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菅形基道・氏の片口

画像は、伝統工芸士・菅形基道(すががた・もとみち)氏による備前焼の片口です。

菅形基道(すががた・もとみち)・作 備前焼片口

器の中は、いぶし銀と柿色とセピア色が入り交じった複雑な窯変を作り出しています。

倉敷美観地区の備前焼ギャラリー・倉敷一陽窯の主人、木村道大さんによれば、この器を焼成するときに、中に小皿が被せてあって、小皿で覆われて低酸素になった部分と、器の中に敷いてあった藁と、降り注いだ灰とが複雑な反応を起こした結果だということです。

何故か強い既視感を覚えたので、気になって購入しました。手に取って、じっくりと眺めて記憶の中を探ってみると、それは、仏師集団・慶派の拠点であった京都東山の六波羅蜜寺に安置されている鎌倉時代の仏師、「運慶」の木像を抽象化した様相を呈していました。

運慶の彫像は経年変化した木の肌に、水晶の玉眼がつややかに輝いて、平安時代末期から鎌倉時代へと移り変わる激動の時代に、己の能力を燃焼し尽くして駆け抜けた、運慶の意志を今に伝えています。

運慶座像(重要文化財)1)

1)川崎純性, 高橋修三・著:古寺巡礼 京都5 六波羅蜜寺. 淡交社, 2007. P36・37



追伸
六波羅蜜寺はかつて、広大な境内を誇っていましたが、明治の廃仏毀釈で大きな打撃を受け、今は南北朝時代に建立された本堂が残るのみです。

しかし、日本史の教科書にしばしば登場する空也上人像、平清盛像をはじめ、15体の国宝・重要文化財の彫像が受け継がれ、文化財の宝庫になっています。それにもかかわらず、観光客も少ない穴場スポットで、少し前までは、ガラスに隔てられることなく、間近に国宝・重要文化財の彫像と対面できました。

場所は、京阪電車五条駅から徒歩7分のところで、祇園の建仁寺のすぐ南です。汲み尽くせない奥深さに惹かれて、筆者は何度も訪れました。



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