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倉敷珈琲館にて

倉敷珈琲館でサーブされたコーヒーは、液面の揺れが収まるのに時間がかかります。

本日のストレートコーヒー

おそらく、コーヒーとカップとの摩擦が少ないからでしょう。
コーヒーは、濃い感じで、とろっとしているのに、滑らかで、口の中で粘膜を心地よくくすぐりながら移動します。苦味、甘み、酸味、香りといった味覚・嗅覚のみなならず、滑らかさや、均一感や、粘性といった物理特性を楽しめる逸品です。触覚的感性で楽しむコーヒーと言えましょうか。統合された味の体験が、触覚的な心地よさと相まって、コクがあるのに、まろやかな感じになっています。
コーヒーを焙煎して抽出するまでに、何度も精選の過程があって、不純物が取り除かれ、極限まで物理的特性が均一化されているのでしょう。焙煎コーナーからは、豆を挽く音だけでなく、篩(ふるい)で濾す音が聞こえてきます。
思考は深まります。

ガラス窓越しに、中庭のテラスの方に目をやると、冬枯れしたコンクリートブロック壁のなかで、蔦植物が一本だけ青々と繁っています。

中庭のテラス席

それは、陸前高田市の奇跡の一本松のような光景です。中庭に出て、近くで見ると造花ではなく、本物の蔦でした。

奇跡の一本松は、津波に遭った際に偶然の外的な要因が重なり、7万本の松の中から何でもない普通の1本の松が選ばれました。
その蔦植物には、そこだけに、焙煎の熱気が当たっていたのか?はたまた、突然変異による特別な生命力であったのでしょうか?妄想は拡がります。

倉敷珈琲館は、思いがめぐる、とても不思議な時空間です。
(2022年1月9日)

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