2020年の日々・再び創作の日々

9月30日

過去2年間閉講となった桜美林大学の「演出研究」の授業、今年度はなんと開講され、担当5回分のうち1回目をオンラインで無事終了。大学ごとに様々やり方が違うが、何とかなりそうかな。ただ、第2回目は一ヶ月後というね(笑)。桜美林大学で講師をするのは今年度で最後にするつもりなので、良い講義をしたいですね。
そして、今から洗足学園音楽大学の邦楽ミュージカル創作に向けてのオーディション。どういう形での上演になるかはまだ定かではありませんが、コロナ対策を行いながらのクリエーションを始めてみます。
まちなか劇『ロスト・イン・ファーレ』、ほうかごシアター・オンライン『長靴をはいたネコ』と同時進行と、通常運転に戻ってきました。ありがたいことです。創ることは生きること。がんばります。

10月1日

北アルプス国際芸術祭が延期となり、このような企画に声をかけていただき、参加しました。

10月3日

この10月を乗り切ったら、自分を褒めてやろうと思う。

10月4日

10月最初のヤマ場の金土日でした。
金曜は、ほうかごシアター・オンラインの撮影、ほうかごラジオの収録、邦楽ミュージカルのオーディション3日目、邦楽ミュージカルの美術打合せ、帰宅後、3日間のオーディション撮影映像を全チェック。
土曜日は、ほうかごラジオの編集、ほうかごシアター・オンラインの撮影、まちなか劇『ロスト・イン・ファーレ』のルートチェック、帰宅後、月曜日にやる演出論の授業準備。
日曜日は、商店街バーチャル映像ツアーのアフレコ、ほうかごシアター・オンラインの撮影、帰宅後、火曜日にやる立川市新任教員研修の準備。
合間に劇団の経理作業や12月以降のスケジューリング、邦楽ミュージカルのキャスティングをじわじわと。
まずは一ヤマ。10月はこんな感じがあと三週末続く。そんな土曜の夜中に、Amazonから届いたままになっていたBiSHのドキュメンタリー映画DVDの包装ビニールをおもむろにバリバリと破り、睡眠時間をさらに削る結果になったのは我ながらどうかと思う。

10月5日

来年度の公演を行うかどうかを、なんで委託された演出家が判断しなきゃいかんの。責任をこちらに負わせたがるのホントやめて欲しい。主催者である自分たちでしっかり話し合って判断して、それをこちらに礼をもって伝えてくれればいいだけだろうに。

10月7日

今日は、立川市教育委員会から依頼されて、立川市立公立学校若手教員育成研修で演劇の技術を活かした3時間のコミュニケーションワークショップを行いました。今年で4回目ですが、毎年俳優を入れて行っていたのを、今年は自分一人で講師を担当。久しぶりに一人で30名弱の参加者のワークショップを回しました。不安でしたが、全盛期ほどではないものの、良い時間と空間を創出できたような気がします。
今回のプログラムは、コロナ予防対策を取り込みながら、それをむしろプラスの方向にもっていくプログラムを組みました。これは、いろんな層へ汎用可能じゃないかしら。
ということで、こちらのワークショップがあったため、毎週火曜日の洗足音大でのアクティングの授業は、昨日に2コマ分を映像収録して、オンデマンドで行いました。2年生には『リア王』の道化の演技、3年生には『天守物語』における発語についてそれぞれ一発録りで解説。生のオンライン講義とはまた違った緊張がありましたね。
10月の2ヤマ目、無事、乗り切れました。明日は少し楽な一日です。

10月8日

3日間のオーディションとコールバックを経て、邦楽ミュージカル『恋娘近松合戦!』の稽古が始まった。コロナ禍の中での新劇場で10年目の邦楽ミュージカル、いろんな意味で特別な年、さまざまな感情が去来するが、舞台に立てることになった出演者の努力を讃えると共に、紙一重で立てなかった者の努力や想いを今年も背負う。

10月10日

コロナ禍「だから」行き違いがあってしょうがない、という時期から、コロナ禍「だから」連絡を丁寧にしよう、というフェイズにとっくに入っているのだが、コロナについて雑に捉えてる人達ほど前者のままでいる傾向があるな。あるいはコロナを理由に元々の雑さを正当化する傾向にある。今まで以上にちゃんと考えるという変化を受け入れられるかどうか、組織の柔軟性が問われている。自分自身にも問い続けなきゃだ。

10月13日

演出論の授業、かねてから受講生みんなで美術館に行って展示された絵を見て語り合うということをしたかったのだが、オンライン美術館(https://wam-hasard.com/)の登場によって、オンライン授業でそれが可能になった。こちらのサイトのフェルメール展を見て、その中から最も気に入った作品、好きな作品を一つ選び、下記のポイントを言語化し、ブレイクアウトセッションで語り合うというのをやった。
①その絵から受けた印象
②気になった具体的なポイント(色使い、構図、筆致、視点、光の具合など)
③絵から想像できること(モデルのこと、背景のこと、作者が現そうとしたこと、見た人の気持ちなど)
結果、学生からのフィードバックを読むと、かなり面白い体験となったようだ。デジタル時代ならではの授業と思う。

10月14日

今日は午前中に、あちこちシアターのオンライン打合せの後、ほうかごシアター・オンライン『長靴をはいたネコ』の屋上での場面を撮影、午後は今週末本番の、まちなか劇『ロスト・イン・ファーレ』の現地での下見でした。稽古場で作ったものを実際の場所でやるとどうなるかをチェック。道行く人の視線を浴びながら、アイデアを詰めていきました。そして、今から洗足学園音大の邦楽ミュージカル『恋娘近松合戦!』の稽古です。

10月16日

とにかくやれることをやる。やらなければゼロなのだ。思えばいつだって完璧な条件で創作できたことなどない。その意味では、いつだって「妥協の産物」を一生懸命工夫して創ってきたのだ。

10月17日

ファーレ立川アートミュージアムデー2018、2019で上演した『2100年のファーレ』もそうでしたが、『ロスト・イン・ファーレ』の台本の設定や世界観はファーレ立川アートの作品群からインスパイアされています。
前回ほど直接的にそれぞれの作品を台本に取り込んではいませんが、まず、今回の発想は「人の球による空間ゲート」を通って未知の「訪問者」が現れたら面白いだろうなというのがスタートでした。ファーレの作品には、「星座又は星の宿」「Luna」「ガラガラヘビ星と7つの方位」など、宇宙のイメージを与えてくれるものが多く、訪問者=宇宙人という設定はすぐ浮かびました。
アート星人という、ある意味ベタな設定にしたのは、普通の人たちが自家用車に乗るように宇宙船に乗って、辺境の星々へアート観光に出かけるほど、アートと科学がすごく発達した星というのをわかりやすく伝えたかったためです。私たちが地域のアートフェスへ観光に行くのと、よく似た行為です。
劇中では直接的には描かれませんが、アート星人たちは子どもの頃は性的に未分化で、大人になるときに自分で性別を選べるという設定になっています。これは「都市の神」の両性具有の姿(アート星人たちは両性具有ではありませんが)や、「呪文 ノエマのために」に引用された石牟礼道子さんの文章の「人の言葉を幾重につないだところで、人間同士の言葉でしかないという最初の認識が来た」「無花果の実が熟れて地に落ちるさえ、熟しかたに微妙なちがいがあるように、あの深い未分化の世界と呼吸しあったまんま、しつらえられた時間の緯度をすこしずつふみはずし、人間はたったひとりでこの世に生れ落ちて来て、大人になるほどに泣いたり舞うたりする」に影響を受けています。
そして、アート星人の子どもたちは、虐待する父親をモチーフにした作品である「赤い作品“母と子を殺した父親のようなもの”、青い作品“父親に殺された子を受精させた父親のようなもの”」を見て、不安におびえ、遠いアート星にいる父と交信したいと願います。
このようなことをぐるぐると考えて、世界観を整えていきましたが、できあがった演劇は親しみやすい、ニコニコと見てもらえるものになっていると思います。なにせ出演者全員が愛嬌のある人たちばかり!衣装も小道具もポップでかわいくて大好きです。
私たちの作る演劇が、皆さまとファーレ立川アートの素晴らしい作品たちとの接点になれればと願っています。

10月18日

まちなか劇『ロスト・イン・ファーレ 〜宇宙家族、立川で迷子になる〜』、無事、終了しました!お天気に恵まれ、各回とも沢山のお客様に集まっていただき、アート星人と地球人のあたたかく楽しい交流が街のそこここで生まれていました。お立ち会いの皆さま、いかがでしたでしょうか。宇宙家族を好きになりすぎて、別れる時にギャン泣きしちゃった子もいるくらいでした。かわいかった。僕にとって初めての街中を回遊する演劇でしたが、想像以上に上手くいってホッとしています。喋りまくり走りまくりの3回公演、大変でしたが、楽しかった!出演者、スタッフ、ファーレ立川アートミュージアムデー関係者の方々、あたたかく見守ってくださったアートマーケット出店の皆様、そして観客の皆様にあらためて感謝申し上げます。ありがとうございました!

10月19日

今日は2限オンライン講義、大学に移動して3限対面講義、その後、創造舎に移動して、ほうかごシアター・オンライン『長靴をはいたネコ』の撮影でした。実は、村上哲也、小林至も参加しているんです。演出的に一番大変だなあと思ってたシーンもかなりイメージに近い形で撮影でき、無事オールアップ。ネコ役の真彩も撮了となりました。後は、僕が編集を間に合わせるだけ。10月25日(日)11時から、YouTubeたちかわ創造舎チャンネルで配信開始です!

演出論の授業でフェルメールを取り上げたところ、学生からのフィードバックで紹介されたのがこちら。爆笑。好き。
https://youtu.be/pia0iJLqzmA

10月20日

結局、この時間(4時50分)まで、『長靴をはいたネコ』の編集。全部つなぎ終わって、音声もノイズに悩まされつつも一通り調整。あとはタイトル、字幕、音楽を入れれば完成。ふう。

10月21日

今年度の授業は、自分の言語化能力を一段引き上げてくれた気がする。今まで以上の言語化、今まで以上の資料準備、今まで以上の学生からのフィードバック。オンライン講義によって、僕と学生、学生同士の言語コミュニケーションは格段に向上している。もちろん、非言語コミュニケーションが主の授業ではこうはいかないだろうが、対面では省略できたり、曖昧なままやり過ごせたりしていたことが、いかに多かったかを感じている。対面の良さとは本当は何なのかは精査されなければならないだろう。
言語コミュニケーションが苦手な学生にとってはストレスが高いのは承知だが、本を読むのが苦手、議論するのはストレスという学生に「じゃあ、学ばなくていいよ」と言わないように(大学は学ぶところ)、言語コミュニケーションの様々な可能性を学べるようにしていくことが必要と考えている。
ただ、実技の授業はオンラインと対面を混ぜた場合、対面が実践、オンラインはそれを見てレポート以外の形はどこまで学習効果が高いのかは疑問。学生がオンラインでいながら実技の学習効果を高めるには、デジタル環境を飛躍的に充実させていく(通信速度の向上だけでなく、講師が高性能のワイヤレスヘッドセットを付けスタジオ内とオンラインの両方と会話可能にする、スタジオにカメラを数台設置しスイッチング担当者が中継する、など)以外に突破口は無いのではと、一介の非常勤講師は感じている。

10月22日

ほうかごシアター・オンライン『長靴をはいたネコ』、今日は一日編集作業。夜は邦楽ミュージカル稽古に行ったけど(笑)。字幕入れと効果音入れも終わり、これで編集終了〜。今から書き出し、YouTubeで関係者公開して最終チェック。修正あるかもだけど、ここまでくれば一安心。でも目がもう死んでる。老眼に動画編集は負荷が高いなあ。

10月23日

近年、ちょっと無理すると口内炎や口唇ヘルペスが出るのが定番だったが(少し大きめの公演だと大抵出る)、ここ数ヶ月ですでに2回、左眼にモノモライが出てる。これはあれかな、動画編集が立て込むと出るので、眼の使い過ぎで抵抗力が下がっているということか、あるいは眼が霞むので知らない内にこすっているということか。ストレスで体のあちこちが頻繁に小さな悲鳴を上げるような年齢になってしまったけど、毎日少しずつ命が目減りしていくのはしかたのないこと。おかげで日々に感謝するようにはなったし。老いてくのは悪いことばかりじゃないしね。まあ、なので、いつまでもタフでいると思うなよ。

いくつかの演劇動画を作成して思い知ったのは「撮影」の大事さ。何を当たり前のことを、と笑われそうだが、いやはや実感しております。つまり、それは「カメラマン」という存在の大切さ。生の舞台なら、演出(プランニング)→俳優(実演)→観客(作品を観る視点)という順番だが、動画だと演出(プランニング)→俳優(実演)→カメラマン(作品を切り取る視点)→視聴者(作品を観る視点を受け取る)となる。カメラマンがどう撮影できるかで、プランニングや実演の成果も決まる。それはハードの問題でなくて、カメラマンの個性と技術にかかっている。もちろん編集も大事なんだけど、編集は撮影されたものを素材にするのが基本。なるほど、映画の撮影においてカメラマンが重要と言われるわけだ、と素人ながらに今更悟った次第です。

10月24日

邦楽ミュージカル『恋娘近松合戦!』、今日の稽古で7年前までとは違う、新たな近松とおきたの解釈ができた。お千代の昇天の解釈も変わった。この変化は僕自身の変化であり、ミュージカルコースの変化であり、この社会の変化であろう。しかし、「命燃やし、心尽くす」邦楽ミュージカルの芯は変わらない。来週から創作は次のフェーズに入る。

10月25日

ほうかごシアター・オンライン『長靴をはいたネコ』、無事公開されました!今回は、作品の方向性から生配信部分はなく、いきなり始まります。
https://youtu.be/dyVE0QJo-a4
作品の裏側のお楽しみポイントは
*たちかわ創造舎のあちこちで撮影
*宮崎で滞在製作中の平佐喜子以外のOrtメンバー総出演
*コロナ対策を逆手に取った、アナログ感あふれる撮影方法
となってます!
ぜひ感想をお聞かせ下さい。

たちかわ創造舎の同敷地内にある、たまがわみらいパークさんによる毎年恒例の「たまがわみらいパークまつり」、今年は密を避けるために、いくつかの予約制の工作教室、体育館での展示と抽選会という、ごく小規模の形で行われました。創造舎は展示に協力、『2100年のファーレ』の衣装を飾ったエリアと、ハロウィンをテーマにしたエリアを担当しました。新生小PTAの方々による『阿鼻叫喚の間』が力作でした!飾り付け、なんだか文化祭気分で楽しかったですね。
ということで、ほうかごシアター・オンラインも本日公開されましたし、これで10月最後のヤマ、無事、乗り越えました。11月は、邦楽ミュージカル、ほうかごシアター、くにたち芸小ホール公演、子ども未来エンゲキ部です。と書いて、全然、楽になるわけじゃないことに気づき、愕然としてます(笑)。

10月26日

洗足音大での演出論後期の倉迫クラス、今日が最後でしたが、とても楽しかった!学生には先週、下記のような写真撮影の課題を出しました。
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写真は「街の風景」「自然」「建物」「人物」を、なるべく高解像度で撮影してください。
ただ単にシャッターを押すのではなく、自分の視点、画角、光の具合、対象物との距離、構図など、自分の美的な感覚がおさまった写真を撮ることに挑戦してください。自撮りは不可。
カメラの機種はスマホでも専用機でも構いません。また、トリミングしたり、モノクロにしたり、色付けをしたりなど、編集できる人はしてください。
提出の際には、コメント欄に「タイトル」と「意図」を記入すること。
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ということで、27名の作品が集まり、クラスルームというアプリ上でオンライン展覧会を実施。僕も初見で鑑賞して、写真とコメントを受けての感想を言っていきました。とにかく学生の視点や狙い、解釈が面白く、ビジュアル的にも、コメント的にも刺激の多い授業となりました。僕も真剣勝負な言語化に90分挑みました(笑)。脳がくたびれたけど、充実感です。

10月27日

邦楽ミュージカルの稽古が楽しい。楽団合わせで気分が高まった上、そのあとの抜き稽古で撃ち抜かれた。4年生が頼もしい。ニヤニヤが止まらない。マスクで隠れてるけどね(笑)。

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