パワハラ、初の法制化で何が変わる?

セクハラ・パワハラ・マタハラなど、ハラスメントを防止しようという動きは企業において一般的なものになりました。

また、これらに限らず、アルコールハラスメント(アルハラ)、アカデミックハラスメント(アカハラ)、時短ハラスメント(ジタハラ)、告白ハラスメント(コクハラ)など、「○○ハラ」という言葉をよく聞きます。

しかし、「○○ハラ」という概念が無数に広がりを見せる中、セクハラとマタハラについては別格の位置づけです。

なぜならば、セクハラは男女雇用機会均等法で、マタハラは同法及び育児介護休業法で、それぞれ特別の「法律に基づき」企業は防止義務を負っていたからです。

一方で、もう一つのメジャーハラスメントである「パワハラ」については特別法はありませんでした。

しかし、問題化するケースが多いので、判例などもあるのですが、これは私法の一般法であり、交通事故や暴行事件などの損害賠償に使われる民法上の不法行為の規定(民法709条)がパワハラ裁判における判断基準となっていました。

これまでパワハラの法制化が難しかったのは、「業務との線引きが困難」だからです。

記事によれば、パワハラの要件は以下の通りとなるそうです。

パワハラの定義は(1)優越的な関係に基づく(2)業務上、必要な範囲を超える(3)身体的・精神的な苦痛を与える――を3つ満たすものとした。

ここで難しいのは、「業務上必要な範囲を超える」という点です。

例えばセクハラは業務上行う必要性は皆無です。しかし、パワハラは業務上必要な注意指導の延長戦で行われることも多く、「必要な範囲を超える」かどうかは評価の問題です。

そのため、単に行為を抜き出して見るだけではなく、前後の文脈、普段の関係性、前提となる注意指導の必要性などによっても判断は変わってきます。

もちろん、殴る蹴るの暴行脅迫、「死ね!役立たず!」や「やめろクズ!」などの発言は業務上行う必要がありませんし、また、「8時間経たせて説教」なども必要性に欠けるでしょう。

一方で、「注意が厳しい」、「疎まれているように感じる」などの行為は丁寧にその前提を解きほぐしてパワハラ該当性を判断する必要があり、この点は、パワハラが法制化されたとしても変わらない点であろうと思います。

これに対して、法制化された場合、セクハラ・マタハラと同様に、企業としてはパワハラに対する方針の表明、相談窓口の設置、相談後の迅速かつ適切な対応などの措置義務を講ずる必要性があるという点は「変わる」点でしょう。もちろん、既に規定化して対応している企業は多く見られますが、これが「法的義務」になることは対応を加速させそうです。

いずれにせよ、パワハラについて改めて社内で周知啓発、研修などによる理解促進を図る必要がありそうです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37928120Z11C18A1EE8000/

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