなふうに言われて、びっくりしてカウンター席でアクリル製のパネル越しに新谷さん顔をじっと見返してしまった。
「え、いいんですか?」
「ま、仕事をいきがいにする人もいますけれど、すべての人がそうである必要はないんじゃないかな。生活のためにしかたなくとか、推しのためにお金を稼ぎたいとか、それぞれがぜんぶ立派な働く理由ですよ。『お金を稼ぐ』以上のやりがいとか、洗練されたプロ意識みたいなものを労働者全員が持つべきだなんて馬鹿らしいですよ。とくに雇う側がそれを要求してしまうのはもう、一種のホラーですよね、ホラー」
佐野くんぼくはね、と新谷さんはその日、めずらしくよく喋った。
「昔はよかったとか、昔の男は強かったとか、そういう言説が大嫌いなんです。過ぎ去った時代を生きた人びとの物語りっていうのはたいてい美しいんです。だって、遠くにあるから」
ぼくたちがいるのは今、ここであって、と続けて、新谷さんは薄く微笑んだ。
「昔より恵まれているとか、マシだとか、もしくはダメだとか、甘えてるとか言われてもね。タイムマシンで行って検証できるわけでもなし。過去には戻れない。ぼくたちが行けるのは明日より先の未来だけだから」』


やりがいって大事だけど、ずーっとやりがいがある!って思えるかっていうと、そうでもない気がします。

やる気があったほうがいいのですが、ずーっとモチベーションを保つのは難しいです。
小さく、長く、気持ちを保ちたいです。

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