2020年の日々・再び感染者急増

12月2日

いろんな報告が入ってくるが、そのたびに心削られる。自分のことなら奮い立てばそれでいいが、どうにもできなさがボディブローのように効いてきている。おそらく、今はただ目を閉じやり過ごすという選択が正しいのだとは思う。このまとわりつくような疲弊と心労によって、ばたばたと共倒れしていくよりは、一旦すべてを凍結した方が。だが、私たちはそれを選択できない。時間は止まらない。

12月5日

今週末の、子ども未来エンゲキ部、全面的に構想を変更。そのための台本を一晩で書き上げた。15分くらいの作品だが、必死である。

12月7日

4人芝居に変更した、フィジカルディスタンスバージョンの『星の王子さま』台本の作成完了。自分で言うのもなんだが、俺は本当に働き者だと思う。早く引退して楽になりたい。

12月8日

自分の正しさに自分は従うが、自分の正しさが人を傷つけることもあるとは承知している。自分にとっては理にかなった自衛が、誰かにとっては理不尽な攻撃にもなりうることも承知している。それだからこそ、慎重さと果断さを自分に要求する。

12月9日

ようやく、ようやく、3月の野外劇のプランがまとまった。このプランでプレゼン通ると嬉しいけど、通ったら通ったで、大変になるのは、よくわかっている(遠い目)。そして、今から明日、てかもう今日、の戯曲論の準備。『わが町』の第二幕を読む。

12月10日

文化庁継続支援の二度目の申請完了。20万を超えない金額はA-2であっても申請のやり方は前回のA-1と全く同じなので、駆け込み容易。明日の17時締切。

12月11日

ある種の無情、ある種の残酷さを良い戯曲は描く。
影が無ければ光は輝かない。
無情があるからこそ情の深さが輝き、
残酷さがあるからこそ人の優しさが輝く。
私が戯曲を読む時は、まずは描かれた世界と人間の無情と残酷さを見つめる。

とある劇場に打合せに行ったら、そこの職員に桜美林大学の卒業生で、何年も前に僕の演出研究の集中講義を受けたという方が。今や演出家でもあるその方から「倉迫さんの授業、ためになりました。今でもノート取ってあります」の言葉を聞いて、とてもとても嬉しかった。実技系の学科であっても座学を大事にして、力を入れてきて良かった。嬉しすぎて、もごもごしちゃったけど(笑)。

12月17日

5度目のPCR検査も陰性でした。検査のたびにやはりドキドキするものです。今週来週にかけて、よみしばい『星の王子さま』を3会場で上演。まずは明日から吉祥寺シアターに入ります。予約開始二日で定員に達し、申し込みを締め切った公演です。

12月18日

先週行く予定にしてたのが流れ、今週は自分の本番とワークショップに重なって行けないのがとても残念だが、MSトレインの無事の発車と終着を心から祈ってる。フォースと共にあらんことを。

12月19日

吉祥寺ファミリーシアター特別公演『星の王子さま』、無事、終了しました。吉祥寺シアターに100人近いお客様が集まってくれました。コロナ対応のため出演者を4人にした新演出バージョン、来週は立川の2ヶ所で上演します。どちらの会場も料金は大人400円、こども(中学生以下)200円。乳幼児連れの方も可で、3歳以下無料。上演時間は30分です。
開催日時:2020年12月22日(火) 16:00開演
会場:たちかわ創造舎・体育館
開催日時:2020年12月26日(土) 11:00開演
会場:たましんRISURUホール・小ホール
https://tachikawa-sozosha.jp/events/20201222
出演は写真左から、岩倉真彩、平佐喜子、小林至、村上哲也です。

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12月23日

今年最後の「ほうかごシアター」、この時期での平日夕方公演、しかも予約のみ入場可でしたが、20名弱のお客様にご来場いただけました。今回も創造舎の体育館での公演でした。写真は体育館でのゲネ風景。『星の王子さま』の上演、残すは今週土曜日の、たましんRISURUホール 小ホールでの「あちこちシアター」です。こちらは予約無しの当日来場で大丈夫です。
『星の王子さま』と並行して、立川シアタープロジェクトの「子ども未来エンゲキ部」では、小学生10人と三日間で15分のお芝居『星の王子さまのぼうけん』という、星の王子さまをモチーフにした作品も創ってました。なんと、個人的に撮影した写真が一枚もないほど、ワークショップ中は必死でしたが、最終的には、保護者の方を観客に、いい上演ができたと思います。星の王子さまが、花たちのワガママが嫌になって星を飛び出して、王様の兄弟と、帽子屋と、メガネ屋と、靴屋と、デザート職人と、チョコレート職人と、魔法使いに遭って、また星に帰るというお話、わりと気に入っています。

12月24日

もう休みたいという自分を奮い立たせて今年のラストスパートをかけつつ、来年の希望を探っているが、積極的な希望は相変わらず見つからない。国が宣言するしないに関わらず、自分自身の心の緊急事態は継続中だからね、何一つ状況は良くなってないのに、希望も何もないもんだ。ただ、絶望しないためには、負担を減らすしかないことはわかっている。その上で、淡々と生き延びる。その淡々とが意外と山あり谷ありだったりするのだが、今はそれは考えない。

こんなにしんどいしんどい言ってるのに、「元気ですよね」みたいに言われるの全然納得できない(笑)。まあ、たしかにコロナに慎重になっても萎縮しないように心がけたりはしてるけどさ。

12月25日

コロナ禍のせいか、最近、問題が起きることを過剰に恐れる傾向が出てるように感じる。問題が起きたら対処すればいいだけなのに、問題を未然に防ぎたいが過ぎると、対応は硬直化する。どこの水際でも見られる傾向だ。硬直化すると柔軟性が無くなる、柔軟性が無くなると想像力が無くなる、想像力が無くなると人への優しさが無くなる。問題を起こさないという無謬性を第一に置くと、体温のある対応ができなくなる。問題が起きたら対処すればいいという腹の括り方を、昔から「肝っ玉が座っている」と言う。不安と苛立ちに流されやすい時代だからこそ、肝っ玉が座っている人でいたいと思う。

12月26日

まいったなあ、羽生に「たたかえ」って鼓舞されちゃったなあ。偉大なアスリートであると同時に偉大なアーティストでエンターテイナーだなあ。異次元の存在だよ、まったく。茫然としたあとに熱いものがこみあげた。

12月27日

凡人には計り知れない内面を持っている人を中学や大学で目の当たりにしたのは、自分にとって良かったと思う。平凡な自分をどう拡張してくか取捨選択するしかないよなあと思えたから。

ところで、最近は凡人というのは悪口になってしまうそうですね。「なんで?」と思いますが、たしかに特別扱いされたいと主張する人が増えたように感じます。自分だけは許されるとか、他の人と違う扱いをしろ、とか。個人が大事にされることと特別扱いされることとは違うと思うんですけどね。自分を特別扱いしないから、自分をバカにしてる、自分は騙されたと主張する人を見るたびに、どうしたもんかなあと思います。
平凡な人間ですよ、自分も含めてほとんどの人は。むしろ、特別扱いしろ、自分に特権をよこせと言い続けるのはしんどいと違いますかね。凡人で充分楽しいじゃん。

12月28日

今日は今年最後の劇団ミーティングでした。もちろんオンラインで。3月から劇団員全員がリアルで一堂に会することは一度もありませんでした。痛恨です。痛恨としか言いようがない。会えない劇団員たちが、自分でそれぞれの表現に向き合ってくれていたのが救いです。
僕個人としては心苦しい日々でした。Ortは自主公演を行わない劇団です。自主公演をしたのは、近年では『薔薇と海賊』、その前だと『so bad year』『想稿 銀河鉄道の夜』まで遡ります。僕らは年間を通して、おそらく精力的と言っていいくらい創作を続けていますが、それらは全てクライアントからの予算ありきの委託公演です。予算をつけてもらう、その代わり絶対にクライアントが望む以上のクオリティを叩き出す。それが僕の選んだ持続的な劇団運営法であり、演劇のプロフェッショナルのあり方でした。
20年前、僕は自身の才能の限界を知った時、場数を踏むことでのみ成長する生き方を選びました。自身の逃げ場を無くすこと、自分を常に追い込む現場を持ち続けることを、自分の業のように課そうと。その生き方は自分には合っていたと思います。でも、その生き方はつまり、自分から現場を降りることはできません。僕が降りれないということは劇団も降りることはできません。けれど、このコロナ禍の中では「演劇の現場を降りる」という選択肢を持つことは、それぞれの心身の健康を保つために必要でした。僕は劇団に、主力となる劇団員たちに演劇を強いることになりました。誤解してほしくないのは、劇団員たちは「やらされている」と思って取り組んではいません。どんな状況であっても、真摯に取り組んでくれました。それは観ていただいた方にはおわかりになると思います。作品は誤魔化せません。しかし、その疲弊と心労は見逃せないレベルになってきました。また、出演しなくとも常に待機状態にある他の劇団員たちも。
今年だけの緊急事態なら、今年を乗り越えればいずれ笑いを含んだ苦労話ですが、来年も現在の情勢が続くようなら、劇団員の疲弊と心労を防ぐ手段を講じなければなりません。Ortは鉄人集団だと思われがちですが(笑)、人間です。来年の活動は、そうした事情を踏まえての活動になります。こうやってTheatre Ort は生き延びてみせます。同時に、劇団員全員が表現者としての向上をそれぞれのやり方でしてみせます。お約束します。2021年以降も、あたたかい応援をよろしくお願いします。

12月30日

2020年は上演9作品、動画7作品の計16作品をクリエーションしました。Ortで3作品、洗足で2作品、創造舎関係で11作品でした。吉祥寺ファミリーシアター、北アルプス国際芸術祭、立川シアタープロジェクト「子どもとおとながいっしょに楽しむ舞台」、オペラ『赤毛のアン』という大きな上演は無くなりましたが、他は上演形態を工夫したり、動画に切り替えるなどして、例年と同じペースの創作となりました。ふう。まあまあ、よくやったんじゃないかな。
1月 よみしばい『ブレーメンの音楽隊』、よみしばい『アラジンと魔法のランプ』
2月 よみしばい『そんごくうの冒険』、よみしばい『ドン・キホーテとサンチョパンサのおかしな旅』
3月 動画『リーディングドラマ 怪人二十面相 対 名探偵明智小五郎』
5月 動画『観劇が10倍楽しくなる!よみしばい入門』
6月 動画『はだかの王さま、耳はロバ』
7月 動画『泣いた赤鬼』、動画『人間椅子』
8月 動画『シアトリカルリーディング 人でなしの恋』、謎ときよみしばい『かいじん二十面相からのちょうせん』
9月 商店街バーチャルツアー『立川でカラフルトリップ』
10月 動画『長靴をはいたネコ』、まちあるき劇『ロスト・イン・ファーレ〜宇宙家族、立川で迷子になる〜』
11月 よみしばい『アラジンと魔法のランプ』、邦楽ミュージカル『恋娘近松合戦』
12月 よみしばい『星の王子さま』

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