姫路おでん

姫路は岡山から距離的に最も近い大都市ですが、文化的には遠い存在です。姫路には独特の食文化があり、その一つが「姫路おでん」です。おでんは、筆者の知る限り全国的には、おでん出汁と辛子で食べますが、姫路では生姜をつけて食べます。筆者も神戸の病院に勤めていたときに、所用で姫路を訪れ、駅前の食堂で食したことがあります。生姜のさっぱりとした切れ味で、なかなかの美味でした。

2種類の姫路おでん

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生姜醤油で食べるタイプ

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出汁に生姜が溶いてあるタイプ

家庭でおでんを作るときは、大鍋で作りますので、夕食で余ったおでんを翌日の朝食に食べることになるのはよくあることです。主婦は、昼食もおでんになり、3食連続で食べることになるのも、あるあるです。

岡山でも、おでんはスタンダードに、おでん出汁と和辛子で食べます。それはそれで慣れ親しんだおいしい味です。しかし、連続するとさすがに飽きてしまいます。そこで、姫路での体験を思い出して、翌朝のおでんを、姫路おでん風にして食べたところ、まったく別物になって食が進みました。オリジナルの姫路おでんのように生姜醤油をつけて食べてもよいし、シンプルに生姜を付けるだけでも別物になります。とりわけ夏には、さっぱりしてよく合います。

おでんの味変で、味をしめて、普通はタレやポン酢と辛子で食べる、餃子、焼売、肉まん、も、辛子の代わりに生姜をつけて食してみたところ、とても美味でした。皆さんもぜひ試して下さい。真夏には重く感じるこれらの食材も、軽く、さわやかに、食すことができます。

辛子や生姜が果たしている役割が媒介です。辛子や生姜で料理の味わいが変わるように、人や物事も、媒介によって新たに違って意味付けされます。

今は婚活パーティの方が盛んになってしまって、めっきり少なくなりましたが、結婚を望む男女を結びつける仲人は、媒介者です。ただ相性のよい男女を引き合わせるだけでなく、両者をほどよく、つくろって、縁談をまとめます(仲人口)。

デパートの店員も媒介者です。デパートでの買い物は、ネット通販が盛んな今の時代、割高になりますが、それでも、商品知識が豊富な店員に導かれて、商品を選択する体験を楽しむことに価値をおく人が利用します。

皆さんがよく利用しているamazonは、小売業と言うよりも、媒介者に近い存在です。なぜなら、ネット上に商品を並べるだけでなく、カスタマーズレビューを掲載し、多様な意見を吸い上げることで、商品の選択をサポートしているからです。 

リハビリテーション専門職は、リハビリテーション対象者(患者)にとって機能回復・能力回復の指導者です。それだけでなく、患者と世界との媒介者して必要とされます。

患者は、疾患や怪我によって、身体感覚が低下したり歪んだりして変容し、それまで慣れ親しんだ「環境世界」を失ってしまった存在です。ですから、たとえ動作の教示・反復訓練、筋トレで歩行・日常生活動作ができるようになっても、身体に違和感を抱えたまま、苦しんで生きています。この違和感は、対象者と世界の両方を知る立場にある媒介者なしには容易に改善できません。

ヒトの赤ちゃんや子どもは、媒介者となる両親や教師や、親しい大人達、年長の子ども達に導かれて、彼らが用意したおもちゃや教材(媒介物)を通じて、環境世界について段階的に学びます。それと同様にして、患者は、媒介者となるリハビリテーション専門職に導かれて、訓練教材によって構造化された学習プログラムを通じて、整った身体感覚を段階的に学び直さなければなりません。

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構造化された訓練教材の一例 

(左から、触覚を学ぶ教材・手指間の距離を学ぶ教材・手指の運動軌道を学ぶ教材)

今のリハビリテーション医療においては、そこまで要求されませんが、筆者は、媒介者としての役割は、これからリハビリテーションをより深めたいと望む専門職が目指すべき方向だと考えます。

追伸:

70歳代女性の手です。3回目の脳卒中から、1年以上経過した廃用手の状態からスタートして、週1回のペースで感覚やイメージを段階的に学習してきました。脳が右手のイメージを取り戻すと、右手は、生気を取り戻し、美しく変化してきました。その姿は、女性の横座りのような美しさです。それに伴って、わずかに随意運動も出てきました。

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手~手指の手掌面で、素材の表面を触圧覚によって認識できるようになると、介助で手指を伸展して、本のページを押さえて把持することができるようになりました。以前は、すぐにクロー・フィンガーになっていましたが、痙性の制御(抑制)ができるようになったため、出現しなくなりました。物品の把持に向け、脳が運動プログラムを生成しはじめています。手指の分離運動も出始めました。

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手掌の回内・回外が体性感覚で区別できるようになると、回内外中間位で物品の保持ができるようになってきました。

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脳が体性感覚情報を収集し、情報処理をする(区別し、判断する)ように促すと、情報器官としての脳本来の働きが活性化し、発症から長期間経過しても、脳は変化します。

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