マガジンのカバー画像

久保田寛子さんの作品紹介

10
久保田寛子さんの作品についてまとめてみました。
運営しているクリエイター

記事一覧

久保田寛子さんの来年の卓上カレンダーです。イラストには静謐な異界が描かれていて、覗き込んでいると現世から隔絶されて浮遊感がしてきます。ちょうどノイズキャンセリング・イヤホンをしたときのように世界のリアルさが低下します。観る者の聴覚を揺する仕掛けが背後に埋め込まれたアート作品です。

久保田寛子・肖像画展~作品をしあわせにする展覧会~を振り返って

久保田寛子さんは、これまでに国内外で数多くの受賞歴があり、インスタグラムのフォロワー数が1万6千人を超える有力作家です。現在は、主に動物のキャラクターが活躍するユーモラスな作品を描かれています。 筆者は、2022年9月に岡山市のネイロ堂で開催された個展ではじめて久保田さんの存在を知りました。それきっかけに、インスタグラムで過去に描きためられた作品群も閲覧し、少数ながら人物の肖像画があるのを見出しました。 久保田さんは美術の専門教育を受けた後に、イラストレーターとして勤務さ

久保田寛子さんの人物画を通じて降臨したジャンヌ・エビュテルヌ母娘の情愛

久保田寛子さんは、山口県在住で、国内外において多くの賞を受賞した有力イラストレーターです。 画像は、久保田さんによるアクリル・ガッシュで描かれた人物画作品です。 白い花に向かって祈りを捧げている人物に強い既視感を覚え、思を巡らせました。 人物は長い首となで肩に特徴があります。長く伸びた鼻筋と小さな口元にも記憶があります。 ・・それは、筆者が居住する倉敷の大原美術館に所蔵されている「ジャンヌ・エビュテルヌの肖像」です。モディリアーニが恋人ジャンヌを描いた肖像画です。

久保田寛子さんの絵画作品にみられた視線表現における日本的情緒の順守

久保田寛子さんは、山口県在住で、国内外において多くの賞を受賞した有力イラストレーターです。 画像は、久保田さんによるアクリル・ガッシュで描かれた人物画作品です。 絵の中の人物がスマートフォンの画面を凝視しています。 筆者は、その強い眼差しに、既視感を覚えました。 それは、近代絵画の創始者、エドゥアール・マネ(1832~1883)が描いた、「オランピア」です。 そこでは、高級娼婦が、客から贈られた花束には目を向けず、まっすぐにこちらを見つめる、強い視線が描かれています2

久保田寛子さんによる人物像にみられた仏師・運慶の精神表現との相同性

久保田寛子さんは、山口県在住で、国内外において多くの賞を受賞した有力イラストレーターです。 画像は、久保田さんによるアクリル・ガッシュで描かれた人物画作品です。 久保田さんが描く人物像は、特定のモデルがいるわけではないのだそうで、自身にイメージされた人物を通じて、画家のメッセージが込められた作品を制作されます。 絵に描かれた人物は、やるせない苦悩を抱えているように見えます。おそらく、その苦悩は解決する見込みはないのでしょうが、解決されないまま棚上げにして、そのままで耐え

久保田寛子さんの作品に潜在したモディリアーニのsoul~100年の時空を越えた奇蹟〜

モディリアーニは、イタリア生まれで20世紀初頭のパリで活躍した画家です。生前はほとんど評価されることなく、病と貧困のうちに、1920年に35歳の若さで亡くなっています。死の直後より評価されるようになり、1921年に日本にも紹介され、パリと同時代的に評判が高まっていました。 現在、大阪中之島美術館に所蔵されている重要作品「髪をほどいて横たわる裸婦(1917年)」は,1933年に日本の収集家の元に来日しています。 2022年4月9日~7月18日まで大阪中西間美術館開館特別記念

久保田寛子さんによる屹立する人物像の考察〜松本竣介および佐伯祐三の自画像との相同性

表題画像は、岡山市北区金山にある養蜂施設の花畑です。一面ブルーの花畑の中に、一株だけで突き抜けて咲いている花がありました。 この花の立ち姿に、既視感を覚えました。それは、久保田寛子さんによる屹立する人物の絵です。 愛らしい感じの人物が、少し緊張した面持ちで、地を踏みしめて、すくと立っています。 この作品から、松本竣介の「立てる像」が思い出されました。 松本竣介は、その短かった生涯のなかで、戦中・戦後の間(はざま)に画業に取り組みました。困難な社会・生活環境のなかで、洋

久保田寛子さんの油彩画作品に現れたギュスターヴ・クールベの本質

画像は、今や有力なイラストレーターとして活躍されている久保田寛子さんが、いわゆる修業時代に描いた油彩画です。しかし、独自性において、すでにその才能が開花しています。 ノースリーブの着衣のまま横向きで眠る女性が描かれており、その安らかな眠り姿を観ていると、かつて観たギュスターヴ・クールベの「川辺でまどろむ浴女」が思い出されました。 本作品は、2016年に開催された、「デトロイト美術館展~大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち~」で来日しました。展覧会は国内3会場を巡回し、筆者は

久保田寛子さんのトルコキキョウの静物画作品と海野千尋さんによる紫の瞳と髪の色をした陶布人形をコラボしてみました。・・とてもしっくりと馴染んだ風景です。・・海野さんの造形作品は、トルコキキョウの妖精なのでした。

久保田寛子さんのシンプルな静物画に積層されていた150年の歴史

久保田寛子さんは、山口県在住で、国内外において多くの賞を受賞した有力・イラストレーターです。 画像は、久保田さんによる油彩の静物画です。 乳製品のガラス瓶に生けられた、紫色のトルコキキョウの花が描かれています。 筆者は、薄い花びらにたっぷりと水分を含んだ、生気がある、やさしく美しい花の姿に既視感を覚えました。 それは、19世紀のパリで活躍した近代絵画の創始者、エドゥアール・マネ(1832~1883)が描いた「ガラス花瓶の中のカーネーションとクレマティス」です。 その花