ゆっくりときいてくる

おくすりがほしい。
おちこんだときに効くおくすり。

飯塚めりさんの『喫茶の効用』を読みました。

『わたしにとって、いや、喫茶店を愛好する人たちには、喫茶店を、日々の味方につけるために使っている人も多いはずだ。それは、劇的に効くものではないけれど、いつの間にか元気を底上げしてくれる、ゆっくりと効くおくすりのようだ。
わたしは、内なる引き出しにたくさんのお店を持って置き、いざ出かけるときに、パパッと頭のなかで検索して、「これだ」という喫茶店を、己に処方するように選んでいる。滞在は一瞬だけれど、効用は数日続くこともある』

おくすりあった。
喫茶店だ。

『雨の日に気分を明るくしたい』
『悩みごとをちっぽけにしたい』
『自分を大切にする時間をつくりたい』

などに効用のある喫茶店が紹介されています。

私もこんな気持ちのときはあのカフェに行こう、ってお店はあります。
そんなに多くはないけれど、いくつか思いつくと安心できます。

『ウェブの記事やSNSなどで、よく、「自分を大切にしましょう」という言葉を目にする。というか、実際、そうアドバイスをいただくことさえある。でもそれって、いったいなにをどうすればいんだろう……? ずっと、謎だった。
自分にご褒美、という言葉がある。それならわかる。まあでも、自分のために好きなものを食べたり、欲しかったものを買ったり、そういうことはまあまあできてきたと思うのだ。欲は多くないほうだと思うけれど、その少ない欲に対しては素直なほうだとも自覚しているので。
だとすれば、「自分を大切にする」というのはなにか、もっと、奥深くにある……根本的なことなのだろうな、と思っていた。

最近思っているのは、たとえば、「過去の自分をいつくしむ」ことは、自分を大切にすることのひとつではないだろうか、ということ。小さなとき、もっと青年期でもいいけれど、とにかく、自分の意思がまだしっかり固まっていなくって、判断がしきれなくて弱々しかったわたし。外からのいろいろの情報や干渉に振りまわされていたわたし。いまどきはかんたんい、そういった状態を「未熟」と評価してしまいがちだけど、その「小さなわたし」に思いを馳せて、大事にすること』

『自分を大切にする時間をつくりたい』の章で語られていたこと。

自分を大切にするってよく聞く言葉。
わかるようでわからなかったりしました。

でもこの解釈を読んで、そういったことでもあるんだなと、思いました。
『過去の自分をいつくしむこと』
そうなのかもしれません。

本を読んで、効きそうな喫茶店をいくつも見つけました。
行くのが楽しみです。


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