気体のようなもの

つなぎとめておかないと流れていってしまうもの。
言語化されるとあやふやなものは形を持つ。

佐藤友美さんの『書く仕事がしたい』を読みました。

『思考とは「気体」みたいなものだと思います。浮かんでは消えて、ふわふわしていてつかまえどころがない。
それを目に見えるようにしたいと思ったら、私たちは口に出して話してみます。考えたことを、言葉にすることは、思考を「液体」化するようなものだと思います。
口にのせた言葉は常に、流れ去って行く。その言葉が別の誰かに届くときには、また違った言葉になるし違った形になる。グラスが変われば形が変わる、やはり、液体みたいなものだなと感じます。
だから、流れていく思考をどこかで錨でつなぎとめようとすると、やはり私たちは、文章を書くことになります。文章を書くことで、思考は一時的に固定されて「固体」になる。

自分の思考であれ、誰かの思考であれ、固体になるとそれは人に差し出せるようになります。固体にするというのは、言い換えれば「物語化」することでもあります。物語化して固体になった文章は、時間も時空も超えて人に差し出せるようになります。それがたとえば、生地であり、コラムであり、書籍です。

誰かの思考をつなぎとめて文章にしたい。
そして別の誰かに届けたい。

そんなふうに考えて書くことを続けてきました。』

気体のようなものを固体化したくて書く。
そうしないと流れていってしまうから。


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