美しい郷の奥深いミツバチの世界 ―「シマシマ編集室」取材記事 ライター:毎熊さん
◎2019年6月10日に実施した「シマシマ編集室」取材の記事です。インタビュー内容をそれぞれがまとめ、自分の言葉で綴る、という体験をしていただきましたので、ご覧ください。
第2回「シマシマ編集室」でインタビューしたのは、美郷町で「花とミツバチの里プロジェクト」に携わる面白さんと岸さんです。
松江から車で1時間半ほど、たどりついた奥深い山の中にある君谷という地区で、はちみつ入りの小松菜スムージー(やさしい甘さが美味しかった!)をいただきながらお話を伺いました。
■面白さん&岸さん、お二人について
面白さんは出雲市出身で、東京の大学に進学後2年ほど東京で過ごしたのちに、美郷町の地域おこし協力隊に参加。現在は協力隊の任期を終え、地域活動コーディネーターとして活動しながら、休耕田に花を植え養蜂に取り組んでおられます。
面白さんは、「通勤だけでもストレスがたまる」、「隣に誰が住んでいるかもわからない」と感じてしまう東京での生活に違和感を覚え、生まれ育った島根に戻ることを決め、島根県のIUターンフェアに参加。昆虫が好きで「昆虫から食べ物がとれる」という養蜂の仕事に惹かれ、美郷町の地域おこし協力隊に応募されたそうです。
岸さんは飯南町出身、大阪で9年ほど程働いたあと島根に戻り、出雲市で事務職の仕事に従事するも、忙しく日々に流されていくことに疑問を感じ、美郷町の地域おこし協力隊に参加され、現在1年目。
■「花とミツバチの里プロジェクト」とは
美郷町にある君谷地区で平成27年からスタートした「花とミツバチの里プロジェクト」。休耕田に花を植えることで地域つくりをする取り組みです。荒れていく土地の景観が保たれることは地域の人々の活力にもなり、また多くのミツバチを飼育するための蜜源として花畑を維持することで、たくさんのはちみつを生産することができます。
この活動を基盤として、君谷地区の誇りとなるような景観と特産品を創りだすことを目指しておられます。
■いま、どんな仕事を?
面白さんと岸さんは、出荷するはちみつの瓶に素敵なイラストをひとつひとつ手書きで描いておられ、心を込めて収穫したはちみつへの想いが伝わってきます。いずれ自分たちだけではなく地域の人達にもイラストを書いてもらう計画もあり、地域コーディネーター・協力隊として地区の仕事(草取りや除雪など、日常の困りごとを解決する役割にも取り組んでおられ「ここに住む人たち」を感じながら仕事をされている様子がうかがえました。これまで培ってきた地域の繋がりを大切にするためにも、現在のコーディネーターの任期が終了後も地域の仕事は続けていきたい、とのことでした。
■これからの課題と夢
面白さんはこの仕事をしていていちばん嬉しい時は、きれいな花が咲き、そこにミツバチが来ているのを見ること、その後、巣箱にたくさんはちみつが溜まっていることだそうです。仕事をしていく中で辛いことや、人とのやすれ違いあるが、それはどの仕事でも同じことであり、山を見ながらボーッとして一晩眠ればだいたい元気になれる、とのこと。
岸さんはやはり自然がたくさんあることが何よりの魅力であり、夢は養蜂でしっかりとした収入を得て生活をしていくことだそうです。実際に、今養蜂だけで生計を立てるのは難しく、地域コーディネーター・協力隊の任期が切れるまでには道筋をつけたいとのこと。
お二人の夢は、君谷に色とりどりの花が咲く花畑があり、はちみつを使った心がほっとするような美味しいものがある、それを地域の人達が誇りに感じることだと思います。
面白さんも岸さんも控え目な印象の方なのですが、お話から「ここで花とみつばちと生きていく」という根の張った想いが伝わってきました。
■絵本に描きたくなる場所
また、ミツバチ達がいる保育所として使用されていた木造の建物は、今までみたことのないような懐かしいかわいさに満ちていて、その庭に色鮮やかなミツバチの巣箱が置かれており、その傍らに銀杏の大木がそびえ立っていて…なんというか…絵本に描きたくなるような空間なのです。時間がそこだけゆっくり流れていると錯覚するような場所でした。そんな所でゆったりと過ごせる人が集う何かがあればよいのになぁと勝手にいろいろと空想をしてしまいました。
■はちみつ、そしてミツバチの奥深さ
はちみつは大好きだけれど、ミツバチの生態やはちみつがどうやってとれるのかなど、ほとんど何も知識がない私は、面白さんや岸さんからお話を聞かせてもらい、知的好奇心がとても刺激されました。はちみつは人類が最初に得た保存食であることも初めて知りましたし、働きバチはすべてメスであり、卵の時は同じでも、幼虫になってからローヤルゼリーを多く食べることで女王蜂へと成長していくことも知りませんでした。女王蜂はあんなにたくさんの卵を産むのに5年も生きる!(働きバチは約1ヶ月)などなど、その他たくさんの事柄が…ミツバチの世界はとても興味深い。ローヤルゼリーは、はちみつを使った健康食品名だと私は長年思っていたのですから…全く知らない世界を垣間見ることができ、自分という樹に腐葉土を撒いてもってもらったような、自分自身が潤っていく感じがしました。
そう遠くない将来、お二人の努力が実を結び、美郷町にある君谷というが地区が島根に来たら一度は訪れたい、多くの人を惹きつけてやまない場所となることを願います。そしてまたぜひ君谷を訪れ、かわいい瓶に入ったはちみつを手に取りながら美しい花畑に見とれる日を心待ちにしています。
あっ!それと、私が辛いことがあっても山をみてボーッとしたら気にならなくなるか、一度君谷でためしてみたい!です。
ライター:毎熊さん / 文責:シマシマしまね
取材日:2019年6月10日
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